第二章 情報屋、組織襲撃3
あすかが眉間にしわを寄せた。
「――なに?」
「これを見てくれ」
そう言って情報屋は立ち上がり、本棚から白いファイルを手に取った。その中から数枚の写真を取り出し、テーブルに並べていく。
「現象によって消された建物だけど、当時の現場写真がいくつかある。どの写真にも人だかりができているが、毎回、一人だけ同じ人物が紛れ込んでいる」
「同じ人物?」
橘は訊ねた。
「この人」
情報屋が人ごみの中を指さす。
人差し指が、黒いコートを着た女の上で止まっている。
探してみると、確かに、どの写真にも写っている。うん? 待てよ――橘は、この女の姿に見覚えがあった。
黒いコートを着た女。
昨日、橘が幻覚で見た人物とよく似ている。
情報屋が言った。
「現象が起きた場所を撮れば、かならずこの女が写っている。たまたまそこに居合わせたとは考えにくいし、偶然ではないだろう」
「……何か、理由がある」
あすかが腕組みして言った。
「現象と関係があるのか?」
「僕の見立てではそうだ。女は、おそらくこの現象の関係者」
「現象の関係者……」
橘は呟いた。
「断定はできないけど、この現象の正体を、もしかしたら知っているかもしれない」
「………」
なんだか、きな臭い話になってきた。
この現象に、人間が関わっているかもしれない。
――昨日の女は幻覚ではなかった?
「確かめるには、本人に直接聞いてみるしかないね」
そう言って、情報屋はテーブルの写真を回収する。
「ところで、他にも関連した興味深い話があるんだけど……」
と、外でインターホンが鳴った。
「客か?」
あすかが訊ねる。
「全く間が悪い……」
ポリポリと頭を掻いて、情報屋はだるそうに席を外した。
数分後、廊下で銃声が鳴った。