市立病院へ
自然に小さくなる可能性は少ないと言われた貴子は、大きな病院に行くことを決断します。
「市立病院行って来な」
直人もそう言った。
市立病院は、貴子の自宅から車で30分ほどの場所にある。
奇しくも、父親が入院していた、貴子にとっては行き慣れた病院である。
木之下クリニックを出るときは、すぐにでも市立病院に行こうと思っていたが、何となく面倒臭い気分にもなっていた。
でも、検査は早いに越したことはない。
でも。。。自然に小さくなる可能性も一応あるのよね。。。
元々面倒臭がりである。
しかし。
木之下クリニックを受診した夜、直人はスカイプ通話で面倒臭がりの貴子の背を押した。
「さっさと行ってきな」
知識豊富な直人は断言した。
確かに。MRI検査を受けなければ、これからの対策も練られない。
医師は、放っておけと言ったが。。。
職場で相談すると、あっさりシフト交換が成立した。
翌週の木曜日の午前中に、市立病院を受診することになった。
受診することになった、と言っても、予約も紹介状もない。
市立病院はこの辺りでは大きな病院で、紹介状がないと追加料金がかかる。
ホームページで2000円と確認した。
意外と安かった。
あと、医師の名前も確認した。
女医がいいっ!
女医が担当の日を探した。
予想に反して、市立病院は毎日3人の医師が交替で担当していた。
女医が多い日は…。
男性か女性か特に記載されておらず、名前で判断するしかない。
女性っぽい名前…。
貴子は女性っぽい名前を探す。
「子」や「美」がつく名前を探す。「美」は男性の場合もあるが。
新患外来は午前中だけのようだ。
午前中で女医が多い日は…。
木曜日午前中。
3人の医師の名前は、「隆」「成美」「愛子」。
「成美」は怪しいが、「愛子」は女医だろう。
よし。賭けよう。
と、いうことで木曜日午前中でシフト交換を申し出た。
あっさりとシフト交換が成立し、翌週の木曜日午前中に病院に行けることになったのだ。
そして、その木曜日が来た。
貴子は少し早起きして家を出た。
その日はちょうど、駅前デパートでバーゲンがあり、病院が終わったらバーゲンに行こうとしていたのだ。
あの嫌な診察台に上がらなければならない。
女医の可能性があるとはいえ、嫌なことに変わりはない。
自分にご褒美を与えなければ、そう思っていたときにちょうどバーゲンのチラシを見たのだ。
ご褒美に最適。
貴子は少し浮かれた気分だった。