一通の手紙
「……はっっ!? ここ……どこだ?」
どうやら何かの建物の床のようだ。
寝転んでいたから天井が見えていたようで。取り敢えず立ち上がり、色々と確認する。
「俺、高校の通学途中だったよな? まさか誘拐!? 」
そこまで考えて首を横に振る。対抗した跡も怪我もしていないし記憶にもない。ショックで消えている可能性もあり得るが……。
「……名前は……宮司 光輝、日本人のはず!」
不意に手紙が落ちてくる。それをすかさず掴み、宛名を確認。
「宮司 光輝様へ……俺じゃん」
封を切り読む。
何故、落ちてきたかはスルーしよう。
『貴方は今、記憶などが混乱しているでしょう。ですが、これを最後まで読んでください。どうか捨てないで』
そりゃ人から頂いた手紙を安易には捨てませんよ。物にもよるけどね。
意味深だが、読んでいくことにする。
『貴方は地球の日本から私によって転移されました』
えっっ、嘘だよな。転移って他の世界で生きていくようなあれだろ…………と混乱するものの冷静になれと続きを読む。
『何故なら予定より早く亡くなってしまった15歳、超が付くほどの自己犠牲精神を持ったランドリット・シマーシュダという人として貴方に生きて欲しいのです。身代わりというものかもしれませんね』
冷静に冷静に、冷静に!!
『ここは貴方の住んでいた日本でも地球でも無いですが言語は私がどうにかしましょう。
では、同封されているランドリットさんの日記を読んでランドリットさんになりきってください。過去と未来のことが書いてありますが、彼の夢さえ叶えてくれるようにすれば未来は変えてくれても良いです。つまり、貴方の人生としても生きて良いのです。この世界は面白いですからね、楽しんでください』
冷静に冷静に冷静に冷静に、冷静に!!!!
『最後に何故ランドリット・シマーシュダさんが早く亡くなったかについて…………私の手違いです。テヘペロ!! それでは~~。神より』
……冷静にってなれるか!! テヘペロじゃねぇよ!! てか、アンタ最低だな。手違いでランドリットって人死なせたり、代わりに俺をここに呼んだり!!
内心で思いっきり毒づき、溜め息を一つ。
取り敢えず、封筒の中のランドリットさんの日記を開く。
付箋が張ってあるところが気になりそこから読むことに。
『相変わらず、周りには自称or他称の称号を持っていたり、超能力を持った人ばかり。住んでるやつらが滅茶苦茶なんで、世界も滅茶苦茶。
だが、俺には何もない。
地位も名誉も学力も体力も何も。
だから、この世界のテンポに付いていくのが超大変。というより命がいくつあっても足りないと言える。
ならば……普通じゃなくて困るなら普通にすれば良いんだ。こんな簡単なことも思い付かなかったなんて人生を損してたな
そう、俺は今日から世界を普通にするために奮闘しよう』
神め、付箋張って読ませるなんてちゃっかりしてやがる。恐らく、これがランドリットという者の夢なのだろう。
取り敢えず続きがあるようなので読もう。
『まずは世界を普通にするために全世界を冒険できるぐらいの自分にならなくてはな。色々と準備をしよう! ここを出て真っ直ぐある武器屋に行くか』
「……この人、馬鹿なのか? 普通の人なんだよな? この日記を読む限り、この人以外は普通じゃないみたいだが、世界を普通にするために全世界を冒険できるぐらいの自分になる、か……まぁ良いや、日記通り武器屋に行こう。この先は……読まないでおくか! 自分の人生としても楽しんでいいって言ってたし」