二千百四十六夜、じいじの高校生生活 1002 二年生 83 一学期 83 生徒会 60
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「…………。」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、高校生の頃のことだけれど……。
──細かい水滴では、火そのものをいきなり消すことはできない。しかし、何度も同じことを繰り返せば、いずれは火が消えるということには変わりがない。
しかし、いまは火を消すことが目的ではないだろう。強すぎる炎の勢いを鎮めてしまえればいいわけなのだ。
その為には、炎の温度を下げることだけができればいいわけなのだ。火が燃えている中心の温度が下がり過ぎてしまわなければ、またすぐに炎が上がってくるようになるだろう。
そして、きれいに燃やし尽くさなければいけない部分については、そばに用意がされていた長い竹竿を使って、可燃物の下の方にも空気が回るように隙間を空ける……。
また、炎の勢いが強くなり過ぎて、火の粉が飛び散るようになるころには、またバケツの水をうまく掛けてやる……。
それを繰り返して、焚火の火の管理をしているうちには、じいじの頭の中には何もない状態になっていく……。
つい先ほどまで、たった二人だけでフォークダンスを踊っていて、それを気付くことがなかった……。そして、彼女が言っていた手汗についても、彼女だけが原因ではなくて、じいじの方にも大きな原因があったということだ……。
それらが頭いっぱいに渦巻いてしまって、恥ずかしさで逃げ出してしまったという、じいじのカッコ悪いだろうその姿……。
彼女への思いやりなどに心を配るということには、一滴ほども配慮がなかったという、あんまりなその事実……。
それらのぐずぐずとした弱い気持ちが、焚火の管理をしているうちに、炎と一緒に昇華していったのかもしれない。
結局、じいじはそれから最後まで焚火の管理を続けて、焼却祭は事故もなく、無事に済んだということになる。
焼却祭のスケジュールが終わったからといっても、焚火自体はまだ燃えているわけなのだ。
じいじは、焚火をそのままにして放っておくわけにもいかないので、燃え残りが無くなるまでは、あれこれと火の面倒を見ることにした。
どうせ誰かがやらなければいけないことなのだ……。だから、じいじが他のすべてを放り出してでも、火のそばに居続けるのは許されることなのではないのかなあ……。
じいじは、手前勝手なのかもしれないのだけれど、そんなことを適当に判断をした。
結局、その作業は最後まで続けることになった。
そして、焚火は最後まで燃え尽きて、正体不明のなにかがぶすぶすと音を立てているところまでになってから、じいじは、残り火がないようにたっぷりと水を掛けた。
今度は遠慮なんか必要がない。確実に火種がないようにしておかなければならないのだ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に……。




