温もりと不思議な夢
憎い、全てが憎い。民衆を扇動し私を否定させるあいつが…、私を暗闇へ閉じ込め幽閉し飢餓と孤独を与えたあいつが、罵詈雑言を浴びせ暴力を振るい汚れたものを見るような視線を突きつけてくるあいつが…、互いに互いを愛していたクセに最後に己を裏切り絶望の底へ突き落としたあいつが…。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
どれだけ恐怖を、孤独を、飢餓を、絶望を、そして苦しみを感じただろう。頭がおかしくなりそうでやっとのことで自我を保ち、幸せを願い続けた。しかし、この世は残酷なもので私は暗い森の中で1人息絶える。お前はどうだ、この世界をどう思う。幾多の苦難を乗り越えようと最後に待っているのは絶望かもしれぬ。お前はどう生きる、どう抗う、どう戦う、お前の生き様に己の価値を刻み闘志を奮い立たせるのだ…
「んにゃ…、なんだ今のは。夢なのか」
不思議な夢から覚め、目をこすりながら周りを見渡すとそこは見慣れた自室のベットの上だった。外からは暖かい日差しが輝いていて微かに残る眠気を吹き飛ばして完全に覚醒する。すると少し重りを感じてふと視線を落とすと、ベットに寄りかかってスヤスヤと寝息を立てているティムがいた。状況がうまく飲み込めずとりあえず肩を揺さぶって起こしてみる。
「ティム、なあティムってば。こんなとこで寝てたら風邪ひくだろうが」
するとゆっくり瞼を起こしたティムはぼんやりとした目つきでアトラの顔を数分間見つめると…
「きゃあああああぁぁぁぁ!!」
「うわああああ!?」
素早い動作で悲鳴をあげ、勢いよく部屋の扉を開け放ち飛び出していった。一体なんだったのだろう。するとたくさんの足音が聞こえて部屋の中にヘレナやみんなが来た。本当になんなのだと混乱しているとフェレスが飛び出してきてアトラの顔を見つめ大粒の涙をこぼした。
「よがった…、よがったよお…。てっきり僕のせいで死んじゃったのかと思って、生きてて本当に本当によがった…」
「待て待て、俺を勝手に殺すなよ。なんだってそんなに泣いてるんだ?」
すると目の端の涙を拭ったヘレナが屈んで目線を合わせる。
「アトラ、落ち着いて聞いてくれ。お前がボロボロになって帰ってきてオーレンスに風呂に入れてもらっていたお前は急にぶっ倒れてそれから三週間眠り続けてたんだ」
「…は?なわけないだろ、実際俺今ピンピンしてるぞ。こんな感じで立ち上がったりもってうわあ!」
信じられないことを伝えられ、己が元気なことを証明しようとしてベットから降りると唐突に激しい立ちくらみで視界が歪み、ヘレナに抱き抱えてもらう。
「無茶するな、今日は一日絶対安静だ。何があってもベットから降りるな。それとティムとホロウにありがとうって言っときなよ、2人が三週間主にアトラの看病をしてくれたんだからな」
「別にそんなに感謝されるほどのことしてないわよ、本当にアトラは迷惑かけるんだから」
「えぇー?ティムってば、一番アトラのこと心配して一生懸命看病してたりぃ、なんなら夜は手をつな…」
「わーー!ストップホロウ!いらないこと言うんじゃないの!」
なるほど、さっきベットに寄りかかって寝息を立てていたのはずっとそばにいて看病してくれて疲れていたからなのだろう。なんだかものすごいありがたみと共に、少し迷惑をかけてしまったことに申し訳なさを感じてしまう。ホロウもきっと自分のことを気にかけてくれたのだろう。
「ありがとうな、アトラとホロウ。早く元気になって倍働いてこの恩はいつか返すからな」
「えぇー?そんなことしなくてもお、ちょっと優しくしてあげるだけでティムは十分喜ぶんですよぉ」
「ちょっと!?さっきからホロウは何を言ってるの!いい加減おかしなことを言うのはやめて!」
「おっとお、図星刺されて明らかにおかしいのですよ?もっと自分に素直になってもいいのですよお?」
そうホロウに挑発されたティムはますます顔を赤くし、ヘレナが呆れて静止しようとしているがあまりにもおかしくてみんな吹き出し、孤児院の一角の部屋にみんなの明るい声が響き渡った。




