二十八夜、探検と菱の実
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校に入ったばかりの頃のことだけれど・・・
秋になると楽しいことがいっぱいあったよ。まず、みんなと一緒に近くの山に入って、いろいろ遊ぶこと。山と言っても、深い山ではなくて、丘よりも少し山寄といった感じかな。そのやまは、この辺とは違って、松が多かったよ。たぶんだけど、海からの風が強いので、塩分が濃くて、他の木々には厳しかったんではないのだろうか。黒松と、少しだけアカマツが混じってた。
マツタケを捜したり、アケビの実をとったり、時にはハッタケを取ったり。探したり、取ると言っても、実際に取れることは少なかった。みんな、どこかでは取れると知っていたけど、実際に取っている大人たちは何処で取れるか教えてはくれなかったから。
アケビだけは、木の上に蔓がはっていたので見つけやすかった。それに、そこで取れるのはミツバアケビで熟した実が紫色にならず、木と同じような色をしている分だったから、そんなに競争をして採取するほどのことはなかったからかな。大人たちもわかっていて子供がくるような所のアケビは少しづつ残しておいてくれてたようだ。
たくさんは取れなかったけど、みんなで分けて味見するぐらいは取れたよ。
だから、子供たちも採取というより探検が主になった。去年はこっちへ行ったから、今年はあっちへ行ってみようってことで、連れ立ってぞろぞろ歩き回るのが探検だった。
それに毎年のことで、攻める側も、守る側もわかっている事だけれど、山の一部に生垣で囲まれた、ミカン畑があった。そこに差し掛かると、とたんに静かになって、そっと忍び寄って、そのミカンを千切ることになっていた。なっていたってことが納得できるように、毎年千切りに入るし、毎年追いかけられて、追い回される。最初はつかまったりしたけど、だんだん要領がよくなって、みんなちりじりに逃げたり、そのあとの集合場所を毎年変えたり、知恵比べってやつだね。ちなみにそこのミカンは、酸っぱかったよ。
以前話した溜池には、菱の実が取れてね。熟したころには、村の人が総出で採取したよ。これは、たくさん取って、総出で湯がいたり、蒸したり、それを乾燥させて、保存食にしたりした。
渋くて、ほんのり甘みがあるけど、おいしいものではなかったと思うよ。食べた乾燥菱は硬くて、渋くて、よほどお腹がすいた時にしか、食べる気にならなかったような気がする。あまり印象にないのだけれど。でも、湯がいたものをアツアツの内にとげとげの実を割って食べたら、きっと違った味がしたんではないかな。それより印象に残っているのは、菱の実を裸足で踏んだ時の痛かったことだよ。半分泥に埋まっていると、わからずにふんずけちゃうことがあったんだよ。いつまでもずきずき痛かったよ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
まだまだ続きそうです。




