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夢賊 冒険は少女ハートと少年夢賊ヴォイスと共に  作者: 六福亭(鹿西こころ)
6/6

みんなの声

 僕はここで、死ぬのかもしれない。そう覚悟を決めた。船長やみんなは、僕を探すだろう。でも魔術師のコレクションになった僕は、助けを求めることもできない。

 ハートが、僕を押しのけた。

「やめて。ヴォイスに手を出さないで!」

「ハート」

 魔術師は満足そうに笑う。

「どうして……わたしを狙うの。最後に教えて。わたしは一体誰で、どこから来たの?」

 ハートは泣き出しそうだった。僕にはまた、声がきこえてくる。僕はただ、それに耳を傾ける。

「いいだろう。最後に教えてやる。お前はあちらの世界で永遠の眠りにつこうとしている、哀れな少女なのだ。わしがお前の魂を運んでいる時に、この夢賊どもに邪魔をされたのだ……」

 ハートは息を呑んだ。

「わたしは……わたしの名前は……?」

「竹下楓。それも、今日までのものだがな」

 ハートがマットにへたりこむ。魔術師が彼女の腕を捕まえようとする……

 僕はその時のありったけの勇気をふるい、魔術師の顔をはたいた。魔術師はバランスを崩し、夜馬から落下した。

 夜馬はいななき、主人を追いかけていった。ハートも驚いている。

「君が死ぬなんて嘘だよ。君の家族も友達も、みんな君が起きるのを待ってる! 今、聞こえたんだ!」


『お願い楓、目を覚まして』

『ねえ、また学校に行こうよ。楓がいない教室なんて、つまんないよ。今度一緒にドッジボールしようって言ったじゃん!』

『楓……あんなつまらないことで叱るんじゃなかった。僕の寿命と引き換えでいい、誰か楓を助けてくれ!』

『楓ちゃんはきっと治るよ。あたし信じてるもん、絶対大丈夫だもん……』


「ハート、君はこの夢の果ての向こうへ行くんだ」

 僕がそう言った時、ハートは泣いていた。それでも、僕の言葉に、確かにうなずいた。

「きっと今なら、間に合うよ」

「ヴォイスは一緒に来ないのよね……?」

 ハートは僕の手を離さない。僕だって、離したくない。でも、魔術師がいつ戻ってくるか分からない。

「うん。僕はいけない。だけど夢の中から、君が元気でいるように祈るよ!」

「また会える? ねえ、わたしまた、夢の中であなたたちに会いに行けるかしら?」

「僕の方から、君の夢に遊びに行くよ、ハート」

「約束よ。絶対絶対、会いにきてね。わたし、ヴォイスのこと、絶対に忘れないから!」

 さよならだ。僕は、マットに直進を命じ、自分は飛び降りた。ハートの叫び声が遠ざかっていく。僕も、果てしない下へ落ちていく__


「ヴォイス!」

 気がつくと、僕は柔らかいシーツの上に寝ていた。僕をのぞきこむのは、スプリングだった。

「スプリング……」

「無事でよかった。だけど、ハートはどうした?」

 僕は力なく笑った。

「ハートは、元の世界へ返したよ。人間だったんだ」

「そっか……」

 スプリングは僕を起こし、抱きしめてくれた。寂しくて悲しかった心が、温かくなった気がする。

「帰ろう、仲間が待つところへ」

「うん」


 それからさんざん警戒したけど、あの魔術師はもう現れなかった。

 「ねぐら」の住人が眠りについた後、僕らはベッドでの旅を再開する。魔術師によって眠らされていた仲間たちは、僕らが戻ってきてすぐに自然と目を覚ました。新たな仲間が加わることはなく、いつも通りの旅が続いていく。

 だけど、僕は、またハートと会えることを信じてる。彼女が僕を呼べば、どこにいたって聞こえるはずだ。

 何故なら、今も聞こえているからだ。ハートの目覚めを大喜びで迎える人たちの声。長い眠りから覚めたばかりで、まだ僕との冒険の余韻にひたってるハートの声。


 もし次の話をする時があるとすれば、それは__あの謎の板の話になるのかな?


いかがだったでしょうか? 機会があったら、また、続きを書きたいなって思います!

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