二十七夜、心機一転の門出
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、ばあばが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校に入ったばかりの頃のことだけれど・・・
ばあばの家は、小さな商売をしていたのだけど、思ったようには行ってなかったのか、それともほかの都合があってのことなのか、下宿を始めたのさ。家族は一階に住んで、二階を人に貸すことになったよ。
単に部屋を貸すだけでなく、食事の世話や、洗濯物の世話なんかもやってた。だけど、そういったことが嫌な人もいたので、下宿人すべてということではなかったけどね。
煩わしいことがあんまり気にならない人は一緒に食事をしたり、わりと一緒に過ごす時間が多かった。でも、中には、ただ寝に来るだけという人もいたよ。どちらかというと、寝るだけという人のほうが多かったみたい。今考えると、一緒に食事したり、子供、ばあばのことだけど、の勉強まで見てくれるのはさすがに特別だったのかもしれないね。
下宿人の世話をするのは、新たに来てくれたお母さんの仕事だった。お手伝いさんは、長く臥せっていた母が亡くなった時に辞めてしまったので、ばあばを抱えて困っていた父の窮状を見かねたことで来てくれたらしい。割と、こうした賄いには慣れている人で、加えて、人あしらいもうまかったので、しばらくは何事もなくうまくいっていたみたいだよ。
でも、事業自体も厳しくなっていたし、病気の治療にかかったお金も大変だったらしく、とうとう御店をたたんで、心機一転ほかの町で頑張ることになったようだよ。
それで家屋敷から、土地などを処分して、引っ越すことになった。
最初は何処に落ち着くことになるのか、迷ったみたいで、いろんなところが候補に挙がったらしいけど、まったく伝手のない所に行くのは難しかった。なので、知り合いがいた街にすることになったんだよ。
そこで働き口を捜して、住むところも定め、頑張っていくことになったんだよ。
お父さんは、故郷に帰って、また商売を始めたいと思っていたらしいけど、まだまだ時間がかかることになったよ。年に一度は、故郷に帰って墓参りや、故郷の兄弟たちと会ってきたりしてた。やはり、知り合いがいたって言っても、親しい人のいない所では、何かと寂しいことがあったんだろうと思うよ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
理由は何であれ、心機一転と言うのは不安からは逃げられないことなのでしょうね。特に今まで慣れ親しんだものから離れて、新天地ともなると、いかな不安があったのでしょうか。




