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ランプの精の欲しいもの

作者: 一飼 安美

 いやあ、どうだったい、旦那!姫様とはラブラブかい!?そんなことをいきなり聞いてくるランプの精は、王様になったって一日やそこらでイチャイチャの関係にはならないということはわかっていないらしい。オレ様の魔法があればどんな願いもちょちょいのちょい、姫様にプロポーズの絶好のチャーンス!と景気のいいことを言っていたが要するにチャンスしか作れないわけで、なんて原作に忠実なヤツなのだろう。そこは超越してくれれば話が早いのに。


 いやあどこから見ても立派な王様、スーパーリッチに間違いない!ははっはー!どうだい!と言い出したのでさすがに止めた。ただでも二次創作が禁止なのにそこは非常に著作権にこだわるからアラビアンナイトから出ないでくれ。フォローのしようがなくなる。同じものを題材にしました、で通せる範囲にしてくれ。それは二つ目のお願い?と聞かれたがもちろんメタ発言なのでその法則は超越している。


 三つ目のお願いは、こいつを自由にすることだと約束している。それって原作なのかと聞かれるとよく知らないが、これしか知らないのでもうそれで通す。神様がランプに閉じ込めたというこいつを自由にしていいものかどうかは、よくわかっていない。だが紀元前アラビアの若者がそれを気にしようはずもなく、そういう約束をした。ランプの精は、ネズミとかアヒルがいるあっち方面に走らないように注意しながら、自分の話を始めた。


 かつて天空にいたこいつの種族の原初の一人が、神様と喧嘩をした。お互いに一歩も譲らないから「お互いに神様と魔人なんだ、試合で決めようや」とリングに上がったら神様をボコボコにしてしまい、周りの連中に「なんて無礼な!」と簀巻きにされて放り出された。たいしたことないヤツに思えるが、神様はボコボコにしたわけだ。要するにみんなたいしたことない。


 歴史は勝者に作られる。くだらない口喧嘩は話が盛りに盛られて世界存亡の争い、神々の決戦になってしまい、それに負けた……勝ったはずなんだけど負けたこいつの一族は、悪人扱い。そんならいっそなってしまおうと、悪人になったヤツもたくさんいるらしい。そんな一族だから、自由にすると言って勝手なお願いをするヤツも、たくさんいたらしい。


 ひどいヤツらだな、とつぶやくと、そうだろ!?って聞いてきた。でも仕方がない、と肩を落とすランプの精に、言った。仕方なくなんかない、約束は守るものだ。ウソをつくヤツなんて最低だ。普通のことを言ったのに、ランプの精は不思議そうだった。あんたは、オレを疑わないのか?どう見たっておかしいし怪しい。自分でもそう思うのに、と。オレにとっては、その方が不思議な話で。


「信用できるかどうかは、オレが決めるんだ」


 ……ランプの精は、嬉しそうに笑った。あんたはきっと、いい王様になるよ。オレが保証する。頼りにならないランプの精が、そう言ってくれたことが嬉しかった。ランプの精が、三つ目の願いで「ランプの」精ではなくなる、三日ほど前の話だ。

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