ヘレナの焦燥と招かれざる来訪者
時は戻りアトラが目を覚まして二週間後、アトラはヘレナの部屋へ呼び付けられていた。彼女はアトラを椅子に座らせて温かいお茶を出すと、その向かいに腰掛けて口を開いた。
「それで、お前が見たその怪物とやらの話を聞かせてくれ。フェレスはあの件以来この話をしようとするとかなり怯えてしまうからアトラにしか聞けなくてな」
「まあそうだろうな、実際俺も怖かったし…ってか俺にその配慮はないのかよ」
「はっはっは、お前なら肝っ玉が座ってるから大丈夫だと思ったんだよ。そうカッカするな、こっちはずっと心配してたんだぞ?それより話を聞かせてくれ、あの森で何があったのか」
「ん、そうだなあ。まず先生に言われて山菜を取りに行ったんだけど、いつもとは違う場所に行ってしまったんだけどそこに俺はよくわからないけどティムが言うには珍しい植物がたくさん生えてたらしいんだ」
「なるほど、そのまま続けてくれ」
「んで、俺がその間暇だから近くの川で魚を取ってたんだけどそうしたらフェレスの悲鳴が聞こえてきて、急いで戻ってみるとそこに例の怪物がいたんだ…」
「怪物?一体どんなだったんだ?」
「デカさはだいたい4から5メーターぐらいで真っ黒、これだけならまだしも不気味なのは二足歩行で手足が異常に長くてずっと不規則に揺らしていたし、腕に関しては四本もあってめちゃくちゃ伸びる。それに白い仮面みたいなのをしていたんだ」
「待て待て待て、真っ黒な巨体に白い仮面だと?他には何かあったか?」
「あとはひたすら死に物狂いで逃げ回って、名前忘れたけど爆発するきのみで反撃したんだけどそれでブチギレちゃったみたいで、細長かった手足が急に肥大化してすごいスピードで襲いかかってきたよ」
ここまであったことを話した時、ふとヘレナの表情が険しくなっていくのに気づいた。まるで何か知っているような雰囲気を醸している。
「アトラ、一体ソレからどうやって逃げ延びたんだ?」
「えっと…、信じてもらえるかわからないんだけど、あの怪物に殺されかけて諦めそうになった時、なんだか体から力が漲ってきたんだ。それからはもうすごかったんだぜ、オーレンスにも言ったけ体が熱くなってズバババーンってなってそいつを殴りとば…」
殴り飛ばした、そう言おうとしたが、彼女が強く机を叩き乱暴に椅子から立ち上がる音で遮られた。彼女の表情は険しいなんてものではない、ヘレナは何かを恐れているようにアトラには見えた。
「アトラ、頭をこっちに向けてみろ」
言われた通りに彼女に頭を差し出してみると、彼女はアトラの頭を無造作に撫で回った。そしてヘレナはふと手に硬い感触を二つ感じた。「もういいぞ」そう言ってヘレナは再び椅子に座り直した。
「アトラ、今すぐこの家を出て行くんだ。お前がその怪物と遭遇してもはや時が経ちすぎている、急がないと大変なことになる」
「待てよ、急に出て行けってなんだよ。俺が何かしたのか?それに大変なことって…」
その刹那、轟音が鳴り響き孤児院が大きく揺れうごいた。




