第二章 情報屋、組織襲撃4
銃声と悲鳴が重なる。
物々しい金属音と共に、複数の足音がこちらに近づいてくる。
――情報屋が撃たれた?
橘は、とりあえずソファーの側面に身を隠した。
「……ねえ、どうする?」
あすかに訊ねる。
「そうだな……」
あすかが何か言いかける前に、部屋に巨体の男たちが次々と現れた。数は全部で六人。黒スーツ姿で、全員マシンガンを所持している。なんだコイツら?
橘は訝った。
普通の客ではない。一体なにが目的だ?
男たちが一斉にマシンガンを構える。
「――ッ!」
あすかが左へ飛んだ。
橘も慌てて頭を伏せる。次の瞬間、橘の頭上を大量の弾丸が通過した。窓ガラスが勢いよく割れて、粉々になった破片が外の地面に降り注ぐ。
相手がいきなり撃ってきたので、橘は肝を冷やした。完全に、殺しにきている。
思考を巡らす。
――なぜ私たちを殺そうとする?
情報屋を撃ったついでか? それとも、もともと全員殺すつもりだったのか?
仮に後者だったとして、理由が分からない。
考えが行き詰る。
とにかく、今ここで死ぬはごめんだ。
橘は武器を持っていないので、今回はあすかを頼るしかない。戦闘はヒューマノイドの彼女に任せる。
「………」
体勢を低くして、あすかが横に駆けだした。その後を追うように男がマシンガンを連射する。あすかは弾丸を避けながら方向転換すると、前に踏み出して男との距離を一気に縮めた。
マシンガンを叩き落として、あすかは男の顔面に強烈なハイキックをおみまいする。ゴキリ、という鈍い音がなった。並の男性でも――というか、少女には絶対不可能な攻撃だ。ヒューマノイドは、人間よりはるかに高い力を有している。
頭を半回転させた男が倒れた。
焦ったもう一人が咄嗟に発砲する。あすかはそれを体でかわし、床に落ちたマシンガンを拾って逆に撃ち返した。胸部に二発着弾させると、あすかはお留守な片手を使って男の死体を残りの四人に向かって投げる。
「!」
男たちはぎょっとしてマシンガンを連射するが、それが一瞬の隙になった。
死体が男たちの視界をふさいでいるうちに、あすかは残りの弾丸を全て撃ち尽くした。四人の体が、たちまち蜂の巣になる。
全員倒れたのを確認すると、橘はあすかのもとへ駆け寄った。
あっという間の戦闘だった。
すごい。
橘は、周囲を見回して心の中で呟く。
信じられない強さだ。
あすかは――もしかして……。
昨日の記事の内容が、また橘の脳裏をよぎった。あそこに載っていたヒューマノイドは、ひょっとするとあすかのことなのかもしれない。
弾切れしたマシンガンを投げ捨てて、あすかが口を開いた。
「……で、なんなんだコイツら?」
「さあ」
橘にも分からない。
――その時、近くに倒れている男が小さいうめき声をあげた。
二人は男の体を仰向けに寝かせる。
胸部の出血がひどくて重症だが、僅かに息はあるようだ。
「始末するか?」
あすかが無表情で言った。
「いいえ」
橘は首を振って、尋問することを提案した。
「いくつか質問したいことがある」