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ノベルライターズ  作者: カフェオレ
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アドバイス

「里奈ー?せっかくお姉ちゃん帰ってきたんだから部屋に籠もってないで遊ぼうよ」

 里奈の部屋をノックする音。そして誰もいなくなった部屋で考え事をする彼女を引き出そうとする姉、実の声。実が帰ってくる事を知らされていなかったため里奈は驚きを隠せなかった。

「お姉ちゃん?もう、帰ってくるなら連絡してっていつも言ってるでしょ?」

 扉を開けると実は満面の笑みで里奈の肩を持った。

「えへへ。サプラーイズ!」

 ピースサインが両手で作られた。それに対して里奈はため息をつく。里奈は感情を隠すのが苦手で、すぐ顔に出てしまう。姉である実はそれに気づき、逃さなかった。

「どしたのさ我がかわいい妹」

「実は」

「なになに?ついに奏汰くんと恋に発展?」

「違うから。とりあえず話聞いて」

 里奈はぷくっと両頬を膨らませた。そして実を部屋に入れ、事の経緯を話した。

―お姉ちゃんなら、恋のこと少しくらいわかるはず。聞くくらいなら反則にならないよね。奏汰君。

「男子がキュンとくる仕草でしょ?」

「うん。お姉ちゃんならそういうの分かるかなって思ったんだけど」

「んー。お姉ちゃんも男の子じゃないからねえ」

 実は顎に手を当て首を傾げた。なんとか実に答えを求めようと眼差しを送るがどうやら出てこないようだ。

「お願いお姉ちゃん。コンクールに出せなくなっちゃう」

「そう言われても。んー…」

 思考を巡らせるが、中々答えがでない模様。

「あ、でもね里奈」

 少しして、実は口を開いた。両膝に顎を挟んでいた里奈は目線を上げた。

「可愛い人は、何をしても可愛いもんだよ」

「なにそれ」

 何か案が出たのかと期待した里奈を裏切らんとばかりの意見だ。里奈は眉をひそめた。

「だから、里奈は何しても可愛いよってこと。ていうか、可愛いことをしよう、モテようとしようって頑張ってる人が一番下の可愛いものだよ」

「別にモテようとしてるわけじゃ」

「自分が思うようにしてみなよ。里奈なら大丈夫。第一奏汰君は事情を知ってるわけでしょ?だから尚更大丈夫」

 背中をぽんと押された。そう、奏汰も事情を知っている。だから失敗しても奏汰は軽蔑も罵倒もしない。

「里奈だって奏汰君が失敗しても変に思わないでしょ?」

「もちろん。私が頼んでやってもらってるんだもん。変に物事言えないよ」

「奏汰くんもだと思うから安心して、思いっきりやりな!私は早く里奈の小説読みたいなー。インタビューとか受けるってなったら私呼んでよ?」

 話が飛躍しすぎだ。まだ里奈はインタビューを受けるどころかシナリオだけができているという段階。書こうとしているだけでまだ何も進んでいないのだ。

「まだ早いよ」

―もう、せっかちだなぁ。

 里奈の中ではなぜ奏汰が自分と同じように思うのかと言う疑問が残っていた。

 




「お願いします!ここで調理させてください」

―ん?なんだろう。

 バイトの支度が済み部屋からでてきたら、奏汰が実に何やら懇願していた。その様子を扉の隙間から観察する。

「ジブリじゃないんだから…」

「どうも接客がだめで、でも料理ならできるんです。自信しかないんです。だからお願いします!ここで調理させてください!」

―奏汰くん?!お姉ちゃんにあんなに頭下げてる…。そんなに調理に行きたかったんだ。すごいなぁ。自分の作った料理を人に出そうと思えるなんて。人に自分の何かを見てもらうのって、すごいことだよね。それも自分から、あんなに必死で。そういうのって、ひとつまみの好奇心だけじゃできないこと。何かしらの自信と合わさってできるもの。奏汰くんがどうなのかはわからないけど、すごい勇気だってことくらいはわかる。

「んー。そうだねぇ。流石に新入りに任せるのは気が引けるかな」

「そうですか…」

 ドアの隙間からは僅からながら光景が見れる。見つからないように数センチしか開けていない。しかしちゃんと声は聞こえる。

―やっぱり新しい人には任せれないんだ。

 奏汰の接客のできなさは実も今までの数回で十分理解していた。それを見てのこの判断だ。

「でも、接客もふたりで足りるんだよね」

 実が腕を組んでそう言った。奏汰がここにくる前も、接客が里奈と麻也、調理担当が実の3人体制だった。里奈と麻也のふたりで足りるほどの客しか来ない。実際今までも仕事中一人は暇という時間さえあったくらい。

「だから、調理場で手伝ってよ。調理はひとりじゃあ足りないから」

 奏汰にとっては救いの手だった。

「え?いいんですか?」

 希望に満ちた顔で奏汰は顔を上げた。それに実はグッとポーズで応える。

 里奈は今すぐ飛び出して奏汰を祝福したい気持ちでいっぱいだった。しかしいま出ていけば、盗み見ていたことをバレてしまうのでそれはよした。

「うん。そうしないと他にもがっかりする人が居るからね」

「がっかりする人?」

―お姉ちゃん、誰のことを言ってるんだろう。

「ね、りーな!」

「わたし!?」

―嘘。なんでバレてるの?いつから?私ちゃんと見えないようにしてたはずなんだけど。

 里奈は思わず扉を開けた。すると今まで盗み見ていたことが奏汰にも公となった。

「ええ?!里奈さん?!」

「なんでわかったの?」

「だって、薄っすら開いてるんだもん。着替えるなら絶対ちゃんと閉めるでしょ?それにその部屋にいる時点で聞こえないのはおかしい」

―あちゃー。なんだか痛いところ突かれた。

「着替えじゃなくても、里奈はめんどくさがりだから適当に閉めるからねぇ」

 里奈の性格を知り尽くす姉だからこそできる名推理。一本取られたとはこのことだろう。

「でも」

 里奈は、改めてにっこり笑顔を作り奏汰に

「良かったね!調理担当入れて」

 と祝福の言葉を送った。






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