Ex.1 依頼・前編
どうも平太です。
開いてくださりありがとうございます。処女作なので、至らぬところが多くありますが、よろしくお願いします。
作者は、超のつく駄文を書く程度の能力があります。
「・・・ここか」
黒い衣服に身を包み、2メートルはあろうかという抜き身の剣を引き摺って歩いていた少年はそう呟き、目の前の村を見る。
少年が見ている村は奥に、村の大きさとは不釣り合いなほどに大きい建物がある以外、至って普通な、どこにでもあるような村だった。だが、たったひとつの゛異常゛が、村全体を異様な雰囲気で包んでいた。
━━━人が一人も、気配すら感じられないのだ。
その村には、普通あるべき村人の姿・・・小動物さえ消えていた。消える・・・そんな言葉がぴったりとくる、それ程までに村は静まり返っていた。まるで、゛何か゛に怯えているかのように・・・。
(わざわざ街のギルドに直接依頼を持ち込んでくるほどだ。・・・それにこの村の様子から考えると・・・)
「今回は余程のクズが゛相手゛になりそうだ」
少年は吐き捨てるように言い放ち、村に足を踏み入れる。
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村に入っても動くモノは、何一つとしてない。しかし、そんな村の状態にも、少年は嫌悪感を表すこともなく、ただ一定のリズムを刻み、歩き続ける。
そんなリズムに変化があったのは、少年が村の奥にあった大きな建物の前に着いた時だった。
「・・・?」
ふと、少年の視界に入るものがあった。
少年がそちらに注意を向けると、そこには白い髭をたくわえた初老の男が立っていた。
「・・・君がギルドの使いか?」
「!・・・はい、お察しの通りギルドの者です。私の事を知っているということは、あなたが依頼主であるこの村の村長というこでしょうか?」
少年は、先程までの荒れた口調とは一変して、初老の男・・・村長と思われる人物に訊ねる。
「いかにも。そうか、君がギルドからの・・・・・・いや、まずは依頼内容の詳細を話したい。かなり汚いところだと思うが我慢してくれ」
「はい」
そう短く返事をし、村長に案内されて少年は建物の中へと入っていく。
そのとき空は、暗い雲に包まれ始めていた。
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建物の内部は、簡素な作りでさっぱりしていたが、中央に置かれている祭壇のようなものが圧倒的な威圧感を放っていた。しかし、少年はそれを気にする風もなく敷かれていたござに座る。村長もその対面に座った。
「それでは、依頼内容ですが・・・」
「『村の近くに住み着いた下級モンスターの駆除』だったと記憶していますが?」
「・・・・・・」
『だった』の部分を強調する少年の言葉に村長は押し黙る。少年は気にせずに言葉を繋げていく。
「そして依頼の区分は゛緊急゛。が、村のすぐ近くにモンスターがうろついているわけでもありませんでした。それに言い方は悪くなりますが、たかが下級、はっきり言いますと雑魚です。この村であっても、数人係で対処すればどうにかなるはずですよね?村長」
少年とは思えないほどに饒舌に言葉を紡ぎ、村長を見つめる。村長の口元は既に引きつっていた。
少年はそんな村長の様子を見て溜め息をつくと、
「舐めるなよ?クソジジィ」
「!!?」
抜き身の剣を突きつけた。それは、村長の首の少し前でピタリと止まる。
「ギルドは依頼主と冒険者それぞれの信頼で成り立ってる。その均衡を崩すって言うなら、俺は降りさしてもらう」
「ッ!!まっ、待ってくれっ!話す、話すからそれだはッ・・・!!」
村長は顔を青くしながらも必死に訴える。
「・・・チッ」
そんな村長の様子を少年は何も写っていない瞳で見つめ、剣を下ろす。
「・・・話せ」
少年は、いまだに体を強張らしている村長に向かって言い放つ。
「!す、すまない。いや、ありがとう。恩に着る。・・・本当に受けて・・・いや、何でもない」
村長はしばらくの間目を閉じていたが、目を開け、少年をしっかりと見据えると、゛真実゛を話し始めた。
「私がギルドに持って行った内容・・・該当モンスターを覚えているか?」
「あぁ・・・、『《ゴブリン》の上位個体である《オーガ》率いるゴブリンの群れの駆除』だったな」
少年は忌々しそうに答える。村長はそんな少年の様子には気付かず、一呼吸の後、告げる。
「実際は、『ゴブリン直系最上位個体《トール》率いるオーガの大群の殲滅』だ・・・!!」
村長の言葉に、少年は僅かに目を見開く。
「ハッ・・・。そういうことかよ・・・!」
少年は口角をつり上げながらそうつぶやく。
(あの狸ジジィがこんなクソみてぇな依頼押しつけてきたと思ったら・・・。あの野郎、全部知ってやがったな・・・!!)
少年は、気持ち悪い程の笑顔で依頼を押しつけてきた狸ジジィ・・・少年が滞在している街のギルドマスターを思い出し、更に笑みが深くなる。そんなことがあったとは知らない村長は、内心首を傾げるが、今は内容を話すのが先と、続きを話し始める。
「その大群は依頼にも書いていたとうり、半年程前に近くの森・・・この建物の後ろに広がっている森だが・・・はそこに住み着いた。そして、奴らの親玉であるトールは、私達に゛交渉゛を持ち掛けてきた」
「何・・・?」
少年は村長の言った゛交渉゛という言葉に身を乗り出す。
基本的にモンスターは言葉を話すことが出来ない。言葉を理解し、話すことが出来るのは、一部の゛例外゛と、強力なモンスターに限られる。
少年は腕を組み、考える。
(トールはゴブリン直系最上位個体つっても、モンスター全体で見れば雑魚だ。となると考えられるのは・・・)
「突然変異種・・・か・・・」
少年は腕を組んだまま呟く。
「あぁ、おそらく・・・。交渉の内容は、村人を殺さない代わりに、毎月家畜などの大量の食糧と・・・」
村長は言い淀むように言葉を切るが、覚悟を決めたように言う。
「魔力の高い人間を一人をよこせ、だった・・・!!」
少年はその言葉を聞いて口笛を吹く。
「へぇ、考えてんなぁ。確かに魔力の高い人間喰った方が自身の強化は、効率的になるよなぁ」
まるで友達を褒めるような軽さで、少年は相槌を打つ。そして、少年は目を閉じ考え始める。そんな中、村長は諦めていた。何せ、相手はトールである。しかも、オーガの大群を引き連れた・・・。こんな少年が一人で戦える・・・ましてや、勝てるはずがない。下手に挑んでしまえば村が危険に晒されることになる。ならばなぜ、わざわざランクの低い依頼を出し、戦えるはずもない冒険者を呼んだのかと言えば、生贄にするためである。
今回の生贄は、村長のたった一人の娘なのだ。子供がいなかった村長は、ある日、村の入り口に捨てられていた赤ん坊を、それこそ我が子のように愛情を注ぎ、育ててきた。その大切な娘を失うことは、村長にとって耐えられるものではなかった。そこで、ギルドにわざとランクの低い依頼を出し、やってきた新米冒険者を生贄にしようと考えていたのだ。ところが、やってきたのは明らかに新米冒険者ではないような少年。しかも、ギルドに反する者は容赦しないということを言外に言われ、この依頼を断ることも目に見えている。
そう考えていたからこそ、少年の口から出た言葉が直ぐに受け入れられなかった。
「いいぜ。受けてやるよ、この依頼」
「・・・は?」
間抜けな声を出した村長を見ながら、少年は再び言う。
「だから、受けてやるって」
「本当か・・・!!?」
村長は、今にも飛び上がりたいほどの喜びを抑えながら確認する。
「あぁ、俺一人でな」
「えっ・・・?」
(一人で?この少年が?)
村長は、てっきり少年が仲間を連れてくるものと思っていた。聞き間違いということを祈って、訊ねる。
「冗談ですよ・・・ね?」
「・・・・・・」
村長の言葉に少年は無言で懐から゛何か゛を取り出し、村長の足元に投げる。それを見て、村長は驚愕に顔を歪める。
それは少年のギルドカードだった。
ギルドカードとは、ギルドに登録している冒険者達の身分証明書のことで、名前・年齢・個人がたてた功績などが記載されている。また、ギルドカードは、カードを保有している冒険者のランクを色や材質で表している。白い革製のものから始まり、青革、赤革、鉄、銅、銀、金、プラチナ、そして、黒い合金で作られたカードで終わる。
村長が手に持っているカードの色は、
黒。
最高ランクの証。
更に、そのカードに刻まれた名前。
゛アルヴァーン・エバッシュ゛
一年前、11歳の若さで当時有名だった大規模盗賊団を、たった一人で一夜のうちに壊滅させた、
怪物《バケモノ》の名。
゛アルヴァーン・エバッシュ゛
人々はその者を、畏怖を持って呼ぶ。
《黒剣》と。
「・・・ふん」
茫然自失とする村長に背を向け、少年・・・アルは手に持っているカードを懐にしまい、そばに置いてあった剣を掴む。そしてそのまま扉に向かって歩き出す。
「あぁ、それとギルドにゴミ清掃の依頼を出しといた方がいいぜ」
アルは、扉の前で立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
「バラバラになった血まみれの肉を片付けたいなら、話は別だがなぁ」
その顔に狂気を貼り付けて。
アルは再び剣を引き摺りながら、歩いていく。村長はそれを、ただ見ることしかできなかった。
誤字脱字の指摘、小説へのアドバイス、感想等を、お待ちしています。感想をくれると作者のモチベーションが跳ね上がります。
次も読んでいただけると、ありがたいです。
(8/18)行間を少なくして、場面の変わり目に▽▲▽▲▽▲▽を入れました。