二千二百六十四夜、じいじの高校生生活 1061 三年生 16 一学期から 16
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──……じいじが話した内容については、相手を非難するような論調になってしまった。
これは、もう少し穏やかな内容にしたほうが効果があったのかもしれないなあ……と、じいじは後から思った。
しかし、一度口から出してしまった言葉は、もう取り戻すことなどできないだろうと思う……。
どこかの政治家のように、先ほどのは、失言でしたのですべて撤回します……というようなことができれば良いのだけれど……。
しかし、現実問題としては、そんなことができるはずもないことなのだ。
じいじが気になったのは、他でもない、話の持っていき方だった。
今回のような相手側の身勝手な対応を非難するだけではなくて、デコレーション作成作業へ参加することについてのメリットを、もっと強調をしたほうが良かったのではないだろうかと感じたのだ。
じいじの方にしてみれば、弱い立場の人たちに対して大上段から切って捨てるようなことをすれば、確かに気持ちが良いと感じるのは確かなことだろう。
しかし、人間の心情としては、穏やかな状態からは程遠いような反応があったのではないのだろうか……。
他のクラスの人間だとは言え、仲間内から公然と非難されるよりも、煽てられていた方が気分が良いものだろうかなと思う。
確かに自分達の方がいろいろな意味で、落ち度があるということが分かっていたとしても、直接それを非難されることについては、大きな心理的な反発があったのではないだろうかとも思う。
でもまあ、じいじが教卓のところに立って話をしていた時に、関心をもって話に聞き入っていた人は少なかったのではないかなあと思える。教室のほとんどの人たちは、無関心だったように、じいじの目には映っていた……。
今回の、進学コースのクラスで行った話は、たいした効果を期待ができないのではないだろうかと、じいじには感じられた。
「……おう……悪かったな付き合わせてしまって……。
……助かったよ……。正直、どんな反応があるのかが分からなかったので、ちょっと弱気になっていたところだったのでなあ……。
おまえがあれだけはっきりと言ってくれるとは思っていなかったので、半分驚いて、半分頼もしく感じていたよ……。」
教室を出たらすぐにH君が話し掛けてきた。
「……ああ……これで、少しは手伝わなければいけないかな……と思ってくれる人が出てくればいいのだけれどな……。」
じいじは、心情的には、下を向き加減な顔つきで、H君たちに答えた気がする……。
「……本当になあ……。俺は、心からそう思っているぞ……。
これで、デコが未完成のまま体育祭の当日を迎えてしまう……というようなことが避けられれば、本当にいいのだけれどなあ……。」
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




