忍び寄る影、束の間の休息
あの不思議な出来事から数日が経った。今ではフェレスもあの時よりは落ち着いて生活を送っていて、アトラも徐々に体の調子が回復してきて日々の生活を取り戻しつつあった。そうして久しぶりに外でぼんやりと空を眺めていると、洗濯物を干し終わったティムがやってきた。
「どうしたの、ぼーっとしちゃって。まだどこか痛むの?」
「ああティム、別にそう言うのじゃないんだ。ただ最近変な夢を見るんだよな」
「変な夢?どんな感じなの?」
「そうだな、まず真っ暗な暗闇の中にポツンと1人で立ってるんだ。何もない、何も見えない、そんな寂しい空間にいるんだ。そしたらどこからともなく声が聞こえるんだ」
「声?それってどんな?」
「ちょっとうろ覚えなんだけどな…、毎回言ってることが違うんだ。でも中身は一緒、痛いだとか苦しいだとか憎いだとか心の叫びみたいなのが聞こえるんだ。感情がすごい激しくて荒々しくて、それでいて悲しくなるような、そんな声がな」
「何それ、ちょっと怖いわね。最近ちゃんと眠れてるの?」
「それは大丈夫、ヘレナに絶対にベットから抜けるな!って怒鳴られてやることないからこの頃は飽きるほどに寝てるよ。その夢も毎日見るわけじゃないしな」
「そう?ならいいんだけど…。何かあったら先生に言いなさいよ?も、もちろん私でもいいけど…」
「ああ、心配ありがとな。これからはまたバリバリ手伝いしてみんなを助けるからな」
「そこまでしなくても今は今でアトラがいないから静かで平和だなーって誰かが言ってたわよ」
「ん、誰だそんなこと言うやつ!全快したら覚えておけよ!」
そうして2人の談笑が青い青い夏の空へ吸い込まれていった。このままみんなで仲良く暮らせたらいい、そんな彼らの願いとは裏腹に遠くからは不穏な影が迫ってきていた…
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アトラが謎の怪物に襲われた同時刻、聖堂騎士団第五大隊の軍艦船にて…
「ガイン様、ただいまエリクシア大陸西部から膨大な量の魔素を検知しました」
「何?おおよその場所はわかるか」
「少々お待ちください…、出力源は西部の小さな村からのようです」
「ラプトールめ、狡賢く人間に紛れ込んで生活していると思うと虫唾が走る…。総員先頭準備、その村へ向かい直ちに奴らを根絶やしにする」
「「「はい!!!」」」
ガインの指令を受けた兵士たちはそれぞれの持ち場につき、帆をひろげ操舵輪を握り舵をとる。方向転換を終えたのちに船は凄まじい速度で飛行するのだった。
「奴らのような危険因子を根絶やしにする、そして正義を知らしめるのだ…」
彼は冷たく言葉を吐き、拳を固く握りしめるのだった。




