二十二夜、溜池と用水路に水が来た!
今日はじいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校に入ったばかりの頃のことだけれど・・・
前にも話したことがあるのだけれど、じいじの育ったところは川はなくて、溜池で田んぼや畑の水を何とかやりくりしてたんだよ。ところが、じいじがいくつの時だったか、雨が降らなくてとうとう溜池の水が無くなってしまったことがあったみたい。次の年にちゃんと雨が降れば問題がなかったのだけど、ちょっとしか降らない年が続いたんだよ。
困ったのは、田んぼに水を入れて、コメの苗を植えられなくなった農家の人たちだった。じいじたちは庭に井戸があったので、炊事や、飲み水に困ることがなかったけどね。それでも、井戸の水が涸れることを心配してお風呂に入る回数は減ったよ。
溜池から水を引くのに、農家ごとに時間を決めて村の者総出で、交代で見張っていたんだよ。一反当たり、お線香何本って寄合で決めて、いざ実行の段になって、問題が起きた。とてもそれじゃあ田んぼにお水が足りなかったんだよ。
何度も何度も話し合って、くじ引きで、田に水を入れるところを決めることになったけど、これには納得できない人がたくさんいた。それで、抜け駆けして、夜中に自分のところの田んぼに水を引く人が出てきて、もう収拾が取れなくなったんだよ。水さえ入れてしまえばあとは何とかなるって考えたのか、どうしてもお米を取らないと、お金が入らないから、飢え死にしちゃうと考えたのか。あちこちの村で、騒動が起きたよ。子供の喧嘩じゃないから、それはひどいことになったよ。村が真っ二つになったり、鍬や鋤をもって今にも暴動が起きそうになったり、けが人が出たり。
それで作ったのが愛知用水だったってことさ。完成して通水して実際に水が流れるところを遠い所からみんなして見に行ったものさ。調整池が何か所かあって、順番にいっぱいにしながら流れるんだけど、どこどこの村にはいついつに通水、って回覧板が来て、その日には、みんなして朝からお弁当持ちで見に行ったんだよ。乾いてたコンクリートの用水路に、上から水がさーーーって流れてくるんだよ。みんな泣いてたよ。
ところどころに水門があって、そこから村に向かって水を流すことができる。これで干ばつに泣いたりしなくて済むし、水が足りないことでできなかった作物が育てられる。みんな希望で胸いっぱいになってたよ。本当にすごいことだった。
じいじたち子供にとってみれば、何のことやらってことだったけどね。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
じいじは何を思ってこんなお話をしたのか、わからないお話の一つでした。
たぶん、ですけど、最後の水の流れるくだりでみんな泣いてるのを不思議な顔をしてみてたんではないのか、なんてね。




