二千二百四十一夜、ばあばの洋裁学園生活 1054 友達の家へ 32
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、洋裁学園の頃のことだけれど……。
「──Ⅰさんは、美人さんに生まれついているのだから、それを生かさなければもったいないような気がするよ……。
他人よりも有利な特質については、その人の固有のアドバンテージになるのだろうからね。女子の場合は、特にそれは大きなアドバンテージになるのじゃないかしら……。
睡眠不足で眠そうな表情をしているよりも、すっきり爽やかな表情をしていたほうが、面接をする担当者としては、その人に対してよい印象を持ってくれそうな気がするしねえ……。
その点から考えても、夜型から朝型へと習慣を変えていくということは、無駄なことではないと思うしねえ……。
他の競争相手に対して、アドバンテージを与えないという意味では、けっこうこれは重要なことになるのではないのかなと、わたしは思うんだけれどなあ……。
Ⅰさんとしては、睡眠や朝の目覚めのサイクルを変えるということについては、どんなふうに思っているのかなあ……。」
ばあばは、まじめにⅠさんに聞いたつもりだった。
しかし、Ⅰさんにとっては、ばあばの言葉は冗談の続きなのだと受け取ってしまったのかもしれない。
「……あなたがわたしのことを心配をしてくれているのはわかっているのだけれど……。でもねえ……わたしは、今いるこの学園を卒業してから、すぐに就職活動をするわけでもないからねえ……。
だから、どこかで面接を受けるようなことになるようなこともなさそうなんだよねえ……。
たぶん、学園を卒業したら、家のお手伝いやら、何やかやを押し付けられてしまうんじゃないのかなって思っているよ。
それに……わたしはもともと朝には強くてね……。
いくら夜遅くまで起きていたとしても、朝になったら、すっきりはっきりするから心配はいらないかなあ……。
それに、いざ面接なんかに行くときになれば、しっかりと睡眠を取っておくことが基本的な注意事項になるということは、私でもそれくらいは知っているよ……。
私が社会生活について、経験が浅いからといっても、それくらいのことは常識として心得ているつもりなんだけれどさあ……。」
Iさんが口に出していることは、ばあばの言葉に対して反感を持っているというような印象を受ける言葉だった。
けれど、それに反して、顔の表情は、にやにや笑いが浮かんでいた。
「……そう……。それなら安心だね……。
私は、あなたがすっかり生活のリズムを狂わせてしまっていて、話の途中でも眠気に襲われてしまうようなことがあるのかなあと、心配していたのだけれど……。
まったく、いらない心配だったようだねえ……。」
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




