MRI検査
MRI検査の様子です。
婦人科に着き受付で名前を言うと、窓口にいた事務の女性が待ってましたというような感じで、傍に置いてあったファイルを手渡した。
あれ?早いのに、いいのかなー。
案内された通り、検査室に向かった。
検査室に着き、受付にファイルを提出する。
「7番の前でお待ち下さい」
言われて、7番を目指す。
1番から9番まであり、MRIやCTなど、機械が集中しているようだった。
7番前のソファーに座り、また雑誌を開いたものの集中できずボーっとしていた。
不意に名前を呼ばれた。
「はい」
平静に返事をしたものの、内心焦った。
あと20分は名前を呼ばれないと思っていた。
検査が順調に進み、早まっているのかもしれない。
ドアから中に入ると、マスクをした中年男性が病衣を手に持ち立っていた。
薄いブルーの白衣を着ているので、検査技師だろうか。
「これに着替えて、ここに座ってお待ち下さい。荷物はここに入れて下さい」
早口で言われる。
予期せず慌てて来たので、貴子はまだ腕時計をしていた。
「あ。時計とか、外した方が良いですよね」
「はい。外してここに入れて下さい」
面倒臭そうに言われる。
だってー。思ったより早いんだもん。
「わかりました」
慌てて時計を外し、指定されたロッカーに荷物とコート共に入れる。
男性がロッカーの鍵を閉め、持っていた病衣を貴子に渡した。
「金属がついたものは全部外して、これに着替えて下さい。呼びに来ますので、それまでそこに座ってお待ち下さい」
ロッカーの横にある3つ並んだカーテン式の更衣スペースを指差された。
更衣スペースに丸椅子が置いてあった。
「わかりました」
病衣を受け取り、更衣スペースに入りカーテンを閉めた。
着替えを始める。
MRI検査とわかっていたので、スポーツブラにしてきた。
着替えは早く終わるはずだ。
着替えていると、先程の男性が隣の更衣スペースに声をかけ、検査へ促す声が聞こえた。
隣に人いたのね。
全然気づかなかった。
着替えを終え、丸椅子にチョンと腰掛けていた。
ひゃー。これから検査だよ。
人体に害はない検査と言われているので恐怖感はないが、じっとしていなければならないので緊張感はあった。
じっとしていられるかなー。動いちゃったらどうしよう。音、うるさいのかな。
MRI検査を受けるのは始めてである。
貴子は大学院で有機化学を専攻していたため、MRI自体にはなじみはあり、検査の理屈は理解している。
研究でよく使っていた機械だった。
しかし、研究では化学物質に対して使っていて、MRI検査を受けるのは始めてだ。
音がうるさいとか、閉所恐怖症の人は耐えられなくて暴れるとか、聞いたことがあった。
着替えを終えて10分くらい待っただろうか。
人が入ってくる気配がし、隣の更衣スペースに先程の人が入ったようだった。
「紺野さん、準備大丈夫ですか?」
検査技師らしき男性の声がする。
「大丈夫です」
「では、こちらにお願いします」
言われて、カーテンを開ける。
男性についていくと、大きな機械が待ち構えていた。
ふーん。
写真では何回も見たことがあったので、実物を見て改めて確認、という感じだった。
台に仰向けに横になるよう言われ、横になる。
「寒くないですか?」
「大丈夫です」
病衣は貴子が着てきた服より薄手だったが、靴下は履いたままだったので寒さは感じなかった。
「動かないように固定しますね」
あれよあれよと体を縛られ、腹部に左右の卵巣付近が開いているプレートのようなものが置かれ、重たいものを置かれた。
貴子が受けるのは、腹部のMRI検査。特に腹部が動かないようにするのだろう。
「苦しくないですか?」
「大丈夫です」
多少の圧迫感は感じたが、苦痛ではなかった。
むしろ、自分で動きにくくなったので、動いて検査が台無しになる心配が減った。
ヘッドフォンを耳にかぶせられた。
「何かあったら、コレ押して下さい」
ブザーのようなものを渡された。
ヘッドフォンをしていたが、声は聞こえた。
閉所恐怖症の人はコレ押しちゃうのかな。どんな音がするのか押してみたい気もするけど。
ブザーは両手で握って胸の上で持つよう指示された。
腹部の検査なので手が腹部にかぶると良くないのだろう。
台が動き出し、ゆっくり空洞の中に入っていく。
えーっ。もう??
貴子は焦った。
前回病院に来たときに、造影剤の同意書に署名していた。
造影剤、まだなんだけどー!
ブザーを押そうか迷う。
しかし、貴子の迷いに関係なく検査は始まってしまった。
ゴンゴンと音がし出す。
始まったよねー。でも、造影剤してないよねー。良いのー。どうしよー。また1ヶ月待ちなんて嫌だよー。途中で投与するのかなー?写りが悪いときだけなのかなー?先に説明してよー!わかんないよー!
身動きしないよう固まり、懸命に考える。
MRIだよね…。造影剤?MRIで造影剤?うーん、何だろ。造影剤、要るのかなー。
元々理系人間、わからなくなったときは理屈で考える癖がついていた。
MRI検査とは、核磁気共鳴現象を利用した画像検査である。
詳しい説明は割愛するが、極性が高いものが写る検査である。
水分が多い部分はよく写るのだ。
卵巣は水分が多そうだし…。
造影剤って何だ?何使うんだろ。
ブザーを押す確信がもてない。
検査も進んじゃってるし、もう、いっかー。あっちはプロだしー。
もし検査が失敗でも、悪いのは医療側。
造影剤のせいで失敗なら、駄々こねて私の都合の良い近日中に検査し直してもらおうと腹を決めた。
音は、ドドドド…になったり、ゴーンゴーンになったり、トトトト…になったり、聞いているだけで楽しかった。
視線は左下で何となく固定していたが、人が歩いているのがわかった。
そこまで閉塞感は感じなかった。
検査が進むにつれ、何となく腹部が温かくなった。
弱い電子レンジみたいなもんだもんね。
さすが理系である。
1回だけぴくっと右足が動いてしまったが、あとは動かずじっとしていた。
30分程度、と言われていたものの、やはり検査は長く感じた。
聞こえる音が数分おきに変わるのでそこまで退屈はしなかったが、じっとしているのは多少努力が必要だった。
最後の方は目をつぶっていたが、どこでも眠れる貴子でも、さすがに眠れなった。
不意に音が止み、台が動き出す。
終わったようだ。
先程の検査技師のような男性が近づき、貴子の体を縛っていたバンドを外し出す。
「造影剤は…」
起き上がりながら尋ねた。
もしかしたら検査し直しなのか、心配である。
「あぁ。必要なかったので、これで終わりです」
当たり前のように答える。
先に言ってよ。もう。
ホッとして、台を降り、元いた更衣スペースに戻る。
狭いところで度々目を閉じていたせいか、寝起きのような感じだった。
ロッカーの鍵を受け取り、着替えを済ませ、病衣をたたむ。
えーっと。私はこのまま帰っていいのかな。
カーテンを開けて首を伸ばすが、人は見当たらない。
靴を履いて、ロッカーの前に行き荷物を取り出し、病衣を手に検査室を覗く。
次の患者が縛られている最中だった。
気づいた中年の男性が貴子に近づき、受け取ってくれた。
今まで気づかなかったが、機械のガラス越しに部屋があり、そこにいたようだ。
白衣を着ていて、医師のような感じがした。
検査状況をチェックしているようだった。
へー。なるほどね。
技師だけで検査するのだろうかと思っていたので、納得した。




