第五話「3人目の『元』魔法少女は、復讐の魔女!?」中編
【注意】
前回の話と続き物になっているので、前回の話をご視聴の上ご覧ください。
強めのシリアス、性的気味な表現があります。苦手な方は閲覧を控えてください。
また、今回の第五話は「前中後編」構成になっています。こちらは中編です。
~あらすじ~
2人目の魔法少女「美彩みくる」を仲間に加えたユウキ、アマネ、アイルの4人パーティ。
そして最後の魔法少女、3人目の『竜ヶ崎姫子』がいるという魔女の森を目指し、アイドラウム王国を旅立つのであった。
しかし、その魔女の森に、魔王軍もまた先回りしようとしていたのであった―――。
ユウキたち一行が、アイドラウム王国を旅立ってから、3日。
北西の平原を馬車で進み、道中の魔物を倒して経験値を貯めながら、『こうもり峠』の先にある大きな山々が連なる山脈の先を目指していた。
「あたしたち……だいぶ強くなったんじゃないかしら?」
アマネは、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねながら、ワンダーロッドを振り回している。
アマネ▼現在のステイタス:LV.28
「ええ……そうね。この辺りのモンスター程度なら、貴方たちが変身を使うまでもなく十分戦えると思うわ」
アイルは、優雅に馬車に揺られつつ、本を読んでいる。
アイル▼現在のステイタス:LV.39
「僕も、『フレアボムズ』くらいなら、変身しなくても楽々使えるようになってきたよ! へへっ、今なら負ける気がしないよ!」
ユウキは、よくあるソードに、炎の呪文をまとわせ、意気揚々と歩いている。
ユウキ▼現在のステイタス:LV.28
「それに、ユーキ君もアマネちゃんも、ここ数日ですっかり体力ついてきたんじゃない? まっ、ボクの教え方がうまいから、なんじゃないかな!? キャハッ☆」
ミクルは、パチッとウインクをしながら、先ほど野山で見つけたリンゴを頬張っている。
ミクル▼現在のステイタス:LV.37
「まあ……みくる君の教え方はともかく、2人には早く長時間変身を可能になる力を身に着けてもらわないとね。魔王城のような強い魔物が多くいる場所では、眠っている時間でも変身していないといけないし」
アイルが言った。
「まあ、ボクもそれできるようになるのに1年はかかったんだし? 焦らずゆっくり覚えていけばいいよ~。それに、次の『魔女の森』に棲む魔物たちは、『推奨レベル30』。君たちの特訓には、ちょうどいいんじゃないかな?」
「……そう、だな! 僕たちも、ずっとミクル君やアイルお姉さんの力に頼ってばかりでもいけないし」
「もっとレベルを上げて、強くなってやるんだから!」
実は、ここまでの道中は、魔王城が近いため魔物のレベルがとても高く、アイルやミクルが積極的に魔物を倒して、ユウキとアマネは後方で控えてとどめだけ攻撃に参加する、というスタイルで戦闘していたのだが……アイドラウム王国からさらに西に行くことで、魔物たちのレベルが低くなり、ユウキたちの実力でも倒せるような相手も増えてきたのだ。ただ、森やダンジョンの中のような場所は、平原に比べると魔物のレベルが少し上がるため、注意しなければならないが……
「……あら? なにか見えてきたわ!」
アマネが指さす先には、深い森の入り口にたたずむ、山小屋のような建物だった。
「……ここが、『魔女の森』の入り口だネ! ……一応、この森に向かう冒険者の、最後の休憩所ってところだけど」
「あら! じゃあ、ミートパティ君をそろそろ休ませてあげなくちゃ! だいぶ山道歩いて疲れたもんね~」
「ひひ~ん」
アマネは、馬車を引っ張る馬の頭をやさしくなでる。アマネが名前を付けた馬のミートパティ君も、アマネに随分なついているようで、とても嬉しそうだ。
「……思うんだけど、ミートパティって、なんか食べ物みたいな名前だよな」
「あら! 失礼ね! 本家のミートパティは牛肉よ!?」
「ってやっぱ食べ物かい!?」
「おーいお二人さんストップストップ。誰かいるみたいだよ~」
山小屋から、誰かがやってくるようだ。一行は、馬車を止めた。
「おお、この森に人が来るなど何か月ぶりか……お若いの。まさか……魔女の森に踏み込もうというのか?」
ボロボロのローブに身を包んだ、しわくちゃ顔の老人が、こちらを見て言った。
「そうですけど……貴方は?」
「ワシはこの宿場の管理人じゃ……じゃが、今はこの魔女の森に入るのはやめたほうがいい。引き返すのじゃ」
「……どういうことです? この魔女の森は、魔法使いたちが薬などに利用するキノコや霊樹の枝を集めに、冒険者たちもよく足を踏み入れる場所でしょう? この森の魔物たち程度に、アタシたちは……」
「お若いの。それはもう過去の話じゃ。数か月前のことじゃ……この森に、『刹鬼』が住み着いてからというもの、動物たちはおろか、凶暴な森の魔物たちすらこの森から逃げ出すようになった。そして、刹鬼を倒そうと、森に足を踏み入れた冒険者たちは皆……刹鬼のあまりの強さに、恐怖で記憶を失いまともに言葉を発せられぬほど憔悴して森の入り口に放り出されておった。じゃから、悪いことは言わぬ。引き返すがよい」
老人のその言葉を聞いたとき、ユウキたちはうなづいた。
「だったら……なおさら引けないね! 僕たちは……勇者なんだ!」
ユウキが力強く言った。
「ええ! やばい怪物なら……あたしたちが倒さなくっちゃね!」
アマネも、ぽんと胸を叩く。
「ええ、二人とも……その通りよ。ご老人。ご安心ください。アタシたちが、その刹鬼とやらを退治してきます」
アイルも言った。
「なにより……あの子がこの森にいるなら、危ないかもしれないしから、ネ! イヤなヤツだけど、助けないと」
4人がそう言うと、老人は少しあご髭に手を触れ、考え込んだ。
「そうか……お前たちは、あの娘の……」
「ん? おじいさん、今何か……?」
「……いや。なんでもない。……よかろう。お前たちの馬車はワシが責任をもって預かろう。……あと、これも持って行け」
老人はそう言うと、ユウキにランタンを渡した。
「いいか……この森で、灯りを失うことは、死につながる。くれぐれも、気を付けていくがよい」
「は~い! ……よくわからないけど、おじいさん! ミートパティ君のこと、よろしくお願いします!」
老人の言葉に、意味深な何かを感じながらも……4人は、森に入る決意を固めてうなづいた。
~魔女の森~
「それにしても……『刹鬼』かぁ。以前ボクがこの森に来た時には、そんな怪物もいなかったし……この森もタダのいい感じのレベル上げポイントでしかなかったからなぁ」
霧の濃い、森の中。針葉樹と、ぼんやり光るキノコばかりが見える森の中は、日光がほとんど見えず、夜かと思うほど鬱蒼としていた。
「アタシのときも、そんな感じだったわね……あ、でも、アタシのときは『推奨レベル20』だったわ。年がたつにつれて、平均的に魔物のレベルが上がっているのかしら?」
「なんにせよ……魔物の気配はしないね……アマネちゃん、なにか見える?」
「ん~……暗くてなんにもみえないわね……生き物のケハイなんてゼンゼンしないわ。あっ! 変身してもいい? 変身してたら、目も耳も鼻もすごくよくなるのよ!」
「なるほど、動物的スキルがあるのか……」
「ん~、でも、いきなり変身して大丈夫? この森は広いから、体力は持たせないといけないわよ?」
「そーそー、それに長時間変身には……むっ!? 待って、何かくる!」
ミクルが、手で全員を制止した。すると、あたりの茂みから、ガサガサと音が聞こえる。
「せ……刹鬼か!?」
ユウキも、剣を構える。
「さっきまで、生き物がいる気配すら感じなかったのに……! でも、なに、この気配!?」
アイルも、探知系スキルを駆使して、辺りを調べる。
「魔物……じゃない! 誰なんだ、この気配は!?」
ミクルが叫んだ瞬間、フッとユウキが持つランタンの火が消えた。
次の瞬間、茂みから何かが飛び出してきた!
「タチサレ……! タチサレェェェぇ!!!!」
突き立てられた『杖』の尖った先端を、ミクルは『光の剣』で防ぐ!
「これは……『ドラゴンロッド』!? まさか、キミは……!」
「オトコは……! オトコは! タチサレェェェ!!!!」
続けざまに、飛び出してきたなにかは『魔法の詠唱を始める』!
「『フレアボムズ』か……! だったら、『ミラーパネル』!」
放たれた5つの火炎の砲弾を、ミクルは光の鏡を生み出して跳ね返す!
「チッ……!」
炎が跳ね返され、飛び出してきた何者かのローブのフードをかすめる。お互いに距離を取って、着地する。
「やはり……キミか! ……『竜ヶ崎 姫子』!」
「えっ……!?」
ミクルが叫ぶ。そして……その女は、焼け焦げたフードを取って見せた!
「チッ……生きてたのね。アンタも、魔王にやられたって聞いたけど」
黒髪のおかっぱに、カチューシャ。そばかすのある頬に、鋭い切れ目。古ぼけた緑のローブと、全身タイツのような恰好をしている彼女、竜ヶ崎 姫子は、ミクルをにらみつけた。
「ま、ボクは悪運だけは強いから、ネ! ……それにしても、勇者のくせに勇者に攻撃するなんて、どういうつもりなのかな!?」
「いや、ミクル君も僕たちを拉致ったり色々してたけどね!?」
思わずツッコむユウキ。
「勇者だろうが……関係ない! 男は……許さない!」
しかし、姫子はミクルの言うことは聞いていないようだ。
「アンタが魔王と戦って生きているのはね……! アンタが、オトコだったからよ!!! いいわよね、オトコは……! 私みたいに、あんな目に遭わなくてもいいんですもの!」
「ど、どういうことだ!?」
「ミクル……! 能天気なオスのアンタに、教えてあげるわ……この森の主、『刹鬼』と呼ばれているのは、紛れもなく『私』……! 数か月前、魔王に敗北して地獄を味わった私は……! 魔王を、そしてあんたたちも滅ぼすことを決意した……!」
彼女の目は、本気だった。
「ま、待ってくれ姫子さん……! ぼ、僕たちは……同じ、魔法少女じゃないですか!?」
「どうして……戦わないといけないの!?」
すると、ピタリと姫子の動きが止まった。
「新しい魔法少女……また、『オス』がいる……!」
すると、無詠唱で無数の『光の丸ノコ』が現れ、ユウキに向かって放たれる!
「えっ!?」
「危ないユウキ!」
「ふんっ!」
アマネが『ライトニングシールド』で、アイルが氷の剣で丸ノコを防ぎ、ユウキを守る!
「魔法少女のくせに……! 『オス』『オス』『メス』『オス』……!ああ、気に食わないわね!」
「な、なにがそんなに気に食わないんだ! 姫子さん!」
「決まってるわよ!」
姫子は、40m程もある巨大な蒼い大火球の爆炎魔法を手の平に掲げた!
「お前のようなオトコという種族が、世界にいるから……! オンナはいつも、不幸になるのよ!」
かちん。ミクルの堪忍袋の緒が、切れた。
「そんなわけ……ないだろ! ヒメコ!!!」
ミクルは、光の速度で跳躍すると、姫子を殴り飛ばした!
「!」
頬を殴り飛ばされた衝撃で、爆炎魔法の詠唱が止まり、姫子は地面に吹き飛ばされる。
「オトコは、可愛くないかもしれないケド……でも! オトコなのは悪いことなんかじゃない! 一体、キミにオトコが……何をしたっていうんだ!? だいたい、キミは……」
と、ミクルが言いかけて、言葉を詰まらせた。
彼女のローブの隙間からみえた、ベルトの飾り。
ドクロの装飾が施されていて、一瞬分からなかったが……それは、間違いなく彼女の変身アイテム『プリズムベルト』だった。
しかし、その宝石の輝きは完全に失われており……鈍い赤色に濁りきっていた。
「ええ、そうよ……私はね、『オトコによって変身能力を奪われた』の……私たちが魔法少女になるために必要な……『「魔法少女」や「カワイイ」に対する大きな憧れ』……そして、『純潔』を!」
「まさか、キミは……!」
~~~~~~~~~~~~~
数か月前、魔王城。
「いやああああああ!!」
魔法少女、『ユニコーン・ヒメコ』は、4人の四天王に袋叩きに遭い、敗北した。
『その程度のレベルで我に挑むとは……期待外れじゃったのう』
「魔王……チーマ……!」
変身を解かれた姫子は、傷だらけの身体で、なおも立ち上がろうとする。
「魔王様!こいつ……女だ! 久しぶりの、女だ!」
ゴブリン王、パドラーは目の色を変えて、鼻息を荒くする。
「なっ……何をする気!?」
『そういえば、お主は最近退屈な城の警備ばかりで女に飢えていたか……そうじゃな……よし、『いいぞ』。』
「やったぁ! さすが魔王様ァ! ゲヒヒヒ……!」
次の瞬間、パドラーは圧倒的な体格差で姫子の身体を押さえつけると、ビリビリと衣服を引き裂く!
「イヤッ……! やめっ、いやあああああああ!!!」
『我も興味あったんじゃよなぁ……無敵の戦士、『魔法少女』。それを、繁殖することで戦力として増やすことは可能なのか。そしてそれが魔王軍の戦力になれば我が魔界の軍団は盤石のものとなる。実験開始と行こうか……!』
「いやあああああああ!!! ママッ、助けっ……!」
「いただきま~す♪」
つぷっ。
「痛っっっ……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」
次の瞬間、ハラワタを引き裂くような激痛と共に、彼女はすべてを失った。
地獄のような遊戯に何時間も絶え、腹に熱湯のような熱い液体を流し込まれるたび、彼女は魔法少女としての力を失い、彼女の心は闇に落ちていった。
殺してやる……!
コイツを、コイツの子も家族の血縁の一族郎党、種族全てを。
コイツのような『オトコ』という種族が存在したせいで、望まれてもいなかった私が生まれ、母は苦しんだ末に死に、そして私も同じ末路をたどった。
許せない。許せない許せない許せない。
殺す。殺してやる。この世から、オトコやオスという存在がすべて消え去るまで、殺し続けてやる。
そして、パドラーが遊び終わって、彼女を放り出した瞬間……姫子は、すくっと立ち上がると、全身を炎で燃やした。
「なんだ!?」
『まさか……あやつ自殺を……? む、いや……!』
魔王チーマが目の色を変える。
姫子の全身を包んだ炎は、だんだんと漆黒色に、そして蒼い炎へと変わっていく!
『あやつ……体内の精液を、焼いておるのか!』
しかも……蒼い炎を使える魔術師は、魔王軍にすら誰もいない。しかも、それができる魔術師というのは……
『伝説の……《呪術師》! 三千年に一度しか現れぬ、究極の呪いの使い手……!』
「ちっ……! 魔王様! コイツ殺しますか!?」
パドラーが武器を構える。
『やめておけ、パドラー……お前が消し炭にされるぞ』
すると、姫子の身体から閃光が走ると、姫子の身体はどこかにテレポートしていった。
『……あの娘、覚えておくとしよう……それにしても、あの目……』
姫子がパドラーに犯されている時、姫子は鬼のような形相で、ただただチーマを睨みつけていた。
『……ふむ。我も『いめちぇん』してみるかのう。フェゴレザード、しばし留守を頼む』
「はっ、畏まりました」
『……あの目の意味を、理解できなければ……我はあやつを超えることはできぬ……!』
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「だから……オトコは許さない……! オトコは……すべて皆殺しよ!」
姫子は、闇の魔石を手に取ると、ドクロのベルトにかざした!
「姫子さんっ!!!」
「呪い殺す! 輪廻まで断ち切って根絶やしにする!……変身!」
次の瞬間、彼女のプリズムストーンが、真っ赤に光り彼女の身体を包んだ!
闇の竜の鱗が、彼女の全身を包み、真っ赤な炎がヨロイとなって姫子を包む!
「……スレイヤー……ドラゴンナイト!」
漆黒のヨロイと鉄仮面に身を包んだ彼女は、鬼の角をはやした騎士へと変身した!
「オラアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
姫子……もといスレイヤードラゴンナイトは、2mもある戦斧を振りかざし、ミクルに切りかかる!
「マジ!? ……うわあああっ!?」
なんとか間一髪かわすが、ミクルは驚愕の事実を目にする。
「スレイヤードラゴンナイト……LV.45!? ボクたちより圧倒的に格上!?」
ステ-タス画面に表示された数字には、ミクルやユウキたちとは圧倒的に開きがあった。
「それも……魔族のLV.45と、魔法少女のLV.45は格が違う! ユウキ君……ここは一旦、撤退しましょう!」
アイルが言った。
「でも……! 姫子さんだって、苦しんでます! プリズムストーンを通して、少しだけ伝わってきました……姫子さんが、とても辛い目に遭って、苦しかったって……! 助けなきゃ!」
「あたしも……助けたい!」
「ユウキ君! アマネちゃん!」
アイルの制止を振り切って、二人は手を繋ぐ。
『『ツイン・マジカル・ウェーブ!!!!!!!!』』
大きな光の柱がユウキとアマネの身体を包み込むように現れ、その光が徐々にコスチュームへと変化する―――。
「……《二つの・奇跡の魔法少女》! 『ユウキメイド』!!!!」
ユウキは黒髪ロングストレートなフリフリのミニスカメイド服の魔法少女に変身した!
「《二つの・奇跡の魔法少女》!!! 『アマネキャット』!!!!」
アマネは、茶髪の長いツインテールの髪形になって、頭に黒猫の猫耳、お尻にしっぽ、宝石がキラキラ沢山付いた白くてキュートなミニスカのワンピース姿の魔法少女に変身した!
「「今、二つの力が、合わさるとき!」」
「あまねく悪を断ち切って!」
「勇気で世界を照らす!」
ユウキとアマネは、ばしっと決めポーズを決めると、周辺が神々しい光とともに大爆発を起こした!
「オアアアアアアア!!!!!!」
「姫子さん!!!!」
砲弾の如く放たれた強烈なパワーのパンチを、アマネが素手で受け止める!
「どけ、オンナァァ!!!! オトコが、殺せないだろォがァァァ!!!!」
「どかない! ユウキも、アイルお姉さんも、ミクル君も……大事な仲間だもん!」
「なら、お前も死ねええええええ!!!」
スレイヤードラゴンナイトは、左手の戦斧をアマネに振り下ろす!
「させるかあああああああ!!!」
ユウキは、『フレイミングファイアスラッシュ』で炎の剣を生み出し、斧を受け止める!
「オスぅぅぅぅ……!」
「姫子さん……! 正気に戻ってくれ! それなら……復讐するなら、魔王にするべきだ!」
「黙れェェェ!!! 知ったような口をきくな! 私の人生は……オトコがいたせいで、滅茶苦茶だァ!」
「オトコオトコって……あたしのパパは、とっても優しいいい人だった! ユウキも、アイルお姉さんも、ミクル君も……! 世の中、悪い男の人ばっかりじゃないよ!」
「黙りなさい……! アンタは、子供だからそんなことが言えるのよ!!!」
スレイヤードラゴンナイトの右手から、閃光が走る! 真っ赤な火炎の大爆発が、アマネとユウキを襲う!
「うわあああああああああ!!!!」
「きゃあああああああああ!!!!」
ユウキとアマネは、ダメージを受けすぎてしまい、変身が解けてしまった。
「まずい! いったん撤退するぞ!」
「オーケー!『シャインフラーーーーッシュ』!!!!」
ミクルは、手のひらから目くらましの閃光を放つと、アイルが2人を抱きかかえて飛び去った!
~~~~~~~~~~~~~~
「う、う~ん……」
「気が付いたかい? ユウキ君」
ユウキが目を覚ますと、大きな木のうろにできた洞穴の中で、寝かされていたようだった。
「も~、なかなか起きないから、死んじゃったのかと思ったわ。あたしの心配、返してくれない?」
「アマネちゃん……まあ、ありがと。……それより、姫子さんは?」
「あ~、無理無理。ちょっとやばかったからボクたちも逃げちゃったよ。……それより、お腹すいたでしょ? 鹿肉とってきたから、シチューにしよう! ボクお腹すいた~!」
ミクルは、いつもの変身に+エプロン姿で焚火を起こして料理をしていた。
4人は、シチューを食べながら、作戦会議をしていた。
「さて、どうしようか……彼女が苦しんでいるのは、確かにわかった。だが、あのまま放置していては、逆に魔王よりも危険な存在になりかねない」
「しょ~じき、ボクは倒しちゃったほうがいいとは思うんだけどね、あむっ」
「た、倒すだなんて……あの人だって、人間なんですよ? 僕には……そんなこと」
「……だったら、唯一の女の子であるあたしが説得するしかないわね! きっと話せばわかってくれるわ!」
「……話は、そんな単純なものではないと思うけど……ん?」
ふと、アイルが何かに気が付いて、洞穴の入り口を見に行った。
「……気のせいか」
「なにかあったの~?」
ミクルが聞いたが、アイルは首を振った。
「いや、なんでもない……勘違いだったよう、だ!?」
次の瞬間、プシュ~っとピンク色の霧が、アイルの背後から噴き出る!
「な、なんだ!?」
「お~っほっほっほ! まさにアタシの予想してた通り! あの小娘は呪術師としての力を覚醒させ、魔の道に進んでいたみたいね!」
声高に高笑いをしていたのは、四天王の一人、サキュバスクイーンの「レディ・ミスティ」だ。
「お前、四天王の……!」
「そうよ! レディ・ミスティ様のご登場よ! それにしても……聞いちゃった♪魔法少女って『純潔』を失えば、変身できなくなるんですって?」
ピンク色の霧を浴びたアイルは、ばたりと倒れて、そのまま変身が解けてしまった。
「アイルさん!?」
「んふっ♪ ちょうどここには『男3人』に『女1人』……マワすのにはちょうどいいわね♪ さあ、仲良く純潔を失いなさい……この『ギンギンドバドバ発情の霧』でねぇ!!!」
ピンク色の霧が、風に乗って洞穴中に広がる!そして、倒れたはずのアイルが、むくりと起き上がり……スカートの中央に、大きな傘のような膨らみができていた。
「きゃあああ~!?!? ユウキ! あれっておち〇〇んよね!? 間違いなくお〇ん〇んよね!?」
顔を真っ赤にして手で顔を隠す(指は開いてガン見する)アマネ。
「女の子がお〇〇ちんって言うな!?」
「そんなこと言ってる場合じゃないってぇ!? 二人とも、急いで口と鼻を布で覆って! あれを吸ったら多分アイルみたいに……! やばい! こっちにくる!」
ピンク色の発情ガスが、ユウキたちに迫ってくる!
「風魔法は、ボク苦手なんだけど~……!」
ミクル▼ SP:12→を34使用して、『ウインド→ウインデ』を取得しました!
「ウインデ!!!!」
ミクルは、風魔法で突風を生み出すと、洞穴の出口まで空気のトンネルを作り出した!
「ミクル君!」
「いいから行くんだ二人とも! ボクはアイルセンパイを助けてから行く! こ、ここはボクに任せて、早くいくんだァァァ!!!」
「それって死亡フラグ!?」
「アマネちゃん、ミクル君を信じるしかない! 行こう!」
「う、うん……!」
ユウキは、アマネの手を取って出口に向かって走り出す。
「あ~ら……健気ねえ。アイルちゃん、メスが逃げたわよ」
レディ・ミスティが言うと、アイルはゾンビのようにゆっくりユウキたちを追おうとする。
「行かせないよ!」
ミクルが、アイルの前に立ちふさがる。
「フッ、かかったわね……アイルちゃん、捕まえなさい」
「む、むぐっ!?」
アイルは、ミクルを羽交い絞めにすると、さらにあごも掴んで首の動きを固定する。
「この……放せっ……!」
「このガスを吸うと、異性にギンギンに発情するついでにアタシの虜になってなんでも言うことを聞いちゃう優れものなのよ……? この魔王軍一の美貌を持ちながら、知性も併せ持った天才発明家、レディ・ミスティ様のスペシャルアイテムに、酔いしれなさい……!」
「だ……誰がそんなものに屈するもんかぁ……!」
必死で睨みつけるミクルに、レディ・ミスティは彼女の口を掴んで塞ぎ、鼻元に発情ガスを発生させてるオーブを近づけた。
「んふふっ……強情な子は、嫌いじゃないわ……♪ はい、息を吸って~、吐いて~、吸ってぇ~」
「ふごふごっ……! (誰が……息なんか、吸うもんか……!)」
しかし、口をふさがれて、呼吸を止めようとしても、どうしても鼻呼吸をしてしまう。
「うう……! ううう……!」
「ウフフッ……快楽に身をゆだねなさい。そうすれば……ラクになれるんだから……♪」
ミクルは、じたばたと必死の抵抗をするが……やがて、力なく、ガクガクと体を震わせ、だらりと腕が脱力していった―――。
~『後編』へ続く~
ここまでご覧いただきありがとうございました!いよいよ次の後編が第五話の最後です!最後のクライマックスまでぜひお楽しみください!