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二十六夜、自転車との初遭遇

今日はじいじの番です。

 眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?

 「・・・・・・」

 そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。


 まだ、小学校に入ったばかりの頃のことだけれど・・・

 この頃自転車と言えば、じいじの居たところでは荷物用の自転車しか見たことがなかったよ。黒い塗装がしてあって全体に頑丈、荷台が広くて、スタンドは大きくて荷物を載せても倒れにくいようになってた。加えてひとりでに前に動かないように真横から見て二等辺三角形の、接地面が長方形の、これも頑丈なスタンドがついてたよ。子供には厳しく、後ろにまわって荷台を両手でもって、片足でスタンドを地面に押し付けて体重を後ろにかけて引っ張らないと立てられないくらい安定感があったよ。

 重くてスタンドを立てられないのと、たとえ立てても今度は走ろうにも、立ったままのスタンドをあげられないことになる。なので、もっぱら子供が乗る時は壁に立てかけたり、木に立てかけたり、草むらに倒しておいて置いたり。とにかく武骨で頑丈、黒くて重かった。

 村には、最初、一台しかなかった。なかなか二台目が入らず、かなり後になってから見かけるようになったくらいだった。

 一つ下の友達の家がその自転車の持ち主だったけど、特に商売をしているわけではなかったから、用事がある時以外は自転車が空いていた。で、その友達も、自転車に乗りたくてがんばっていた。当然、子供には、サドルの位置が高くて、座ってこぐことができなかった。なので、いわゆる三角乗りだった。サドルとハンドルをつなぐ横に伸びたパイプとサドルの柱、ハンドルとペダルをつなぐパイプの三角の空間に足を突っ込んで乗るわけだ。

 まともにペダルを漕ぐことができないので、カッタン、カッタン、半漕ぎ状態で、乗りまわるのが精いっぱいだった。それでも、慣れてくればどんどん走るし、坂道なんかもなんのその、どんどん上っていく。

 ただ、じいじたちの住んでいたところは、坂の上なので、たいして走らなくても下り坂に突き当たる。で、どうなるかというと、ブレーキを利かすことができないと、どんどん下って行って、曲がり角で壁にぶつかるか、田んぼや畑にダイビングすることになる。そうなると、一人ではどうにもならなくなるので、自転車の後をぞろぞろついて回るじいじたちが手を貸して、引っ張り上げたり、助け起こしたり。

 その代わりちょっとだけ乗せてもらうってわけだよね。

 それでも、乾いたところに落っこちるのはいい方で、池や、田んぼの中に落ちた時には泥だらけになって、大目玉をもらうことになる。じいじたちにとって、それが自転車との初遭遇だったってわけだよ。

 おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。

 

今から思うと、みんな不死身だったんですね。田んぼや畑、池や壁、どれをとっても、打ちどころが悪ければ、大変なことになっていたんですよね。

じいじにとっての自転車との初遭遇だったんですよね。

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