百二夜、叔母さん家の日々 29 新しい世界 15
今日は、じいじの番です。
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね。どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、小学校の頃のことだけれど・・・
その日の朝ご飯は順調に調理出来て、たいした問題もなくみんなで楽しく食事が終わったよ。問題らしいことと言えば、食事が終わるころに急に雲が出てきて雪がちらちらしてきたことかな。
ここら辺はたくさん雪が降ることがなかった。積もっても五センチくらいで道がぬかるみになるくらいがせいぜいだったよ。かえって、積もると小さな子供たちが喜んで泥だらけの雪だるまを作って飾るくらい。雪玉を作って雪合戦なんてやったことのない人ばかりだよ。
雪は降らないけれど風が強かった。北風が強くて自転車やオートバイ、(その頃は単車って呼んでたけど)を駐輪場に立てておくと将棋倒しになってることがあったよ。
じいじが子供の頃にはもう少し雪が降って、十センチくらい積もることがあったね。でも、ひと冬に一度か二度それくらい積もるだけで、やはり五センチくらい積もるのがせいぜいだったかな。大人の人が笑い話でいうのは、風が強いから雪が吹き飛ばされてどこかに飛んで行ってしまうから、ここらでは雪は降らないって言って笑っていたよ。
冬のキャンプはだいたいがお昼前には解散するらしくて、その日も朝ご飯が済んだらテントの撤収や後片付けを始めたよ。
先輩たちもキャンプに来るのに自転車で来てる人が多かった。乗ってる自転車は様々だったけど、さすがにこの頃には作業用自転車だけでなく乗用自転車が多くなっていたよ。
帰り道にうっすらでも雪が積もると滑って危ないこともあって、お昼前には解散するらしかった。
みんな作業は手馴れているのでさっさとかたずけて、帰る準備を始めたよ。
見ていると、穴を掘ってる人たちがいたよ。聞くとテントの下に敷き込んだ草を集めて穴に埋めるとのことだった。秋冬は特に空気が乾燥するし、風が強いために吹き散ったり、火災の原因になったりを防ぐためらしい。
毎回キャンプの時にはやってることで、じいじが知らなかっただけだったみたいで恥ずかしかった。生ごみや焚火の燃えカスなんかも、例えばキャンプファイヤーなんかの灰なんかもちゃんと埋めているみたいだったよ。本当にきちんと基本を守っていたよ。
お昼前にはすべての始末が終わり、滞りなく解散になった。
じいじは自転車に乗ってどんどん帰っていった。叔母さん家の近くになって、ふと気が付くと何かのお店の横の壁に四角い看板が三、四枚張り付けてあった。黒い煤けたような板壁に鮮やかな色の看板が打ち付けてあったのだけれど、その中の一枚に妙に惹かれるものがあったよ。意味は解らなかったのだけれど、大きな星が四つと小さな星が二つ描いてあって、隣の綿の看板と一緒に覚えているのだけど、難しい漢字で「昴」と書いてあった。読めなかったけれど妙に星の模様と「昴」の文字だけが印象に残っている。家に帰ってもキャンプのことは話していたけども、漢字は読めなかったし説明できなかったので聞くことはなくてそのままずっとわからないままになってしまった。
こうしてじいじの冬のキャンプが終わったのさ。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
そろそろじいじの小学校時代の終わりが近づいてきましたか?




