意外と遅いMRI検査
クリニックで右だと言われていた嚢腫は病院では左と言われます。
MRI検査を受けることになります。
左なんだ…。
左…?
ところで、この場合の右左って、私から考えていいのかな。
そんなことを考えながら身支度をしていた。
「子宮は問題ありません」
医師は元の席に戻ったようだ。
元いた方向から声がする。
カーテンで仕切られているだけなので、患者が身支度中でも会話が成立する。
「そうですか」
姿の見えない医師に答えた。
身支度の終え、カーテンを開けようとするが、開け方がわからない。
とりあえず、引っ張ってみようとできるだけ遠くのカーテンをつかみ、右にずらしてみる。
動かない。
あれ。。。
気づいた看護師がカーテンを開けてくれた。
あ。逆ですか。
苦笑して、医師の前に腰掛ける。
「そうですね。今診た感じだと、子宮内膜症によるチョコレート嚢腫に思われますが。検査をしないとはっきりわかりません」
医師は貴子の目を初めて見た。
「はい」
「で。MRI検査という検査を受けて頂くのですが…。えーっと。医療機関にお勤めとのことですが、看護師さんか何かですか?」
そうだった。受付表で書いたんだった。
「あ。いえ。薬剤師です。調剤薬局に勤務しています」
「薬剤師さん…。じゃぁだいたいわかりますよね」
言われて言葉に詰まる。
「まぁ…」
医療のプロの一員だ、と豪語するほどの自信はない。
どちらかというと謙虚、いや、事実であろう。
「MRI検査で嚢腫の種類を特定したいと思います。それから血液検査。腫瘍マーカーの検査をします。血液検査は今日やって行って下さい。MRIは…」
説明を中断し、パソコンを操る。
「予約になりますので…。今空いているのは、11月13日、火曜日の午後、か、11月の16日、金曜日の午後か、ですね。ご都合はいかがですか?」
カレンダーに目を向ける。
診察室にカレンダーが貼ってあった。
貴子もカレンダーを見た。
「金曜午後なら休めます」
「じゃぁ。MRI検査は11月16日の金曜日、午後3時半、で大丈夫ですか?」
「はい」
「この日はMRI検査だけになります。検査を終えたら、帰られて結構です。で、血液検査の結果とMRIの結果をお伝えする日を決めておきたいのですが」
あらま。
そんな日まで決めるのね。
医師は続けた。
「19日月曜日の午後か、20日火曜日の午前中あたりは…」
「えっ。仕事が休めるか…。今の時点では…」
貴子は困惑した。
約1ヵ月後。
貴子の休みは、普段は平日は木・金の午後である。
月曜午後はパートに相談できるが、相談できるといってもパートの都合もあるし、ここで決めることはできない。
午前中は仕事が忙しいのでまず無理だ。
「そうですよね」
医師もハッとしたように言う。
正社員ということを忘れていたんだろう。
患者は主婦とか、多いんだろうな…。
「んー。とりあえず、予約を入れておきますか?で、無理ならあとでお電話下さい」
「はい」
それなら大丈夫だ。
「じゃぁ、19日の午後でとりあえずお願いします。午前中はちょっと無理です」
「わかりました。では19日午後3時でおとりしておきます。3時、で、大丈夫ですか?」
医師は貴子の目を見て確認した。
午後休みをもらえれば、3時なら大丈夫だ。とっくに午前中仕事は終わっているはずの時間だ。
「ハイ。大丈夫です」
貴子も医師の目を見てうなずく。
医師はパソコンで何かをクリックした。
「では、そういうことで」
促され、貴子は立ち上がった。
背中から、別の声がした。
「出たところで待っていて下さい」
振り返ると、看護師だった。
「わかりました」
貴子は答え、医師にお礼を言い、退室した。
やっぱ予約か。
今日受けられるかなーってちょっと思ってたんだけど。
やっぱ無理かぁ。
それにしても。。。
約1ヵ月後。
あーあ。
思ったよりも先だった。
さっさと検査してはっきりさせたい。
そう思った。