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三十四夜、立ち昇る湯気と鍋一杯の牛乳

今日はじいじの番です。

 眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?

 「・・・・・・」

 そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。


 まだ、小学校の頃のことだけれど・・・

 じいじの住んでいる村にも牛を飼っているところがたくさんあったよ。一軒にたくさん飼っているところは少なかったけど、二、三頭から、四、五頭飼って居る家が多かった。

 これは乳を搾ったり、肉牛にするためではなくて、田んぼや畑を耕すために飼っていたんだね。その頃はもちろん耕運機なんてなかったし、手作業で耕すことができないほど広い田や畑を持っているところは、牛や馬で耕していた。馬も飼って居たけど、それよりは牛を飼って居たほうが多かったように思う。たぶん、扱い易さと、エサのことも関係してたと思うよ。

 だから、村のメイン道路には牛やら馬やらの落としものがたくさん落ちてたよ。知ってるかな?落としものの違いだけど、べチャッとしたのが牛、藁がたくさん混じってボソボソしたお饅頭みたいなのが馬の落としたものなのだよ。だから、不用意に近づくと、いきなり大量のおしっこを出されて直接はかからなくても、跳ね返りでびしょびしょ、なんてことになるぞ。ははは。

 近くで、子供の生まれた牛のいるところに、鍋をもっていって牛乳を分けてもらったりしていたよ。さすがに、生では飲んだことがなかったけれど、家で沸かして、飲んでいたよ。

 その頃、たくさん出た乳を保管しておくのは、コンビニのロー〇ンの看板の缶だった。何て名前の缶だったか忘れたけど、そこから柄杓で掬って分けてもらってたよ。たぶん、夕方にはそれを、牛乳を加工している工場から取りに来て、持って行ってるんではないかと思うよ。

 牛にしろ、馬にしろ、落し物は集めて発酵させればいい肥料になるから、あちこちに山のように積んであったよ。

 その頃は、今と違ってこれが当然のことだったので多少臭くても、臭いのことで不満を言うことはなかったよ。馬小屋も、牛小屋も、自分たちの暮らしてる母屋のすぐそばだったし、中には母屋の中に入れてるところもあったし。土間を挟んだ向こう側に牛や馬がいる。それが普通だったね。

 学校に行く時も、帰って来る時も、落し物に気を付けて道の端っこを歩くし、農作業が済んで帰ってくる牛や馬の体から湯気を立てているのを見るのが日常の一コマだったよ。

 おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。

じいじが初めてロー〇ンの看板を見た時、懐かしそうにニコニコしていたことを思い出しました。その頃飲んだ牛乳はとっても濃かったという話です。それにわずかに草の香りが・・・。

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