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手術、するべき?

ちょっと聞いてみるつもりで聞いたら、手術の予約をとることになってしまいました。

キャンセルして構わない、とは言われても、手術が現実味を帯び、迷います。

手術すべきなのか、思い悩む様子です。

職場である薬局に着くと、それなりに混んでいた。

待合室の患者用ソファーに座り、患者がいなくなるのを待つ。

あまり混まない薬局なので、今いる患者がいなくなればきっと話ができるだろう。


数分後、予想通り患者がいなくなり、話をする環境になった。

今日は上司がちょうど薬局にいる。

さっきもらった説明書を見せる。

会計を待つ間に寄ることは伝えてあった。

「一応、手術の予約を取る羽目になっちゃったんですけど…。キャンセルして良いって言われてて…。私自身、手術するか迷ってて…。この時期休むって無理ですよねぇ?」

しどろもどろである。

手術が現実味を増した恐怖感だろうか。

説明書に目を走らせ、上司が言った。

「手術、するんでしょ?」

上司といっても年下の男性である。

10店舗ないチェーン薬局の社長の息子さん。

これくらいの規模だと、家族会社である。

「えー。まだわかんないです。…今言われたばかりで。どうしようって感じです」

向こうも貴子の態度がはっきりしないと対応できかねる、というような反応だった。

そりゃぁそうだよねぇ…。でも、今すぐ決められないし…。

「とりあえず、手術するか、考えます。一応状況はこうってことで。2週間後に手術するかドクターに伝えることになっているので、それまでに決めます。一応休めるかだけ、それまでに確認したいので…」

お互い今決めることはできない。

上司の了解を取り、薬局を後にした。

大塚や事務は心配そうに状況を観察しているようだった。


どうしようねぇ。

自宅に車を走らせながら、また悩んでいた。


自宅に帰って靴を脱いだとたん、母親が奥から聞いてきた。

「どうだった?」

「えーっと。ちょっと待って。着替えてくる」

そのまま2階の自室に行き着替えを済ませた。

説明書とネット購入した本を持って1階に降りる。

母親はコタツに入って座っていた。

「ちょっと聞くつもりが手術の仮予約ってことになっちゃった」

「えーっ。手術?」

「うん。でも、キャンセルしていいって」

少し間が開き、母親が説明書に目を通す。

「手術しない方法はないの?」

「うーん。先生も数ヶ月は薬で様子みたらって言ってたけど…。基本は手術なんだよねー」

貴子はネット購入した本を母親の前に置いた。

「これが正しいとは限らないけど。良かったら読んで。家族の理解は大切です」

最後は茶化して言った。


出産妊娠に関わる病気だと、母親としては色々思うことがあるんだろうな、と貴子は思っていた。

成人したとはいえ、親にとっては子供は一生子供だ。

結婚出産は個人の自由だが、子供は子供なりの義務がある、と思っていた。

心配かけないよう報告はすべきだろう。

とりあえず一通り話をして自室に戻る。

貴子は貴子でやることがあった。

母には本を読んでもらおう。


自室に戻り、パソコンを立ち上げる。

以前からやっていたブログに書き込む。

久しぶりの更新だ。

他人のブログを読むだけではなく、自分からも発信しよう。

経験者がコメントくれるかもしれない。

”経験者の方いましたら、コメント頂けるとうれしいです”

最後にそう書いてみた。


ブログの更新が終わり、直人に報告メールした。

直人は元々子供は要らない派で、貴子が32歳を過ぎたころからは「自分の体のことも考えろよ」と言っていた。

直人は今は現場の薬剤師業務から離れてはいるが、少し前までは調剤薬局や病院に勤めていて色々な患者を見てきていた。

障害者の子供を持つ女性、出産により障害者になってしまった女性、を何人も見てきたようだった。

貴子はそんな苦労をすべき人間ではない、能力を生かせ、というのが直人の意見だった。

なぜか直人は貴子を買っていた。

「お前は天才肌の人間」

よくそう言われた。

貴子は全く自覚はなかったが。

法律の勉強を勧めたのも直人である。

「お前なら絶対合格できる」

そう言われたが…結果は惨敗続きで、貴子は法律の勉強から距離を置いていた。

なので、自分の能力については貴子は半信半疑だった。

子供は産まなくていいのかな。

テレビで少子化の問題が取り上げられるたびに罪悪感に襲われていた。

最近はそうでもないが、なぜ結婚しないのか周りも不思議がる。

しかし、直人はそんな貴子を逆に不思議がった。

世間体は気にしないタイプだ。

そんな直人だからこそ、貴子は素直に相談できた。


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