二千二百一夜、ばあばの洋裁学園生活 1034 友達の家へ 12
今日は、ばあばの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、ばあばが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、洋裁学園の頃のことだけれど……。
──ばあばは、次の春には洋裁学園を卒業しなければいけない。そうなれば、否応なく就職するということが目前に迫ってくることになる。
ばあばが一番苦手としていること……。それは……自分の未来を、自分の責任において決めなくてはならないということ……。それがもう目前に見え隠れしている……。
Ⅰさんのように夢に向かって走り始めるということ……。ばあばは、それができるような性格をしてはいないと感じている……。
ただ、普通に生きていて、ごく普通に生活ができていればそれでいいとさえ感じている……。
……将来誰かと結婚をすることになって……もしもその結婚をしたお相手が、社会の中で重要な立場に立ちたいとかと考えていたりする……。
または……世の中に出て、成功者になったり、重要な地位に就きたいと志していたりする……。
……たとえ結婚をした時には持っていないとしても……近い将来には、広い敷地に建つ大きな大きな家を建てたいということなどを求めている……。
さらには、高級な車や、文化的・機能的な生活をする……。そして、よくできた家族や彼の両親などと、そこで一緒に住むということを求めている……。
……大規模、小規模にかかわらず、自分自身がオーナーとなって、店舗や企業、または、広大な土地での農・畜産業などの経営者となる……または、現在経営をしている……等々……。
……もしもばあばが結婚をして、そのお相手がそんなことを考えるようにでもなったとしたら、ばあばはすぐにでも逃げだしてしまいたいと思うのに違いないと感じている……。
どうしても自分の力で実現をしたいと求めている、そんな夢を持つことは、その人にとっては素晴らしいことなのだろうと、ばあばは考えている。
何度も挫折をしながらでも、その夢に向かってひたすら努力を重ねていくような人のことを、ばあばは尊敬をしたいと考えている。
でもそれは、あくまでもその人個人のことであって、ばあばを含めてのことではないだろうと思う。
ばあばは、ただ普通に生きていて、ごく普通に生活ができていればそれでいいと考えている……。
世の中には、できることとできないことがあるのではないだろうかなあって、ばあばは感じている。
人生は、飽くなき挑戦なのだと考えて、日々努力を続け、その夢の実現や成功を目指している人たちもたくさんいることなのだろうと、ばあばは考える。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。