手術直後
卵巣嚢腫の手術直後の様子です
「紺野さーん、終わりましたよー」
目覚めた。
とういうか、意識が戻った。
何か喉から抜かれたような気がした。
目を開けると、ベットに乗せられたまま、手術室のドアを出るところだった。
「貴子」
母親から声をかけられ、ピースサインをする。
病室に戻り、酸素マスクをつけられた。
体は思うように動かない。
頭もボーっとしている。
看護師がテキパキと作業をしながら、母に話しかけた。
「手術直後なので…」
「私、用事があるので帰ります」
オイオイ。
貴子は心の中で苦笑した。
手術直後で急変するから、見ていて欲しいと母親に頼もうとしたのだろう。
手術直後の患者は、自分でナースコールを押すのは難しい。
かと言って、看護師が患者1人につきっきりでみているわけにはいかない。
こういうときこそ、患者家族の出番なのだ。
…であるが、マイペースな貴子の母。
かなり自分中心である。
母親の用事というのは、毎週行っている油絵教室である。
今年最後だから、というのが、母なりの理由であるが、まず母以外の人間には理解不能であろう。
貴子は、生まれてからずっとこの母なので慣れっこであるが。
看護師は、気持ち悪くないか、足のしびれはないか、等、確認する。
最初は歯がガチガチしていた。
それを言うと、硬膜外麻酔の目盛りを1段階下げてくれた。
あとでわかったが、5段階になっているらしい。
その後、足は正座をした後みたいな感覚が鈍い感じになっていると伝えると、また1段階下げてくれた。
頭はボーっとしていて、上手く話ができないのではないかと思ったが、意外と言葉は出た。
両足には、血栓予防のポンプがつけられた。
その後は眠ったりうとうとしたりしていたようだ。
酸素マスクをしているのが嫌で、看護師に訴えたが、19時まではしていないといけないと言う。
別に痛いわけではないのだが、鬱陶しい。
枕もしたい。
真横に枕なしで寝ていた。
枕のありがたみを痛感した。
看護師はよく、入れ代わり立ち代りで血圧測定をしたり尿量のチェックにきていた。
愛子先生も1回来てくれた。
様子を見て、「痛み止め、0.5下げときますね」と言って、出て行った。
2.5になったようだ。
うとうとしていると、看護師が酸素マスクを外しに来た。
19時になったようだ。
「枕、してもいいですか?」
聞くと、枕を足元から持ってきて、頭をのせてくれた。
今の貴子には、首を持ち上げるのも難しい。
こういうときの看護師は、まさに天使である。
ベットも、上半身を上げてくれ、楽な姿勢にしてくれた。
今は、真横よりも、少し上半身が上がっていた方が楽である。
ふと目が覚めると、夜のようだった。
テレビ、観ようかな…。
今日は”相棒”の日だ。
普段は観ないテレビ朝日系列の連続刑事ドラマだ。
先週、たまたま観たら、前編で、結末が気になっていた。
たいていのドラマはちょっと観れば結末がわかるのだが、このドラマはたまにわからないのがある。
観る元気があったら、観ようと思っていたのだ。
手術後数時間なので、無理だと思っていたが、この調子なら観れるかもしれない。
テレビのリモコンを取ろうと手を伸ばしたが、届かない。
もうちょっと伸ばせるかな…。
苦戦していると、ちょうど看護師が入ってきた。
「コレ、ですか?」
看護師がとってくれた。
何となく気まずかったが、遠慮なくとってもらった。
ついでにイヤホンもとってくれる。
「今、何時ぐらいですか?」
「えーっと。8時50分ですよ」
ラッキー。
”相棒”は、9時からである。
看護師が用事を済ませて出て行き、貴子はチャンネルを朝日テレビに合わせた。
普段だったら他のチャンネルを回して他の面白いものはないか探ったりして、2秒前くらいにならないとチャンネルを合わせない。
でも、今日はチャンネルをリモコンのボタンを押すのも一苦労。
チャンネル変更できないと困るので、事前にチャンネルを合わせた。
うとうとしながら、始まるのを待つ。
聞き覚えのあるテーマ曲が流れてきて、ボーっと目を開ける。
観にくいなぁと思いつつも、それなりに上半身のベットは上がっていたので、観ることはできた。
観終わって、テレビを消した。
今日はもう、元気がない。
寝てしまおう。
マウスピースは、手を伸ばせば届くところに置いておいたので、届きそうではあったが手を伸ばす気にならなかった。
手を伸ばすことさえ面倒臭い。
もういいや。寝ちゃお。
今日はボーっとしているので、歯を食いしばる力はないだろう。
そのまま寝てしまった。




