落ちこぼれサンタクロース
プロローグ
ーいい子にしてないとサンタさん来ないよ。
おいおい、そんなことにサンタさんの名前を使わないでくれよ。もっと幸せなことに使ってくれないか。例えば、「凄い!この前、おばあちゃんのお手伝いしっかりしたんだね。おばあちゃんすごく喜んでたよ。サンタさんもきっと見てくれてるね。」みたいにさ。
吹く風が冷たくなると、夜道はカラフルな電飾に彩られ、どこからともなくクリスマスソングが流れる。道ゆく人の吐く息は白く、冬の訪れを感じさせる。体に触れる風は冷たく、体温を奪っていくが、その代わり一緒にいる人がいることの暖かさを際立たせる。冬は寒くて、そして温かい季節だ。
-お前は禁忌を犯した。
ですが、これには理由が。
-どんな理由があろうと、この事実は変わらない。
しかし、
-お前の資格を剥奪し、この組織からの永久追放を言い渡す。我らの前から、さっさと失せろ。
ボス。お願いします。せめて、教えてください。あの子は、あの子はどうなったのでしょうか。
-あの子は、死んだ。
そんな、嘘だ。嘘だ。
-本当の話だ。お前がしたことは、そういうことなんだよ。
赤い帽子に、赤い服。白いおひげに、優しい笑顔。大きな袋には、たくさんのプレゼントが入っている。沢山のトナカイにソリを引かせ、クリスマスの夜に、夜空を駆け抜ける。とても優しそうなおじいさん。
もちろん、サンタクロースのことです。
でも、サンタクロースを信じている大人なんて、もうほとんどこの世界にはいないはず。だって、サンタクロースはおとぎ話なんだから。
しかし、本当はサンタクロースはすぐ近くにいるんです。もしかしたら、ほらすぐそこにも。