一夜、コッコのおばちゃんと八百屋さん?
思い出しても、なんだか懐かしくて、ギュッと抱きしめていたくなるような、お話がありました。
それは、おやすみ前の寝物語でした。小さい頃は、何かと眠れないことが多くて、そんな時に祖父母が添い寝してお話してくれたのがこれからお話ししようとする物語でした。本当のことだったのか、作り話だったのか、子供相手とは言え、恰好を付けて話してくれたこともあったのか、今となってはわかりません。ですが、私の心にはしっかりと残っていました。
それを思い出せるだけみんな、残したいかな、って思っています。どれだけ書けるかわかりません。どこまでできるかもわかりません。書ける時に、書けるだけ書いて、自己満足したいと願っています。
そんな、自分勝手なことにお付き合いしていただける方、ご同情するとともに、感謝申し上げます。
眠れぬ夜にでも、緩やかな睡眠薬がわりにご使用くださいませ。どうか効きますように! 良い夢の道案内になりますように・・・
眠れないのかい、それは困ったねえ。じゃあ、少しお話をしてあげようかね、どんなことがいいかな。何がいい?
「・・・・・・」
そうだねえ、じゃあ、じいじが子供の頃のお話をしようかねえ。
まだ、保育園にもいってない頃のことだけれど・・・
小さい頃は、体が弱くて、よく病気になったもんだよ。でも、いつもいつも病気だったわけではなくて、元気に遊んでいたこともあったんだよ。
近所に、コッコのおばちゃんと呼んでいた人がいてね、たくさんのニワトリを飼っていたんだよ。まだその頃は、コンビニなんかなかったし、八百屋さんなんかも遠くまで行かないとなくって、今と比べると、不便だったねえ。八百屋さん? そうだねえ、知らないかもしれないね。その頃は、スーパーなんかもなくて、魚は魚屋さん、野菜や乾物は八百屋さん、肉は肉屋さんで買ってたんだよ。どれも小さなお店で、じいじの暮らしてたところには、そのほか、子供が買うような、お菓子を売ってたお店ぐらいしかなかったよ。
で、その、コッコのおばちゃんのとこに、卵を分けてもらいに行くわけさ。竹で編んだかごをもって、「おばちゃーーーん」って呼んで、ニ、三個分けてもらって、帰ってくるわけさ。んんん、パックなんかなかったから、そのままかごに入れてね。きれいな卵は少し高くて、だから、傷のついたものや、殻が柔らかいもの、汚れがひどくて洗うのが大変なものなんかを少し安くしてもらってたみたいだよ。
天気のいい日には、遊びに行って、ニワトリの世話なんかを手伝わせてもらってたよ。手伝うって言っても、子供だったから、できることは知れてて、ニワトリの飲む水の補充や、エサのとりわけ、配合した餌をかき混ぜたり、運んだり、くらいかな。
なんで天気のいい日だけって? うん、ニワトリもウンチをするから、天気の悪い日は、すごい匂いがするし、積もったうんちが乾かないから、べたべた汚れるだろ? 手伝うと言っても、ほとんど邪魔をしてるようなものだったから、今から思うと、あんまり来てほしくなかったのかもね。うろうろされるうえに、汚れたら洗ってあげないといけないだろ? 大変だったと思うよ。
でも、いろんなことを話したり、聞いたり、やってることが面白かったりして、まあいいか、ってことで遊んでくれてたんだと思うよ。それに、じいじの小さかった頃、あんまりお友達がいなかったからかもしれないね。
おや、眠たくなってきたかい、それじゃあ、おやすみ、いい夢を見てね。
良い夢に恵まれますように、おやすみなさい。また次の夜に・・・