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クリニックへの不信感

小さくなる可能性が高いと言われていた卵巣嚢腫はそのままの大きさ。

転院を考えます。

「同じ大きさですね」

あっさり、医師が行った。

貴子は、苦手な診察台に座っている。この診察は何回受けても良い気はしない。

そんな嫌な気持ちも吹き飛んだ。

小さくなってるんじゃないの?小さくなるって言ったじゃん。

診察台が元の場所に戻り、身支度を済ませ、カーテンを開けると医師が座っていた。

促されて、その前の椅子に腰掛ける。


「嚢腫は同じ大きさでした。この時点で小さくなっていないとすると、機能性嚢胞の可能性はまずないです」

「歯とか髪の毛がつまっているタイプ、ですか?」

貴子は自分なりに調べた考えをぶつける。

「最初診たときは、そういうタイプかと思ったのですが」

オイオイ、機能性嚢胞だと思ったんじゃないのかい。。。

心の中で突っ込む。機能性嚢胞は、膿のような液体がつまっているタイプだ。

歯や髪の毛が入っているタイプだと思ったなら、最初からそう言って欲しい。

そう思うのは、貴子だけだろうか。

医師は言葉を続ける。

「今診た感じだと、子宮内膜症によるチョコレート嚢胞のように感じます。ただ、何回か診ないとわかりません」

「それだと、自然に小さくならないんですよね?」

間髪入れず、言葉を挟んだ。

「どっちにしろ、自然に小さくなる可能性は少ないと思った方が良いです。はっきりさせたいなら、大きな病院で検査を受ければ良いです」

医師は当たり前だという雰囲気で答える。

そんなぁ。この前は小さくなるって言ったじゃん。180度変えんなよ。。。

また心の中で突っ込む。

「じゃぁどうすれば…」

困惑して呟いた。

「現在5センチなので、今どうこうという段階ではないです。このまま経過観察で様子をみましょう」

医師は当然のように言った。

えーっ。放っておくの。。。

「8センチにならなければ茎捻転の可能性もほとんどないですし」

貴子の気持ちを察したのか、医師は続けた。

「このままの大きさなら、何もせず、普段通りに過ごして大丈夫です」

「小さくならないなら、いずれ手術ってことになるんですか?」

医師のそろそろ切り上げたいという雰囲気を感じつつ、食い下がった。

「大きくなれば、手術、ですが。今の段階では手術を考える必要はないです。少なくとも3ヶ月は様子をみた方が良いです。次回は年明け、1月の都合の良いときに来て下さい」

切り上げたいのね。。。でも。。。聞くことは聞くわ。

気合を入れ直した。

こっちは患者だ。お金だって払っている。遠慮することはない。

「ちなみに、この辺で手術できるところはどこですか?」

「この辺だと、峻天堂か市立病院です」

「センターはダメなんですか?」

センター病院は、自宅からそれなりに近い。

100円バスも出ているので、入院・退院のときに自分で運転できなくても病院に行きやすい。

「センターは大きくて良い病院なんですが、婦人科医が現在2人しかいないんです。外来は大丈夫なのですが、手術は厳しいと思います」

えー。そうなんだ。

「手術って腹腔鏡でできるんですか?」

腹腔鏡とは、穴をあけて医師の手の変わりに器具を挿入する手術で、開腹手術よりも患者の負担が少ないと言われている。

退院も早いため、職場復帰も早くできる。

どうせ手術するなら、回復は早い方が良い。

「5センチなら腹腔鏡でできます。8センチ超えると腹腔鏡では無理なので、開腹になるでしょう」

えーっ。それ、早く言ってよ。聞かなきゃわかんなかったじゃん。アブナイアブナイ。

「そうですね。この大きさで手術って言うのも1つの手ですね」

おーい。先言ってよ。そっちのが良いに決まってるじゃん。

「…。もし、手術になったら。あ。経過観察して…ですけど。紹介状とか書いて頂けるんですか?」

あえて下手に出た。不信感が芽生えたため、それを隠そうと自然に下手に出てしまう。

35年間生きて自然に身についた振る舞いである。

「もちろん、書きますよ。でも、5センチのままなら一生手術は必要ないことになりますし。あまり考えない方が良いですよ」

そうかいな。一生このまま…?

納得できず、診察室を出る。


市立病院に行こう。

会計を待ちながら、貴子は決断した。

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