第三話「守れ!キャラバン!名乗れ!名前!」~後編~
前回の話と続き物になっているので、前回の話をご視聴の上ご覧ください。
また、今回の第三話は「前後編」構成になっています。こちらは後編です。
~あらすじ~
謎の魔法少女の正体は、佐久良さくら 藍留あいると名乗る男子大学生であったことを知ったユウキとアマネは、3人で協力して魔王を倒すことを決意する。
3人は、散り散りになった勇者たちを仲間にするため。アイドラウムの街に向かうラブゼバブの街のキャラバン隊の商人たちの護衛をすることになったのだが―――。
「アイルさん……無事でいてくれよ!」
ユウキは、アイルのもとへ走る。魔物が現れたためか、先ほどまで気持ちよく晴れていた青空が、徐々に禍々しい赤い雲に覆われ辺りはどんより曇って夜のように暗くなっていた。
「……ユウキ! あれ!」
ユウキとアマネが先頭の荷馬車の前に行くと、荷馬車の前に立ちふさがるアイルと。それを取り囲む魔物たちの群れが見えた。
「やあやあ、ご機嫌いかがかね? 魔法少女の諸君」
四天王の一人とその配下たちが、街道の真ん中、荷馬車の進路を塞ぐように立ちふさがっていた。
「お前は……!」
「ユウキ様。貴方のお姿を拝見したのはこれで二度目、でございますね」
ユウキが問いかけると、四天王の魔物が答えた。
「私は魔王軍、四天王の一人にて、『ジャック・オブ・バトラー』を務めさせてもらっている者。名は、『フェゴレザード』といいまして、私が率いるは『魔王軍:悪魔部隊』にございます。以後お見知りおきを」
フェゴレザードは、山羊のような角を生やし、山羊の顔をした見た目の悪魔であった。肌は血のように真っ赤な毛で覆われており、背中に蝙蝠や悪魔のような大きな翼があり、全身が筋骨隆々の強そうな体格で、太い腕と大きな胸筋によって身にまとった執事のような漆黒のスーツが、ぱんぱんにはち切れそうになっていた。
「ま、魔王軍にしちゃ随分と、礼儀正しいやつだな……!」
「騙されないで、ユウキ君。コイツも、魔王軍として多くの人間を殺している」
アイルがユウキを手で制止する。
「……フェゴレザード、アンタの相手はこれで3度目よ。前回より数が増えたみたいだけど、この程度の数ではアタシ一人でも十分」
「おっと、とんでもない。そりゃあこの程度で貴方に勝てるとは思ってもいませんとも、アイル・フルール。今回の目的は……そこの二人でございまして」
フェゴレザードは、ユウキとアマネに手のひらを向けた。
「ぼ、僕と?」
「あたし?」
「……どういうつもり?」
「いえいえ。前回の、『チュートリアルの復習』……でございますよ。魔王様が『潰そうと思えばいつでもこの世界の人類など消し飛ばせるが、簡単に魔法少女に負けてもらっては困る』……との仰せでして。レベルアップの機会を、魔王様よりお送りいたしますよ」
フェゴレザードは、手に邪悪な闇のオーラをまとわせると、凶悪なツメでアイル・フルールに斬りかかる!
「ぐっ……!?」
「貴方様の足止めは、僭越ながらこの私が務めさせていただきます。無能な市民を護りながら、ユウキ様とアマネ様、お二人でこの悪魔の群れを見事撃退してくださいませ!」
次の瞬間、フェゴレザードの配下の悪魔の群れが、一斉に荷馬車の商人たちに向かってとびかかる!
「ユウキ君! アマネちゃん! ……すまないけど、急いで皆を護ってちょうだい!」
アイルの叫び声に、ユウキとアマネはうなづいた。
「……アマネちゃん、皆を護らなきゃ!」
「ユウキ、やるわよ!」
二人は、胸のプリズムペンダントを握りしめ、手をつないだ!
『『ツイン・マジカル・ウェーブ!!!!!!!!』』
大きな光の柱がユウキとアマネの身体を包み込むように現れる。
その光の柱の中を流れるように、二人は手を繋ぎながら遊泳し、身体に包まれた光が徐々にコスチュームへと変化する―――。
やがて光の柱が収束し、2人は光り輝く球体となって地面に舞い降りた。
「……《二つの奇跡の魔法少女》! 『ユウキメイド』!!!!」
ユウキは、清らかな小川が流れるが如くサラサラで綺麗な腰まで伸びた黒髪のストレートヘア、黒ベースに水色の意匠のほどこされたキュートなフリフリのミニスカメイド服の魔法少女に変身した!
「《二つの奇跡の魔法少女』!!! 『アマネキャット』!!!!」
アマネは、茶髪の長いツインテールの髪形になって、頭に黒猫の猫耳、お尻にしっぽ、宝石がキラキラ沢山付いた白くてキュートなミニスカのワンピース姿の魔法少女に変身した!
「「今、二つの力が、合わさるとき!」」
「あまねく悪を断ち切って!」
「勇気で世界を照らす!」
ユウキとアマネは、ばしっと決めポーズを決めると、周辺が神々しい光とともに大爆発を起こした!
「ほう……美しい! これが、まだ邪悪に染まり切らない純真で無垢な少年少女たちの芸術か!」
「よそ見をしている……場合かしら!」
感嘆するフェゴレザードに、アイルは膝蹴りを叩きこもうとする。
「フッ……だから貴方はダメなのです!!!!」
フェゴレザードは、背中の悪魔の翼をバサッと開き、突風を起こしてアイルを吹き飛ばす!
「ぐっ……」
「はぁ……私ガッカリです。貴方もせめて曲がりなりにも『魔法少女』を名乗るのでしたら、様式美くらいは守っていただきませんと」
やれやれといった様子で、フェゴレザードは手のひらを上に向ける。
「な……なんのことよっ!?」
「おとぼけにならないでくださいッッッ……! アイル・フルール……! 魔法少女が最も美しく輝く瞬間! すなわち『名乗り』のシーンほど、重要なものはないでしょうがッッッ……!」
「……オマエは何を言っているんだ?」
「ええ、なんなら私待ちますよ。待ちますとも。一応あの光の渦って飛び込んだら我々も死にますしね。さあアイル・フルール。貴方も一旦変身を解いてもう一回変身シーンと名乗りをやり直してください。魔王様もこの小説の読者の皆さんも、貴方の名乗るシーンを渇望なさっておいでですよ」
「ほんとに何を言っているんだお前は????」
すると、フェゴレザードに呼応するかのように、配下の悪魔たちもユウキたちを襲うのをやめて、一歩下がり、じっとアイル・フルールをみつめる。
「ど、どうなってるにゃん……?」
「た、たぶんアイルお姉さんがもう一回変身をしないと、こいつら攻撃する気がないみたいだぞ……?でも、戦いが始まらないと、キャラバンの皆を送り届けることもできないし……」
「く、空気を読めって言いたいワケぇ!? アッ、アタシに変身前の姿を晒せと!? 生き恥よ生き恥!?」
顔を真っ赤にして叫ぶアイル。
「安心なさってくださいレディ。貴女が最初から『男である』ということはもう魔王軍の会議で魔王軍は子供のグミジェリーまで全員が知ってる事項でありますゆえ」
「まっ……? え?」
「そうだよお姉ちゃん! それに、僕も魔法少女だけど男だしさ、気にしないほうがいいと思うよ!」
「お黙りなさいこのショタガキが! 二次性徴が始まってすらいないアンタとアタシじゃ、全ッッ然ちがうでしょうが!?」
もはやテンパりすぎてクールなお姉さんキャラすら保てなくなってるぞ、アイルお姉ちゃん。
「おい、兄ちゃん! これ、いつまで続くの?」
「いいからはよやれ!」
「変身しろ!」
キャラバン隊のおっさんたちまで騒ぎ始めた。
「……ああんもう! やりゃいいんでしょやれば!」
アイルは、一旦変身を解くと、男の姿に戻る。
「……『アイン・マジカル・シャワー!!!!』」
アイルは、『プリズムブローチ』を両手に持って胸に抱きしめた後、天高く掲げる!
『プリズムブローチ』の中央のプリズムクリスタルから、ピンク色の光のシャワーが溢れアイルを包み込む!
光のシャワーが、アイルを包み込むと、段々と男性的な肉体が美しい曲線を描く女性の身体に変化していく。そして、その体にピンク色と薄紫色をベースカラーにした、セーラー服のようなコスチュームが現れフィットするように体に装着されていく。そして、元々腰まで伸びる長い黒髪は、ピンク色のツインテールに変化していく。
「……咲き誇るは、乙女の花! 『魔法少女』、『アイル・フルール』!!!」
アイルが名乗りを上げると、桃色の花びらと藤色の花びらが、突風と共に吹き荒れた!
「命の花を踏み散らす、不届きものは……成敗いたします!」
アイルは、キリッと鋭い瞳でまっすぐにフェゴレザードを睨みつけ、身体を輝かせた。
「ヒュ~~~~!!!! コレでございますコレぇ~!!!! 最っ高にキマっていらっしゃるゥ~! あとで悪魔的SNSに乗せてもよろしゅうございますか?」
フェゴレザードは、魔術式のカメラを起動してアイルを撮影している。
「いいワケないでしょうが!? って、そもそも悪魔ってSNSあったの?」
「お姉ちゃんも知らないんだ……」
「あたしも知らなかった……」
「……コホン。失礼。ではこれで……双方思い残すことなく殺しあうことができるというもの」
フェゴレザードは、パチンと指を鳴らすと、配下の悪魔たちが飛びあがった!
「レベル上げとは申しましたが……『この程度のレベル上げで死んでしまうようなら殺しても構わぬ』と魔王様はおっしゃられていますので……!どうぞご逝去あそばされてもよろしいのですよ? 魔法少女の皆さん!」
ニヤリと、フェゴレザードは嗤う。
「ユウキ君!」
「そうはいくか! こちとら異世界転生したばっかりで……まだ何も始まってすらいないんだ!」
「そうにゃん! あたしたちの戦いは……まだ始まったばかりだにゃん!!!!」
アマネ▼ SP:50を使用して『煉獄火炎の爪』を取得しました!
アマネ▼ SP:4×100を使用して『攻撃力+500』を開放しました!
「ヘルファイア……クロ―ぉぉぉぉぉ!!!! にゃんっ!!!!」
アマネは、『中級悪魔』の群れを3体同時に切り裂いた!
「……って、それじゃあ最終回になっちゃうだろ!?」
「はっはっは、物語とは……読むのは易いが、作ることこそ険しい! それこそ、序盤で敵幹部が、勇者を全滅させたら物語が終わってしまいますからねぇ!」
フェゴレザードは、『悪魔の爪』でユウキに襲い掛かる!
「そうはさせるか!」
ユウキ▼ SP:33を使用して、『シャイニングソード』を取得しました!
ユウキは光の剣を生み出すと、悪魔の爪を剣で受け止める!
「さあ……楽しませてください! 貴方のピンチが、私をひどく興奮させる!!!」
「ピンチになるのは……僕じゃなくて、お前のほうだ!!!!」
ユウキ▼SP:8→30を使用し『フレアボムズ→バーニングボムズ』を習得しました!
「『バーニング……ボムズぅぅぅぅ!!!!」
ユウキは1mほどの火炎の砲弾を、フェゴレザードに向かって放つ!
「おっとぉ! 流石の火力でございますねぇ! 中級魔法がまるで最上位クラスの火力でございますか!」
「隙ありィィィィ!!!!」
アイル▼SP:120を使用し『ブルーローズタイフーンドリルキック』を習得しました!
「花のように……散れぇぇぇぇ!!!」
「いやはや失礼! 後ろのレディに気づかないとは……不躾な真似を!」
フェゴレザードは、味方の上級悪魔をがしっと掴むと、アイルの『ブルーローズタイフーンドリルキック』が命中する瞬間、身代わりにしてアイルのキックの盾にした!
「味方を盾にするなんて……なんてやつだ!」
「あくまー!」
「はっはっは、イヤ最初から悪魔ですがなにか??? さあ、ラストスパートです! 一斉にかかりなさい!」
残った悪魔たちが、一斉にユウキたちにとびかかってくる!
「ユウキ君、瞬間識別できる?」
「まかせてお姉ちゃん!」
確か、ステータスは一応複数確認できるけど……脳の識別が追い付かないから、スキルで補助をかける!
ユウキ▼ SP:18を使用して、スキル『瞬間複数識別』を取得しました!
「『悪魔』が12体、『中級悪魔』が8体、『上級悪魔』が15体です!」
「なら、あたしの新しいスキルを、見せてあげるわ!」
アマネ▼SP:7→68を使用し『アイス→ジアイス→オブジアイス』を習得しました!
アマネ▼SP:8→70を使用し『スパーク→スパークル→バチスパークルズ』を習得しました!
「氷とカミナリの~……化学反応、にゃん!!!」
アマネ▼ 合わせ技スキル『スパークルジアイス・ストーム』を会得しました!
目にも止まらない電撃の槍が、悪魔と中級悪魔を貫く!!!
すると、貫いたそばからパキパキ……と悪魔たちの身体が凍り付き始め、そして凍結すると同時に雷に打たれたかのように爆散する!
「ほう……12体を一瞬で!」
おもわずフェゴレザードも感嘆の声を上げる。
「どうよっ! あたしの活躍は!?」
「合わせ技……そういうのもあるのか! だったら!」
ユウキは、『シャイニングソード』に『バーニングボムズ』の魔力を上乗せする!
「もっと、僕の力を上乗せする!」
ユウキ▼SP:65を使用し『フレイミングバーニングボムズ』を習得しました!
さらに『バーニングボムズ』から強化された『フレイミングバーニングボムズ』の能力を上乗せする!
ユウキ▼ 合わせ技スキル『フレイミングファイアスラッシュ』を会得しました!
「これならっ……いける!」
ユウキが跳躍すると、上級悪魔の群れが一斉にユウキに襲い掛かる!
「『フレイミングファイアスラーーーッッッシュ!!!!!』」
強烈な火炎を纏った斬撃が、5体の上級妖魔を一撃で一刀両断する!
「もいっちょ!」
さらにユウキは体をひねって跳躍し、上級妖魔の群れの真上に飛びあがる。
「だぁぁぁぁぁ!!!!!!」
剣を大地に突き刺すと、強烈な火炎が地割れを起こし、そこからさらに火炎が噴き出して上級妖魔8体を火だるまにした!
「ひょええぇ……ちょっと先ほどのは私も喰らうかと思ってヒヤヒヤしましたよ~w 貴方、本当に『レベル13』でそれですか??」
思わずフェゴレザードも冷や汗をかく。
「だったら、『レベル34』のアタシの攻撃で、アンタを倒す!!!」
アイル▼SP:180を使用し『スノードーム・リリィ・アイランド』を習得しました!
「『スノードーム……リリィ・アイランドぉぉぉぉぉ!!!!』」
アイルは、フェゴレザードごと、残った悪魔たちを全員まとめて巨大な氷のドームに閉じ込めた!
「うわっ、魔法少女とか言いながらマジで殺す気満々の技使わないでくださいよ……そういうとこが正直ドン引きでございます」
フェゴレザードは、魔界のゲートを開くと、自分だけさっさと外に抜け出してゲートを閉じてしまった。
『おっ、お待ちくださいフェゴレザード様……ウッ、ウワアアアア!!!!』
ドーム内に取り残された悪魔たちは、突然バタバタと倒れていった。
「やれやれ……氷のドームで敵を密閉した後で、ユリの毒をドームに満たして殺す『スノードーム・リリィ・アイランド』……こんな技を積極的に使う魔法少女、貴方くらいなものですよ? アイル・フルール様」
抜け出したフェゴレザードは、上空に現れると、アイルに言った。
「何を言ってるのかしら? 焼き殺したり切り殺したりするより、よっぽど人道的だと思うけど?」
「なあ、アマネちゃん……僕たち、遠回しにディスられなかった今?」
「ディスられた気がする~。でもモンスター相手にあんまりかわいそうとか言ってたら、倒せないよ?」
「アマネちゃんもアマネちゃんで残酷ぅ!?」
「……なるほど、理解しました。いくら美しさを持ち合わせているとはいえ、所詮魔法少女も殺戮するだけの兵器に過ぎない。善も悪も等しく同じように、己の主義主張のために異端者を殺戮する……まさにこれは歴史の輪舞! 人も魔も、誰であろうとその罪からは逃れることはできない……!」
フェゴレザードは、バサッと翼を広げた。
「まさか、逃げる気!?」
「いえいえ、配下の悪魔たちが全て倒れた……つまり、そもそもの目的『レベル上げ』は達成いたしました。無事役目を終えた私めはこれにて失礼します。次こそは本気の勝負ができますことを……楽しみにしています。では、ご機嫌よう」
フェゴレザードは、魔界のゲートを開き、姿を消した。
それと同時に、赤い雲が晴れ、綺麗な青空が広がって辺りはパッと明るくなった。
▼ ユウキはLV:20にレベルアップしました! ステイタスが上昇しました! SPを獲得しました!
▼ アマネはLV:21にレベルアップしました! ステイタスが上昇しました! SPを獲得しました!
▼ アイルはLV:35にレベルアップしました! ステイタスが上昇しました! SPを獲得しました!
「やった~! レベルアップしたにゃん♪」
アマネはぴょんぴょん飛んで喜ぶ。
「お~、また結構上がった……! けど、やっぱりアマネちゃんのほうが高い……」
(アタシ、なんでこんな最近伸び率悪いのかしら……? やはり、JCのようなフレッシュさが足りない、ってこと……?)
「……ふう、どうやら終わったみてえだな」
と、アイルが悶々と悩んでいると、商人たちのリーダーは、ほっと一息ついて言った。
「すいません、時間がかかってしまいました」
アイルは頭を下げると、変身を解いた。
ユウキとアマネも、変身を解く。
「いや、むしろあれだけの悪魔たちの群れをよく追い払ってくれた。俺たちだけじゃ間違いなく全滅していたことだろう。ここまでくればアイドラウムの国まであと少しだ。あれだけの大部隊をやられたんじゃ魔物どももすぐには来ないだろう。少ないが、干し肉と『マジックベリーのジュース』を用意してある。街に着くまでは休んでいるといい」
「えっ、ジュース!? やったーーー!!!」
「うひゃあ、嬉しい……! ありがとうございます! 皆さん!」
「ありがたい……『マジックベリーのジュース』は、かなり効率よくMPを回復させるのに役立つわ。君たちも、しっかり飲んで体を休めて……ね」
アイルは、ジュースを商人たちから受け取ると、瓶ごとラッパ飲みでぐびぐび飲み干し、そのままフラフラと荷馬車の寝台に倒れ込むように入ってしまった。
「アイルお姉ちゃん……疲れてたのかな」
「今日は一日中ずっと気をはってたもんね~……ふわぁ、あたしもちょっとネムくなったかも~」
ふわぁと、アマネは大きな口を開けてあくびをする。
「そうだな、僕も……」
「あっ、でもユウキと一緒にねるのは……ちょっとヤだな……?」
「なんでだよ?」
「ほら……女の子と男の子って、一緒にねると……赤ちゃんできちゃうんでしょ……?」
「なわけないだろ……てか、寝台はアイルお姉ちゃんが寝てるから、結局男と寝るしかないじゃん……」
「え~、じゃあやだ~……一人でねる~」
「空いてるの、おじさんたちしかいない寝台か、肥しを入れる荷馬車しか残ってないぞ?」
「う~……どっちも、やだぁ~……」
そういうアマネも、完全に、うとうとしていて、今にも倒れそうなほど足元がフラフラしている。
「……仕方ないだろ。じゃあ……アマネちゃんのことは、僕が守るよ。僕も絶対に変なことしないし。絶対守るから……アイルさんところ行こう」
「う~……」
もう、半分聞こえてるかどうか怪しいが、寝ぼけているアマネをなんとか肩を担いで寝台に連れていく。横で大いびきをかいて寝ているアイルさんに近付けないように、アマネを毛布にくるんで寝かせる。
「……アマネ、ちゃ……」
なんとかアマネを寝かしつけたユウキだったが、ユウキも眠気の限界で、アマネを寝かしつけたあと、そのままアマネに倒れ掛かるようにユウキも眠ってしまった。
「すぅ……すぅ……」
「……んん、ばか、ね……」
アマネは、寝言を言いながら、寝返りを打とうとしてユウキの頭の上に左手を載せる。
「ユウキは、あたしが、護る……」
アマネはねぼけてユウキの頭を優しくぺしぺし叩きながら、寝言でそう言うのであった。
~~~~~~~~~~
こうして、3人の魔法少女たちが眠っている間に、キャラバン隊の荷馬車たちは、アイドラウム国の城下町の城門の前へとたどり着いた。
「やあ、いつもご苦労さん。例のごとくラブゼバブの補給隊だ。通してほしい」
商人たちのリーダーは、門番に話しかけた。
しかし、
「……『みくるちゃんに貢ぎたい税』を払ってもらおうか」
門番の男の言葉に、商人たちのリーダーは目を丸くした。
「なっ……税金だって……!? そっ、そんなの聞いてねえぞ!? 第一、もうラブゼバブの財政力でまともに生活費以外で払える金なんて……」
「払えないのか……なら、代わりのモノを差し出すことだな」
「か、代わりのモノ、だとう……!?」
「そうだな……例えば、『高純度のプリズムクリスタル』、などを、持っているのではないか?」
「なっ……! そりゃ、嬢ちゃんたちの……ッ!」
商人たちのリーダーの表情を見ると、門番は衛兵に指示を出し、衛兵たちが次々に荷台を漁り始める。
「ま、まちやがれ……! あの嬢ちゃん達には……!」
「この商人どもの一党を全員地下牢にぶちこんでおけ! なんとしても『魔法少女』を探し出し……その装備品をあの方に献上するのだ!」
~~~~~~~~~
「……クックっク、や~っと見つかりそうだネ♡ ボクの愛しい『J』タチ……♡」
どこかの城の、どこかの部屋。
薄暗い部屋で、豪華な装飾が施された、ふかふかの椅子に座る少女。高級そうなシャンパンを、ワイングラスでぐびぐび飲み干すと、惜しげもなくワイングラスを投げ捨て、床にガラスの破片が舞う。
「この世界は全て、ボクのもの……そのために、ボクは手に入れるのさ……理想の、アイドル生活を、ネ……♪」
~続く~
こんばんは。ラスティと申します。
ここまでご覧くださり誠にありがとうございます。元々前後編に分かれていなかったのですが、文字数を鑑みて前後編に再編集しました。ご了承ください。
次回は、2人目(仲間としては4人目)の魔法少女が登場します!お楽しみに!
感想、評価、読了ツイートなど頂けるととても励みになります!よろしくお願いします!
最後になりますが今回の三話をお読みいただきありがとうございました!




