俺と彼女の愛し方
男主人公/一人称/自殺/片思い/バッドエンド
目の前で恋人が死んだ。笑顔で飛び下りた。自殺だった。
俺のためだけの死に方だった。
呆然としていると校舎の下が騒がしくなってきた。どうやら彼女の死体に集まってきたらしい。
「きゅ、救急車を!」
馬鹿か、もう死んでるだろ。
「な、なんで¿¿¿¿さんが?!」
俺に殺されないためだ。
「うわッグロイな」
彼女の中身を勝手に撮るなクズ。
「あれ。上に誰か――」
ハロー! 俺は逃げも隠れもしねぇぜ。
目が合った生徒に向けてひらりと手を振ってみせる。彼女が死んだ今、足掻く理由は無い。それに真相は直ぐに彼女の日記から判明するはずだ。
俺を捕まえるために先生達が校舎に飛び込んだ。まもなく屋上へ到達するだろう。
眼下には彼女がいる。ぐにゃりと曲がった首と手足。コンクリートに流れる真っ赤な血。あの汚らしい死体を愛しいと思える俺は、真性の変態かそれとも単純に深く彼女を愛しているだけか。
照れくさそうに笑う顔が好きだ。日に焼けた健康的な手足が好きだ。俺を呼ぶ声が好きだ。彼女が彼女たらしめる全てを愛している。
でも、彼女は死んだ。
――死なないでね。
彼女が飛び降りる直前に言った言葉が脳内でぐるぐると廻る。自分は死んだくせに俺を殺してくれなかった。
愛しく思う相手を殺してしまう彼女は、俺のことをとうとう殺さずに死んだ。
「あぁ、なるほど」
頬を伝う生温い液体は妙にしょっぱくて、俺は自分が悲しんでいることに気付いた。
「愛して欲しかったんだ」
――なんて、今更か。
笑いながらしゃがみ込む。泣いた。声をあげて泣いた。
おやすみ。俺を愛してくれなかった俺の愛しい人。次はお揃いの愛し方をしよう。