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(01)9ケツ鬼

 西暦20XX年、日本は未曽有の危機に瀕していた。日本全国に存在する月極駐車場を経営する月極堂。そのトップに君臨する月極光一が日本征服を目指して蜂起したのだ。彼は、サイボーグなのに何故か何らかの生活習慣病を患っているメタボロイドを繰り出して、今日も一般市民に迷惑をかけるのであった。

 そんなメタボロイドを倒すため、スーパーマーケットの美増屋ストアが正義の戦闘集団ゴライテンを結成した。



「ケーツ、ケツケツケツ。ケーツ、ケツケツケツ。私は、糖尿病のメタボロイド、9つの尻を持つ男、9ケツ鬼である。私の尿で、ここら辺一帯を砂糖地獄にしてくれるわ」

と、9ケツ鬼が自己紹介を兼ねて、今回の悪事のプランを説明したとき、声がした。

「ちょっと、待った」

「そこまでだ」

「ここまでだ」

「どこまでだ?」

「いままでだ」

声のした方向を見ると、5人の男女が、縦1列になって、エグザイルのようにクルクル廻っていた。

「出たな、ゴライテン」

「いや、『出たな』とか言うのは良いもんのセリフだから」

「ええぃ、ツッコんでないで、サッサと変身しろ。待っててやるから」

「いつも、恩に着る。早速、変身だ」

5人の男女は、どこからともなく取り出した美増屋ストアと書かれたレジ袋を頭にかぶり(よい子のみんなは絶対マネしないでね)、変身と叫んだ。すると、ただのレジ袋のように見えた実は変身スーツが、一瞬にして伸びて、彼らの全身を包み、変身が完了した。

「お肉を食べて元気モリモリ、ゴライテン・ミート」

赤いスーツの男がポーズを取りながら言った。

「あなたのバランス整えます。ゴライテン・ベジ」

緑のスーツの男がポーズを取りながら言った。

「つらい花粉症には、このマスクがお勧め。ゴライテン・ヘルス」

白のスーツの女が、ポーズを取りながら言った。

「魚も食べなきゃ、だちかんぞ。ゴライテン・フィッシュ」

青のスーツの男が、ポーズを取りながら言った。

「レジ袋は、お付けしてよろしいですか? ゴライテン・レジ」

黄色のスーツの女がポーズを取りながら言った。

「5人そろって、電光接客ゴライテン! ご来店、ありがとうございます!」

5人は、そろって大見得を切った。

「あ、終わった?」

地べたに寝ころんで、スマホで遊んでいた9ケツ鬼が、緊張感ゼロという感じで言った。

「我らを前にして、その余裕。ただ者ではないな」

リーダーと思われるゴライテン・ミートが言った。

「いや、ただ、なめられてるだけだよ」

9ケツ鬼が言ったが、

「皆、心してかかれ」

と、全く聞く気が無い様子。

「まぁ良ぃ。まずは、貴様から、やってやる。喰らえアイアンクロウ」

9ケツ鬼がミートの顔面を左手でわしづかみにすると、力任せに締め始めた。

「く、ぐわっ! なんて堅い指先なんだ」

「ふっ、毎日、指先に針を刺して、出た血液で血糖値を測るのだ。それを長く続けると、このように、指先が硬くなり、針でつついたくらいでは血が出ないほどになるのだ」

「みんな、力を合わせてミートを助けるんだ」

「ふっ、いいだろう。まとめてかかって来い」

「余裕を持っていられるのも、今のうちだぜ」

ゴライテンのミート以外の4人が、一斉に9ケツ鬼に飛びかかろうとしたその瞬間、

9ケツ鬼の尻のうち4つが、にゅーっと伸びてきて、他の4人をグルグル巻きにした。

「はっはっはっ、我が尻を喰らえ」

そのとき、ミートが言った。

「禍福はあざなえる縄のごとし」

他の4人は、それを聞いただけで、作戦が分かった。

「よし、行くぞ」

「デフレスパイラル」

4人は、そう叫ぶと、螺旋を描くように、入り乱れてジャンプした。そして、きっかり30秒後、彼らに巻き付いていた9ケツ鬼の尻は、1本の縄のように編みあげられていた。

「ぐわー、痛い。俺様のケツをよくもこんなにしてくれたな」

9ケツ鬼は、あまりの痛さに、ゴライテンに巻き付けていた尻を、解き放した。そして、9ケツ鬼の注意が、己が尻に逸れた隙に、ミートも脱出した。


 ミートが脱出すると、すぐ、ヘルスが治療をした。

「痛いの痛いの飛んで行けー!」

この魔法の呪文さえ言えば、後は適当に処方された薬で、どんなダメージからも、回復することが可能なのだ。

「くそぅ、もう一歩だったのに。まぁ、良い。ケツはまだ5つ残っている。おまえらを倒すためには十分だ」

「そう上手く行くかな?」

「今度は、こちらから行かせて頂くぜ」

ゴライテンのメンバーが同時に同じ動きで、手に何か黄色い小さな紙のような物を取り出した。

「くらえ! 10パーセント値引きシール」

「続いて、20パーセント値引きシール」

「かなりお得よ。30パーセント値引きシール」

「中途半端に未練あり。40パーセント値引きシール」

「そして最後は、もってけ泥棒。半額シール」

シールを貼られる度に、9ケツ鬼は自分の戦闘力が下がっていくのを感じた。

「くっ、貴様等、何をした」

「ふっ、この値引きシールを貼られた者は、そのパーセントだけ戦闘力が減ってしまうのだ」

「な、なんと恐ろしい技なんだ」

「今のお前なら、これで十分だ」

ミートは素早く9ケツ鬼の後ろをとって、

「喰らえ、膝カックン」

と言って、9ケツ鬼の膝裏に自分の膝をあわせて、カクッと膝を曲げた。すると、9ケツ鬼の膝はカックンと落ちて、そのまま、無様に転んだ。

 ミートは素早く9ケツ鬼から離れると、それを待っていたかのように、9ケツ鬼は、派手な爆煙をたてて爆発した。


「ふー、やれやれだな」

「安心するのは、まだまだ、先ぞえ~」

声の方を見ると、古ぼけた井戸が地面から、せり上がってきた。そして、井戸の中には、白装束の陰気な女がいた。

「1倍~、2倍~、3倍~、4倍~、……1倍足りない。うらめしや~。えいっ、オキク・ノイド放出~」

そう女が言うと、井戸の中から煙のような物が、モクモクと沸いて出て、その雲のような物が、9ケツ鬼の残骸を包みこんた。すると、雲の中の9ケツ鬼はガバッと起き上がり、そして、ムクムクと大きく成りだし、あっという間に巨大化した。

「ケーツ、ケツケツケツ。ケーツ、ケツケツケツ。驚いたか、ゴライテン。貴様等など踏み潰してくれるわ」

「ふっ、いい気になっていられるのは、今のうちだぜ。行くぞ、みんな」

そして、ゴライテンの5人は、どこに持っていたのか分からないが、それぞれ、1台のちょろQを取り出すと、5台1列に並べた。そして、5人はそろって、

「結合! 出よ、ゴライテンロボ!」

と叫んだ。すると、5台のちょろQは、なんだかんだと、展開したり、変形したり、合体したりを繰り返し、身長約175.21cmほど(カタログスペック)にまで、組み上がった。

 それを見た女(お菊)は、

「ちょろQ5台で、人間大に成ったのは凄いけど、これで、あの巨大化した9ケツ鬼に勝てると思っているの?」

「ふっ、こうすれば良いだけのことさ。ゴライテンロボ、あの雲柱に飛び込め」

と、ミートが命令すると、ゴライテンロボは一直線に雲柱に向かって行って、飛び込んだ。すると、ゴライテンロボも、ムクムク大きくなり、巨大化した。

 そう、オキク・ノイドの致命的な欠陥は、味方だけではなく敵まで大きくしてしまうことだった。

「キーッ、悔しい。たった1度見ただけで、その欠陥に気づくとは……」

「あのー、お菊さん。これって、巨大化した意味ってあるんですか?」

おずおずと9ケツ鬼が聞くと、

「うっさいわね。黙ってとっとと、戦いなさい」

と、はねのけられた。

「まぁ、やりますけど。歩いて移動するだけで、民家がグシャグシャ潰れていくんですけど」

と、そのとき、ゴライテンロボが9ケツ鬼に跳び蹴りをかました。9ケツ鬼は吹っ飛ばされ、人型に民家が潰れた。

「ちょっと待て! 悪人の俺が民家を潰すことを気にかけているのに、正義の味方が、なんで配慮無しなの?」

と、9ケツ鬼が言っている隙に、ゴライテンロボが9ケツ鬼の両足を持って、グルグル回しだした。いわゆる、ジャイアントスイングというヤツである。

「ちょっと待て、この技ってこの後、手を離すんだよな。そんなコトしたら……」

と、9ケツ鬼が最後まで言わないうちに、ゴライテンロボは、手を離した。当然の結果として、9ケツ鬼は民家を潰しながら滑って行って、止まった。

9ケツ鬼は、

「だから、言っただろーっ!」

と、叫んで、1拍おいて、大爆発した。もちろん、近くの民家を巻き添えにして。

ゴライテンロボは、9ケツ鬼に向かって手を合わせ

「ご来店、ありがとうございました」

と言った。


 さて、ロボでない生身の方のゴライテンは、お菊の井戸を取り囲んでいた。

「さぁ、観念しろ。逃げ場はないぞ」

「ほほほ、ひとつ教えてあげましょう。我らは、このお菊の井戸を通って、日本全国にある月極駐車場から、任意の月極駐車場まで、瞬時に移動できるのよ。じゃあね、バッハハーイ」

ゴライテンが5人同時に、お菊の井戸に飛びかかろうとした瞬間、タッチの差で、お菊の井戸は、地面に吸い込まれるように消えた。空振りしたゴライテンの5人は、仲良く頭をぶつけたのであった。


 行け、ゴライテン。進め、ゴライテン。翔べ、ゴライテン。3回まわってワンと鳴け、ゴライテン。他人の家に忍び込んでバック宙の練習をしろ、ゴライテン。ちょっとコンビニ行ってサンマガとドクターペッパー買ってきてくれ、ゴライテン。なんかもうダルいから何か一発ギャグで笑わせてくれ、ゴライテン。

 電光接客ゴライテン。


(続くかも知れない)

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