会計
会計の様子です。
視線が注がれた。
私の番だ。
貴子は立ち上がり、視線を注いだ主の前に座る。
看護師だろうか。
20代から30代の白衣を着た女性である。
白衣が何となく看護師っぽい。
貴子は両腕の服をまくり差し出した。
「どっちがいいですかね」
相手が一瞬戸惑ったのがわかった。
あれ?
「えーっと。先に、お名前確認させて頂けますか?」
あ。
そうでした。
「シール確認させて下さい」
言われて、右手甲に貼られたシールを見せる。
婦人科を出るときに貼られたシールである。
生年月日、カタカナの名前が記載されていた。
そうかぁ。
ここで使うのね。
納得した。
「生年月日とお名前、言って頂けますか?」
「あ。ハイ。昭和52年2月16日、紺野貴子です」
「…はい。わかりました。…今野さんは、今日は2本取ります」
用紙を見ながら伝えられた。
最初に総合受付で渡されたクリアファイルに、採血の種類が書かれていたようだった。
「では、こちらで取らせて頂いて良いですか?」
貴子が差し出した右腕をつかんだ。
「ハイ」
言われて、左腕を引っ込めた。
上腕を太いゴム紐のようなもので縛られる。
あー。刺される~。
「じゃぁいきますね~。親指を中に入れて軽く握って下さい」
「ハイ」
針先が皮膚の中に入っていく。
痛みはあったが予想していた程度の痛みだった。
ゴム紐が外された。
じっと採血の様子を見る。深紅の液体が試験管に入っていった。
以前は採血の際は見ないように視線をずらしていたが、最近は神経が図太くなったのか全て見るようになっていた。
1本にそれなりの血液量が入ると、パコッとその試験管を外し、別の試験管をパコッとはめる。
その試験管もパコッと外され、針が抜かれ、シールを貼られた。
「ここ、5分くらい押さえておいて下さい」
「はーい」
言われて、左手で右腕の針が刺されたところのシールを押さえる。
女性は採血した試験管にシールを貼りながら用紙を確認した。
「紺野さんは、今日はこれで終わりです。会計を済ませてお帰り頂いて大丈夫です」
「わかりました」
言われて、横のバスケットに置いたショルダーバックを肩に書け、上着をつかんで立ち上がる。
右腕を押さえているので動きにくい。
待っている人がいるので何となく慌ててしまう。
そそくさと検査室を後にした。
最初の、総合受付に歩みを進める。
会計は総合受付内にある。
会計もそれなりに混んでいた。
えーっと。会計会計…。
”会計”と書かれた窓口に歩み寄る。
出せばいいのかな。
用紙の入ったクリアファイルを手渡そうとした。
「すみません。先に4番にお願いします」
「あ。そうなんですか。すみません」
言われて、上を見上げる。
”会計は”⑤、④を見ると”計算”と書かれていた。
ふーん。
先に計算、なるものがあるのね。
④の計算の窓口に歩み寄ると、窓口の事務の服装の女性は他の患者と話しており、忙しそうだ。
横を見ると、クリアファイルを入れる透明の箱が置いてあった。
ここに入れるみたいね。
貴子は透明の箱に持っていたクリアファイルを入れた。
席を探し、腰掛ける。
空席はすぐ見つけられた。
フルネームを叫ばれるようなので、自分の名前を聞き落とさないよう前の方の席に座った。
20分ほどで名前が呼ばれた。
意外と待たされたな…。
貴子は会計用の紙と診察券を受け取り、言われた通り⑤”会計”に歩み寄る。
カードで払いたいな。
会計用の紙を見ると、7000円近くの金額が記載されていた。
初診で紹介状がなかったため支払う特別診療代2000円込みで7000円いかない。
まぁこんなもんよね。
「あの。カードで払いたいんですけど」
貴子はある程度の額になるとカードを使うようにしていた。
正社員だと、引出手数料ナシの時間帯に銀行に行くことは難しい。
なるべく現金は使いたくない。
カードならポイントも貯まる。
会計の事務の服装の女性は、視線を横にずらした。
「わかりました。では、そちらの機械でお願いします」
言われて機械の前に立つ。
機械の指示通り、会計を済ませた。
そうだ。駐車券。
駐車場使用料は最初の30分は無料、1時間毎100円であるが、患者は何時間かかっても100円になるようだった。
このまま何もしなかったら、1時間100円で計算されてしまうだろう。
傍にいる事務服の女性に話しかけた。
「あの。駐車券は…」
「はい。…領収書、確認させて下さい。…はい、わかりました」
貴子が無造作に持っていた領収書に目をやり、差し出しされた駐車券を受け取り、⑤”会計”のテーブルにある機械に駐車券を通した。
処理を済ませた女性が持って来てくれた駐車券を手にし、駐車場に向かった。
さ。
バーゲンよ。
時計の針は9時45分。
これからバーゲンに行くには、ちょうど良い時間だった。




