織田さん
貴子のお向かいのベットの、織田さんについてです。
貴子のお向かいのベットの織田さんは、貴子と同じチョコレート嚢腫の疑い、とのことだった。
貴子と違って両方だそうだ。
大きさは両方とも、4-5cmらしい。
主治医は、貴子と同じ愛子先生。
腹腔鏡で始めるが、癒着がひどそうだから、開腹になる可能性が高いと言われているそうだ。
腹腔鏡で済んだらラッキーと思ってねって言われた、と言っていた。
26歳で、結婚したばかりとのことだった。
ご主人や、自分の両親、おばあちゃん、ご主人のお母さんなどが来るので、大賑わいだった。
「うるさくてスミマセン」と言っていたほどだ。
病態が似ているので、貴子にどうだったか聞いてきたが、あとで「だまされた」と冗談交じりで笑っていた。
貴子には蚊に刺されるより痛みのない硬膜外の処置も、織田さんには激痛だったらしい。
傷の場所は違うが、傷の数も同じ4箇所なのに、痛みの感じ方も違ったようだ。
貴子は全くと言っていいほど痛みを感じないのに、痛みがあるとのことだった。
手術直後も、気持ち悪いとナースコールを押していた。
硬膜外の薬は3種類の薬で作られていて、薬剤師の貴子にはフェンタニルという薬の副作用だとすぐわかった。
夜中で医師がおらず、看護師が対応していたが、口を挟みたくなっていた。
まぁ看護師も医師と連絡を取っていたようなので、出る幕はなかったが。
織田さんの場合は、結局硬膜外の薬はゼロにして、痛み止めの点滴をしたようだった。
薬剤師の貴子からすれば、硬膜外の薬は継続し吐き気止め投与、だったが、痛みがそれで大丈夫ならそれで良いのかもしれなかったが。
副作用が出ていたせいか、麻酔科医が違った(不明だが)せいか、手術直後の酸素マスクはしなくてよかったようで、うらやましかった。
点滴が入りにくいタイプらしく、液漏れして点滴の針を一度抜かれていた。
手術翌日朝に看護師2人がかりで何とか刺したものの、また液漏れして、点滴はなしになっていた。
痩せている方ではなかったので、刺しにくいのかもしれない。
貴子は1発だったし、液漏れすることもなかった。
そのせいで、食事を3食完食しているのに点滴もされ、手術翌日は21回トイレに行った記録になっていた。
若い女性や子供は、点滴の針を刺すのは難しいとされている。
採血等の針より太いのだ。
若い女性や子供は、脂肪が多く、血管が見にくい。
小児科病棟なので小さな子供も見かけたが、何度も点滴の針を刺されて泣きはらしていた女の子もいた。
織田さんは、見た目からはあまり想像できない、高校の国語の先生とのことだった。
健康診断の結果を、保健の先生が見ていたときに、貧血が異常だからと婦人科受診を勧められたそうだ。
その保健の先生は子宮筋腫経験者で知識があり、婦人科疾患による貧血だろうと推測したようだ。
最近の高校生の雰囲気やシャレた名前の話など聞けて、新鮮だった。
最近の高校生は変にかばい合う風潮があるそうで、1人を叱っていると関係のないその子の友達がおちゃらけて入ってきたりするそうだ。
織田さんは若いのに、きちんと生徒を叱るようで、貴子の若者へのイメージが更正された。
直接話すようになって数日後、食事の席が織田さんと向かいになった。
「そう言えば、紺野さん。ずっと聞こうと思っていたんですけど…」
改まって、話しかけてきた。
「何ですか?」
聞きにくいことを聞いてくるんだな、とわかったが、こうとしか答えようがない。
「紺野さんっておいくつなんですか?」
なーんだ。
「かなり、いってますよ」
普通に教えるのはつまらない。
「えー。かなりって。。。50とかじゃないですよねー」
オイオイ…。
仕方ないなぁ。
「35」
「えー!」
いつのまにか、周りの人も聞いていたようだ。
思わぬところからも声が聞こえた。
あら、ま。
「何歳なのかなーって気になってたんです。お肌きれいだし。1個か2個年下か、ちょっと上、って思ってたんですけどー。お肌の秘訣は何ですか?」
おだてるのが上手いなぁ。
「日焼け止め」
貴子は365日日焼け止めである。




