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ドラゴンマスター

「あっ、、、。」



そんな声がした。



それと同時に目が覚めた。俺は昔から寝起きが良く、明け方まで酒を飲んでいても朝7時には起きる体質だった。だから今日も目が覚めて普通に起きた。




つもりだった………。



「…………夢?」


朝っぱらから脳みそフル回転のはずなんだが、今俺の目の前にはどこまでも広い白い部屋。部屋の高さは20メートルくらいだろうか、俺の目寸だからはっきりとはわからんが。ただ奥行きと横の広さはハンパない。何せ両方とも先が見えない……。


そしてそこにあるのは俺の布団。と俺。


俺は布団に入ったまま自分の周りぐるりと確認して、ある一カ所で目が止まる。



俺の真後ろだ。


目の前にはドラゴン。中国的なドラゴンじゃなく西洋風のドラゴン。あの2足で立つやつね。サイズは10メートルくらいかな。



しかも真っ黒。



あ………目が合ってる…………。



でも夢だからいいか。


「……昨日飲み過ぎたかな……。」


昨日は会社の新人歓迎会だったからなぁと思いながら布団をかけ直して、また寝ようとする。



「……おい。」



ん?声かけられた?身体を声がした方に向ける。


そしてまたもやドラゴンが目の前に。


わぁ~。黒くて、でっかい(笑)



「寝るなって。」


そのドラゴンから声がかかる。


こっちはもう布団に

入っちゃって横になってるし、ドラゴンは10メートルくらいだし、もうどこから声出してるかわかんね~。


「あのさぁ、声遠すぎて訳わかんないから身体小さくなれたりする?」


俺はどうせ夢だし、と思って聞いてみた。


「可能だ。」


そう言った途端にドラゴンは姿形は変わらずあっというまに小さくなって2メートルくらいになる。


「これでいいか?」


ドラゴンがそう聞いてきたので俺は、「あぁ」とだけ返事をして布団からもそもそと出る。


「んで、何よう?」


俺は布団の上にあぐらをかきながら聞いた。


「すなぬ。」


ドラゴンが頭を下げながら謝る。


謝るドラゴンって結構シュールだな…。


「何が?俺あなたに何かされた覚えないんだけどなぁ。」


俺が半笑いで言葉を返す。


「覚えが無いのは当たり前だ。即死だからな。」


………ん?即死?


「…………これって夢だよね?」


俺は何も考えずに尋ねる。


「いや、ここはあの世と現実の狭間だ。嘘でも夢でも無い。今ここに居る事が現実だ。」


「いやいや、うっそだぁ~。」


俺の夢ってすげ~。リアル過ぎる(笑)


「信じられんか…なら…。」


ドラゴンはそう言うと、何処から出したかわからんが携帯を取り出し何処かに電話をかけはじめた。


「……あっ、もしもし。アビスです。…えぇ先程はどうも。今はどちらに?…あぁ、庭園ですか。……いや、ご子息の事なんですが今の現状を信じてもらえないもので……。あっ、本当ですか?なんかすいません……えぇ、それではすいませんが、よろしくお願いします。」


ドラゴンは携帯で話し終えると手(爪?)から携帯は一瞬で消してまた俺に話しかけてきた。


「今親御さんに連絡した。直ぐにきてくれるそうだ。」


えっ?補導されて警官に両親呼ばれるヤンチャな学生かい。


俺が一人心の中でドラゴンにツッコミを入れていると、突然後ろから何かで叩かれた。


「痛って~!何す『物分かりの悪い子だねぇ!』………って、はい?」






俺は自分の頭をさすりながら後ろを振り返ると、そこにはハリセを持った母親とくわえタバコをした父親という俺の両親が居た。


「……もうなんかツッコミ所満載………」


俺は後ろのドラゴンといい、目の前の両親といいさすがに夢と言えどうんざりしてため息を吐いた。


「まぁ、いいや。んで何しに来たの?」


俺は若干テンションが下がりながら両親に尋ねる。


「いや~、アビスがさぁ、困ってたみたいだから状況説明をしにきたのさ。馬鹿息子よ。」


親父はタバコの灰を落しながら喋る。


……馬鹿は余計だ。馬鹿親父。


「お前は馬鹿だからアビスに変わって俺が説明してやる。いいか?天界と魔界が軍事演習をやってたんだと。天界の司令官がシャインドラゴンで魔界の司令官がこのアビスドラゴンな。」


ふと俺は疑問になり、手を挙げる。


「あのさ~。俺のイメージだと天界と魔界って戦争してる感じなんだけど?」


「それには我が答えよう。」


後ろにいるアビスから話しかけられ首だけ後ろに向ける。


「確かにかつては戦争をしていたが今は神界として一つになっておる。基本的には軍事は魔界が、内政は天界が行っておる。だがかつての忌まわしい戦争を忘れない為にも100年に一度演習を行っておるのだ。まぁ、今はお互いのストレス発散が目的になっているがな……。ガス抜きみたいなものだ。」


「ストレス発散って……。」


「神様達もストレスが溜まるんだべ。話しの続きするぞ?」


親父がまた話し始めたので俺はまた親父の方へ首を向ける。


「んでな?今回その演習中にシャインとアビスの一騎打ちになったんだと。そしたらたまたま神界の結界の壊れてた所にアビスの攻撃が行っちまって、たまたま貫通しちまって、たまたま我が家に直撃しちまったんだと。」


「………あ~成る程!………って、そんなにたまたまが続くわけないだろ!!」


俺がノリツッコミを入れてると後ろから、


「そのたまたまがたまたま続いてしまったのだ。本当にすまない。」


アビスがそう言い、またもや頭をさげる。


「アビスさんもそんなに謝らなくていいぜ。やっちまったもんはしょうがないさ。」

親父はそういい笑顔で俺に「なっ?」と言ってくる。


……まぁ確かに、やっちまったもんはしょうがないよな……。


「アビス、さん?もうすんでしまった事はいいですから。それよりこれからの事をお願いします。」


俺は両親が説明してくれた事もあるのか段々と自分が死んだ事を信じ始めていた。もしかしたら俺の魂というものが死んだと認識し始めているのかもしれない。


しかし自分が死んだって言っても……俺も親父もあっさりしてるなぁ(笑)


「うむ。これからの事だが、ご両親は天界で生活をしてもらう事になっておる。衣食住は天界が責任を持って面倒をみる。」


「そうなのよ~。つまり私とお父さんは天界でかなりいい暮らしが出来るのよ~。」

母親が手にハリセンを持ったまま喜んでいた。


「全ては我等が責任だからな。ご両親には最高の暮らしを約束しよう。」


ドラゴンの言葉を聞いて俺は両親の生活が安泰という事で安心した。


「そしておぬしには別世界で生をやり直してもらう事になった。」


安心したのもつかの間。


アニメの世界だ……小説の世界だ……二次元の世界だ……。



「おい馬鹿息子!これは俺達からもお願いした事なんだ。俺達夫婦は幸せだった。お前も馬鹿だがきちんと大人に育てられた。だから俺達はこっちであとはゆっくりと生活するさ。だがお前はまだ若い。生き返る事は出来ないそうだが別の世界で生きる事は可能だとさ。だからお前には生きて欲しいんだよ。俺達はさ。」


馬鹿馬鹿うるさい。


馬鹿親父。


死んでからいいこと言うな………。



「おぬしに新しく生活してもらう世界には魔法がある。だから我の力をおぬしには与える。」


アビスはなんとも素敵な発言をしてくる。


これは夢の魔法使いか?


「って事は魔法使えるようになるの?」


俺は期待に満ちた目でアビスに尋ねる。


「いや、魔法は一切使えない。我が一切使えないからだ。おぬしには我の力の9割を与える。」


魔法は使えないのかぁ……残念……って9割!?


俺はアビスの事が心配になり悪い気もした。

「そんなに俺に与えて大丈夫なの?」


「大丈夫だ。それに我はもう3万年も生きた。あとはまたゆっくりと力をつけるから問題無い。おぬしは魔法は使えないが、最高の身体能力と我の力である『黒』の力が使える。」


「黒の力?」


「そうだ。我は闇や無の力を扱える。使い方も頭の中に知識として入るから問題無い。」


「そうか。なんか悪いな。でもありがとう。」


俺は頬をかきながらアビスに言う。


「気にするな。では早速、我の力の受け渡しを行う。」


そういうとアビスの身体の中心から黒い光る玉がでてきて俺の身体の中に吸い込まれていく。


一瞬心臓が暑くなった。そしてそのあと一気に身体に変化が現れる。身体中の筋肉が悲鳴を上げる。全身が筋肉痛になる感覚だ。とどめに身体の使い方と黒の力の使い方が脳に叩きこまれる。アビスが3万年生きてきた戦いの知識が頭に流れ込む。


脳と身体の激痛にどれくらい堪えただろうか………痛みが無くなって立ち上がる俺を母親が心配そうに見ていた。


「悪い母さん。心配かけた。もう大丈夫だ。」


俺が大丈夫そうなのを見ると母親も息を吐き落ち着く。


俺は手を握ったり開いたりして身体の具合を確かめる。身体の中から力が溢れ出す。


「我の力の受け渡しは無事すんだようだな。」


アビスが満足そうに言う。


「無事かどうかは別にして(笑)……力はしっかりと貰ったよ。ありがとう。」


俺の言葉にアビスも「良かった」と安心したようだった。


「あと一つおぬしには渡しておくものがある。」


アビスがそう言うと共に俺とアビスの間の空間に真っ黒い闇が広がりその中から一本の刀と鞘が落ちてきて刀は地面に突き刺さる。


「これは?」


俺は突き刺さっている刀の柄に手をかけアビスに問い掛ける。


「これは我の鱗より造りし刀。名は黒刀。今のおぬしの力を込めて扱うならば斬れぬものなど存在せんであろう。」


俺は黒刀を地面から引き抜くとその感触を確かめる。


俺の中のアビスの力かめちゃくちゃ馴染む。


「おぬしに与えた力はもうおぬしの力だ。あとはおぬしが好きなように使いこなせ。」


アビスの声に俺は頷き黒刀を鞘に納め左手に持つ。


「それではそろそろおぬしには新しい世界に行ってもらう。」


俺が頷くと同時に少し離れた所に扉か現れる。


俺はゆっくりとその扉に向かって歩きだす。


後ろから父親が俺に声をかける。


「馬鹿息子!お前の好きなように生きろ!」

俺はその声に後ろを振り返らずに手を上げる事で答える。


「我の力を受け取りし者よ。汝の名は?」


さらにアビスの声が聞こえた俺は後ろを振り返り答える。


「俺は………進藤武流………シンドウ・タケルだ!」


俺は笑顔で答えると扉をくぐった。


新しい世界に行く為に………

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