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百八十一夜、ばあばの洋裁学園生活 24 友人Iさんの場合 6 

今日は、ばあばの番です。

 眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?

「・・・・・・」

 そうだねえ、じゃあ、ばあばが子供の頃のお話をしようかねえ。


 まだ、洋裁学園の頃のことだけれど・・・

 Iさんが描いていたスタイル画は最初の頃は拙くて、ちょっと歪んだ人物画だったけれど、二ページ目、三ページ目になる頃にはしっかりと書かれていて、十分にスタイル画として通用するように見えた。

「これすごいよ、最初は私と大して変わらないって安心していたけれど、ここら辺になるともう全然追いつくっていうレベルじゃないよ。」

「そーお、そう言ってもらえると嬉しいんだけど、いまだに、どんな風に描いて行ったらいいか、分からずに描いてるから、人に見せるのが恥ずかしいんだよ。」

「これ、何冊もあるの?」

「うん、割と暇がある時に描いてるから、他にも三冊あるよ。」

「ちょっと見せてよ。これ、学園生でこんなに描いている人、いないんじゃないの?」

「そんなことはないだろうけれど、たぶん、好きだから、暇な時に描き続けているし、溜まってしまっただけだよ」

「Iさんは具体的に、この中から、服を作ったことがあるの?」

「作ったことはないよ。ただ半分趣味だから、どんどん書いているだけだよ。」

 スケッチブックの中には、たくさんのスタイル画とともに、たぶん、洋服の生地だろう端切れが張り付けてあるものさえあった。もちろん、私たちに値段が高い端切れが手に入るわけもなく、どこかで見たことがあるようなものばかりではあったけれど。

「もう、洋服の生地まで考えて、描いているんだね。すごいね、もう今すぐに型紙を切って作れるんじゃないの?」

「ところがね、私は制作のほうが苦手で、なんだか面倒くさくて作ってもうまくいかないみたいなんだよね。困ったなって思っているんだよね。」

「そーなんだ。」

「だから、やればやるほど、自信がなくなって、このまま続けていいかどうか、迷っているところもあるんだよね。」

「ふ――ーん。」

「学園でも、これからいろんな型紙を作って、実際に作ることになるでしょう? 私が描いた、例えばこれなんか、どうなの? どうやって型紙作ったらいいかわからないし、見当もつかないよ。」

「そうだねえ、Iさんが解らないのに、私が解るわけがないのだけれどね。聞いた話で悪いんだけれど、これから学園では、各自生地を用意して、それで作りたい服や着物を実際に作ることになるらしいよ。まだすぐにってことじゃないらしいけど、二年生や、研究科になると、毎日がそんな風になるみたいなことを先輩たちが話してるのを聞いたよ。」

「うわーー、それだと、私程度では、ついて行けないかもしれないね。」

「ううん、おんなじだよ。私なんかは、目標がないから余計にお客様になりそうだから。」

 ばあばは、真剣に自分のことを考えていたけれど、この時にははっきりした見通しが見えたわけでもなかったよ。


 おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。

Iさんのスタイル画、うまく描けてたんですね。

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