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第十話「王子の純愛と、はじまりの勇者」そのじゅう

「僕たちが……!」


「あの炎を、止めて見せる!!!」


『行くぞ……! フリーーダーーーム!!!! ガーーーンボイーーーーーー!!!!』


 5人の叫びに呼応し、自由の鎧ガンボイ、聖盾シブト、全知の兜メタ、聖剣ブレイブが巨大化して合体する!

 合体した5つの神器は、巨大ロボット『フリーダムガンボイ』に変形した!


「いくわよ!」

 アイル、ミクル、ヒメコが同時に足のペダルを踏みこむと、ガンボイは背中と足のバーニアから光を噴射して、期待を一気に加速させた!


「間に合え! うおおおおおお!!!!」

 戒めの大魔女イヴが放った、世界終焉の炎『ビッグバン・エクスプロメテウス』は今にも大地に向かって落ちようとしていた!

「おいつかせるわよ!」

「まっかせてよ!!!」

 アイルとミクルが、ガンボイの足のジェット噴射を捜査して、終焉の炎の真下にガンボイをつかせる!


「おねがい、シブト!」

 アマネが左腕を操作し、『聖盾シブト』を構える!

『まかせるべ!」

「いっけえええええ!!!!!」

 ガンボイは、両手で『聖盾シブト』を構えると、盾を突き出して下から終焉の炎に向かってジェット噴射で突撃した!!!!


「うおおおおおお!!!!」

 強烈な灼熱が、ガンボイの機体全体に広がっていく。ビー!ビー!と、機体からは何度も荒々しいアラート音が響いていた。


『警告! 警告! 警告! Bパーツ、Cパーツ、ならびに機体全体の温度、急激に上昇! これ以上温度が上昇すれば、機体が溶解する!』


「わかってるわよ! 冷却システム、全開!」

「了解! 私の氷魔法を使って!」

「あたしもいっくニャン!!!」

『『オブジアイス!!!』』

 ヒメコの指示で、アイルとヒメコが氷呪文を唱える! 機体全体が冷却され、シールドの表面から灼熱の炎と氷がぶつかって、激しく水蒸気があがる!


「無駄なことを……!」

 終焉の炎とガンボイが激しくぶつかり合うところを、上空からイヴが魔王チーマと闘いながら見ていた。


「ぜぇ、はぁ……! 流石、神々の神器じゃな……! あれだけの熱で溶解せずに持ちこたえるとは……!」

「時間の問題だわ。あの炎を止められなければ、いくら()()()()といえど持ちこたえられるはずがない!」

 チーマが振りかざした骨の大剣を、チーマは箒ではじき返すとチーマの腹に強烈な蹴りを叩き込む。


「がはぁ……! それは……どうかのう!」

 チーマは、骨の大剣を割って二振りの長剣にすると、イヴを挟み込むように剣を振りかざした!


「バカね! その程度で……この私の魔法をどうにかできると思っているの⁉」

 イヴは、素早く箒の上に立つと、両手の指先から小さなバリアーを浮かべてチーマの剣を受け止める。




「うおおおおお!!!!」

 ガンボイは、背中のバーニアを噴射して、終焉の炎を押し返そうと機体を押し出そうとする!


「はぁ、ハァ……!」

「あ、っつい……!」

 右腕のBパーツと左腕のCパーツの操縦席に座っているユウキとアマネは、あまりの機体内の熱さにダラダラと滝のような汗を流す。コックピット内の気温は、強力な氷魔法で冷却しているのに、なおも1000℃を超える温度に達していた。当然、魔法少女に変身していなければ肉体がとうに燃え尽きていてもおかしくない温度だった。


「こんなの……! 早くしないと持たないわよっ! 早く決めなさい!」

 ヒメコが叫ぶ。


「はぁ……! 頼む! シブト!」

「お願い!」

『了解したべ! いっくべ~!』

 ガンボイが両腕でシールドを構えると、聖盾シブトはX字の砲門を展開した!


『『グランド・ホーリーショットX(エックス)~!!!!』』

 ユウキとアマネが操縦桿の引き金を引くと、強烈なX字のビーム砲が終焉の炎の内部を貫いた!

 ……だが、


「ダメよ! まだ……威力が足りない!」

 アマネが叫ぶ。ビーム砲で貫かれた終焉の炎は、まだ崩壊する様子はなく、なおも巨大化を続けていた。ビーム砲で空いた小さな穴も、すぐにふさがってしまった。


「あきらめるな! 連射を続けるんだ!」

「にゃにゃにゃにゃ~~~!!!!『グランド・ホーリーショットX(エックス)~!』X(エックス)~!X(エックス)~!!!」

 ユウキとアマネは、何度も引き金を引いてビーム砲を連続で撃ち続ける! シブトから何度も何度もビーム砲が放たれ、終焉の炎に小さな穴が何度も空く。


「……ダメよ! まるで魔力が変わらないわ!」

 ヒメコが叫ぶ。終焉の炎は、勢いを落とすことなく、さらに大きくなってガンボイを押し潰そうと機体を押し返してきた!


「ぐうううう!!!!」

「うううううう……!!!」

 ミクルとアイルが、操縦桿とペダルを必死で力強く全開にする!

 脚のバーニアからジェット噴射が噴き出し、必死で機体の高度を保とうとするが、徐々にガンボイの機体は地面に向かって押し出されようとしていた。





「ああ、あああ……!」

 地上のアルフルートの街から、領主ホミナとその母が、地下トンネルに避難しようとする人たちと共にその様子を見ていた。

「そんな……」

「もうダメかもしれん……あの炎が、大地に降り注げば……この世界は終わりじゃあ……!」

 徐々に押し返されていく魔法少女たちが駆るロボットと、そのロボットの数百倍はあろうかという巨大な空を覆いつくすような終焉の炎が、地面に落ちようとする様子を、民衆たちは不安そうな目で見ていた。


「ま……まだだべ!!!」

 するとホミナは、木箱の上に乗って民衆たちに向かって大声で叫んだ。


「ほ、ホミナ!」

「ホミナ様!」

 民衆たちは、不安そうな目でホミナを見る。


「あきらめるのは……まだ早いべ! 勇者様が……勇者さまが! 戦ってくれているべ!」

 ホミナは、必死で民衆たちに向かって訴えかけた。


「でもよぉ……! いくら勇者様といえど、あんなもんを相手に、勝てるのかよぉ……!」

 ひげ面の老人が、涙を目に浮かべながらホミナを見上げた。


「勝てるべ!!! 勇者様は……絶対に世界を救ってくださるべ!」

 するとホミナは、終焉の炎に向かうガンボイのほうを向いて、膝をついて両手を握り締め、目を閉じて祈り始めた。


「おねげぇだ、神様……! どうか、どうか勇者様に、お力をお授けください……!」

「ホミナ様……!」

 一心に祈りをささげるホミナを見て、民衆たちも膝をついて、目を閉じて祈り始めた。


「神様……!」

「神様……!」

 人々は、祈りをささげる。その様子を、イヴは横目で見ていた。


「……くっだらないわ!!! なにが神よ……! 貴方たちは、神々が楽しむための物語の背景画に過ぎないのよ! 駒ですらないわ! 主役を彩る脇役にもなれないのに……何が神よ!」

「脇役ですらない……か。 それは違うぞ!」

 チーマは、何度も大剣でイヴに斬りかかる!


「あやつらは……確かに()()()()()()! 現にあやつらは、あの魔法少女(ユウキ)たちに大きな影響を与え……あやつらに戦う目的を生み出した!」

「だからなんだと言うの! 所詮は貴方と同じ……物語を彩るための操り人形に過ぎないじゃないの!」

 イヴは、魔法の箒を死神の鎌に変化させると、チーマに斬りかかった!


「そんな操り人形が、神を自分を救ってくれる都合のいいものだとか! 飼われていることもわからない、哀れな家畜みたいだわ!」

 死神の鎌は、何度もチーマの肌を切り裂いていく。チーマは、攻撃を避けながら、イヴに吐き捨てる。

「救われないのう、お前は!」

「黙りなさい!」

 イヴは、チーマの首を鎌で斬り落とした!


「救いなんて、ないのよ! 物語の上に書かれた貴方たちは! だから神々が敷いた圧制から、私が救ってあげるの! この『ビッグバン・エクスプロメテウス』の炎で!」

「……おまえは忘れたか!」

 首を切り落とされたチーマは、首がなくなった自分の身体を動かして、自分の首を掴みに悪魔の翼で飛翔する。


「人々を苦しめる、悪から世界を救う……! おまえは! 魔法少女だったじゃろう!」

「アタシは……世界なんて救いたくなかった!!! アタシは……お母さまや! ワーロックさえ生きて、幸せなまま一緒にいられたなら……それでよかったのに!」

 イヴは、ぽろぽろと涙をこぼしていた。


「貴方さえいなければ……! 魔王(アナタ)を望む『神』さえいなければ!!! お母さまもワーロックも、犠牲になることなんてなかったのよ!!! この世界に住む人々も、みんなみんないなければ!!!!」

 イヴの目が真っ赤に光ると、チーマの身体と頭が轟々と真っ黒な炎で燃え上がる!!!!




「はぁ……はぁ……!」

 ガンボイは徐々に押し返され、もう間もなくガンボイと終焉の炎が地面に衝突するまで、あと高度100mもなかった。


「この炎は……イヴさんの憎しみの気持ち……!」

「イヴさんの想いが……炎を通じて伝わってくる……!」

 炎を押し返しながら、アマネとユウキが言った。


「ひどい……こんなにも、こんなにも世界の人に強い憎しみを抱えていたなんて……」

「かなしい……かなしいよ、そんなの」

 アイルとミクルが、額にしわをよせ、悲しそうにぽつりと呟いた。


「でも……だからって! 私も、この世界の人たちも!」

 ヒメコが叫ぶ。

「消えていいわけがない……! 僕たちは! この世界の皆を……!」

「あたしたちが……護りたいの!!!」

 魔法少女たちが全員で、気持ちを一つにする。ガンボイの全てのスラスターが全開に開き、光の波動を噴射する!




「うおおおおおおお!!!!!」

 決して押しとどまることはない巨大な終焉の炎。しかし、魔法少女たちはあきらめず、巨大ロボットガンボイは、ジェット噴射の光を放ち続けていた。



「いい加減……諦めてよ! こんなくだらない世界のために……貴方たちは!!!」

 イヴは叫ぶ。

「ふっふっふ……ハハハハハ!!!! それでこそ勇者じゃ!!!」

 全身が黒焦げになったチーマは、自分の首を掴んでイヴに向かって投げつけた!


「!」

「諦めが悪い! 何度踏みにじり、何度痛めつけて絶望を植え付けても、それでも何度でも立ち向かってくる!!! それでこそ魔法少女、それでこそ勇者よ!!!」

「気色悪いのよ、チーマ!!!!」

 イヴは、チーマの首を蹴り飛ばして、息を切らせて叫んだ。


「もうやめて!!! たくさんだわ!!! 貴方たちが……『神々の戯れ(あそび)』をやめないから!!!! 私みたいな人間が、何度も何度も殺されて!!!」

 イヴは、激しく息を吸って過呼吸になって痙攣する。


「もう……意味なんてないのに! ヒッ、ヒィ……! 意味なんてないのに!!!」

「……意味なんてないのは、ワシじゃってわかっておる」

 ボロボロになったチーマの身体が、徐々に再生していく。


「それでも……人々は求める」

 チーマの目は、まっすぐにイヴを見つめていた。

「何をよ!」

「忌々しい悪夢が終わって、幸福になる夢を……! 人々を打ち砕く困難を、希望を携えた大いなる存在が乗り越えていく、物語をじゃ……!」

 イヴは、地上で神に祈りをささげる民衆たちを見た。





「が、がんばれ……!」

 最初に小さな声でぽつりとつぶやいたのは、ただの気弱な村人の男だった。


「がんばれ、勇者さま……!」

「がんばって! 魔法少女!」

「がんばれ……!」「負けないで……!」

「勝て! 勝つんだ魔法少女!」「諦めるな! 絶対に!」

 その男の声を聴いた村の人が、街の人が、そして世界中の名もなき村人たちが、声を上げ始める。

 大人が、子供が、老人が、老若男女すべての人たちが、拳を掲げて魔法少女たちにむかって声をあげる。

「がんばれ……! がんばれ~~~!!!!」



「応援だなんて……無駄だわ! そんな何の力にもならない声で、なにができるというの!」

 イヴは叫んだ。


『いいえ、無駄ではありません!』

 すると上空に映像が映し出された。

 映っていたのは神々しい光に照らされた、女神ゼウだった。



「女神……!」

 イヴが憎々しげにゼウを睨みつける。


「おお、女神様……!」

「女神様だ!」

 人々は、上空の映ったゼウを見上げる。


『『メイデン・ワンダーランド』に生きる全ての人々に告げます……! 今、この世界は戒めの大魔女によって、崩壊の危機に瀕しています……!』

 ゼウは、目を閉じて両手を組んで祈りをささげた。


『どうか、お願いです。魔法少女に……世界を救う勇者、魔法少女に皆さまの祈りを! 『応援の声』を届けてください! 世界を救うことができるのは……この世界に生きる、すべての人々の声です!』

 ゼウは真剣な表情で、人々に向かって訴えかけた。




「…………」「…………」

その言葉を聞いた民衆たちは、真剣な表情でうなづく。

「聞いたよな! 女神さまのお告げ!」

「ああ!」

 民衆たちは、顔を見合わせてうなづくと、大きく息を吸った。


「がんばれ~! 魔法少女~!!!!」

「がんばれ!!! がんばれ~~~!!!!」

 人々が、大きな声で応援の声を上げて、腕を掲げる! 人々の声、人々の拳から、キラキラとまばゆい光が生み出され、ガンボイに向かって輝きながら向かっていく。


「こんな……! くだらない茶番のために……! やめなさい!!! やめなさいったら!!!」

 イヴが叫んで止めようとするが、人々の応援の声は鳴り止まない。


「がんばれ魔法少女~~~!!!!」

「がんばれ~~~!!!! 負けるな~~~!!!」

「魔法少女、負けないで~~~!!! 負けないで~~~!!!!」


「「「「勝ってくれ!!! 魔法少女!!!!」」」」

 人々の想いが、輝きとなって真っ黒い空を照らしていく。世界中から、大きな光の橋が伸びていく。

 その光が、終焉の炎を押し続けるガンボイの背中に集められていく―――!



「これは……!」

 ユウキは、ふと気づく。機体の中が、熱くない。

 気づけば、ガンボイの身体は全身が、虹色の光に包まれて輝いていた!


「すごい……! なんなのこの力……!」

 ヒメコは、座席シートの裏にアームで吊るされているヘルメット型のバイザーから、機体の状況を確認する。

「魔力出力が、今までよりも何十倍、何百倍もあるわ! これなら、もっと押し出せる!」

「だったら……!」

「いくっきゃないヨネ!!!!」

 アイルとミクルが、足のペダルを踏みこんだ! 足のバーニアから、七色の輝きがさらに噴き出す!!!


「いっけえええええ!!!!!」

 両足と背中のバーニアから、七色の光が噴き出す!!! ガンボイは、さらに勢いをつけて終焉の炎を押しだした!


「うおおおおお!!!!!」

 虹色の光をまとったガンボイは、背中から更に光を放つ! 虹色の輝きは、ガンボイの全身を包み込み、まるで虹色の光が翼のようになって広がっていく!


「バカな……! ありえない……!」

 イヴは、気づいてしまった。 終焉の炎が、押し返されつつあることを。


「僕は……! 僕たちはああああ!!!!」

「魔法少女だニャアアアアアアアア!!!!!!」

 ガンボイの頭部、メタの瞳が輝く。ガンボイの全身から溢れる虹色の光が、終焉の炎全体を包み込み、徐々に終焉の炎は地表を離れ、空へ空へと向かって押し出され始めていた。





「ダメよ! 終わらなきゃダメなの! あの『神』の目論見も……! 貴方たち魔法少女の物語も!」

「イヴ!」

「どきなさい!」

 イヴは、なりふり構わずに叫ぶと、チーマの頭を蹴り飛ばして終焉の炎に向かって飛翔した!


「終わらせてやるのよ……! アタシが!!!! この世界を!!! 魔法少女の呪いを!!!」

 イヴは、終焉の炎の上から両手を掲げて地面に向かって押し出そうと手を突き出した!


「終わらせない!!! アタシたちが……」

「世界を護るんだああああああ!!!!」

 アイルとミクルが叫ぶ。イヴと魔法少女たちのガンボイが、お互いに終焉の炎を押しあってぶつかり合う!


「うううう……!!!」

「やああああああああ!!!!」

 ユウキとアマネは、盾のトリガーを構える。聖盾シブトから、『グランド・ホーリーショットX(エックス)』を放った!


「ぐっ……!」

 聖盾シブトから放たれた光の光線が、イヴの肩を貫いた!


「いっくにゃああああ!!!!」

 アマネが何度もトリガーを引いて、何度も盾からビーム砲を放つ!!


「このっ! このぉ!!!」

 何度もビームがイヴのドレスをかすり、イヴの肌が焼かれていく。


「シブト……! メタ……ガンボイ……! なんで!!! なんでえ!!!!」

『イヴ……』

 イヴの涙を見て、神器たちの表情が曇る。だが、シブトたちは攻撃の手を緩めない。


「これで……最後だあああああ!!!!」

 そして、ついにガンボイと終焉の炎は、大気圏を突き抜けて、宇宙へと飛び出した―――!




「…………」

 宇宙の彼方に飛び出した『終焉の炎』は、星の重力圏から抜け出して、世界の映像が星のようにきらめく世界へと浮かび上がった。


「もう、これで……!」

「諦めるもんですか!!!!」

 ユウキに向かって、イヴは叫んだ。


「たとえ、神器全てが貴方たちに味方したって……世界を生み出した神々の眷属全てが、あなたの味方になったって……アタシは! 神を殺さないといけないの!」

「イヴさん!」

 ユウキが、イヴに向かって叫ぶ。


「そのために……メイデン・ワンダーランドも……! 他の世界も全部ぜんぶ!!! 燃やし尽くして火あぶりにしてあげなきゃいけないのよ!!!!」


 イヴの叫びを聞いて、ヒメコが顔を伏せて言った。

「…………私はね」

 ガンボイは、右腕を背中に回して『聖剣ブレイブ』の柄に手をかけた!


「世界が滅びることなんて……望んでいない!!!」

 ヒメコの声に呼応して、ガンボイは背中から『聖剣ブレイブ』を引き抜いた!


「なんで!!! 貴方だって……無理やり異世界に連れてこられて、心も体も汚されて、傷ついてきたでしょうに!!!」

「それでも……! 私は……大切な仲間たちに出会えた!」

「この世界で……護りたい大切な人たちができた!」

 ヒメコとミクルが叫ぶ。


「大切な……護りたい命がある! 命の花を……悪戯に散らすことは、誰であっても許さない!」

「だから! あたしたちは!!!!」

 ガンボイは、『聖盾シブト』の砲門に『聖剣ブレイブ』を合体させて巨大な『ビームブレイド』を作り出した! 聖盾シブトの砲門が開き、聖剣ブレイブの刀身が展開すると、巨大なビームの刃が形成された!!!


「魔法少女……! 《五つの(フィフス)奇跡の魔法少女(マジックヒロイン)》だああああ!!!!!」

 ガンボイは、超巨大ビームブレイド『超聖剣ビームブレイブ・ブレイド』を振り下ろし、終焉の炎を切り裂いた!!!!!



「ま、魔法……少女……!」

 イヴの目に光が映った次の瞬間、終焉の炎は光に包まれて大爆発を起こした!!!!

 キラキラとした七色の輝きが、宇宙に散らばってきらめいていく―――!





「…………」

 キラキラとした輝きは、ほうき星になって空を埋め尽くすように輝いていた。

 切り裂かれて変身が解除されたイヴは、キラキラと輝く空を眺めながら、ゆっくりと寝ころんだまま地上に落ちていく。


「……綺麗」

 イヴは、キラキラの夜空を眺めながら、目に涙を浮かべる。

 彼女の脳裏には、昔の想い出が蘇っていた。



~~~~~~~


「なぁ、イヴ……ハロウィンは、今でも嫌いか?」

 イヴが、魔法少女になって数年後。アイドラウム王国の城下町で開かれた、街のハロウィンパーティーを眺めながら、ワーロックが言った。


「…………ええ、嫌いよ」

 イヴは椅子から立ち上がって、ワーロックに背を向ける。


「だってアタシはお菓子をもらえないんですもの……アタシは、大人のレディなんだから」

「ははっ、そうかそうか……」

 すると、ワーロックは笑いながら懐からオレンジ色の小さな袋を取り出して言った。


「じゃあ、大人のレディにはハロウィンのお菓子は要らないなぁ」

 ワーロックは、笑いながらオレンジ色の袋を懐に隠そうとする。


「あっ! いらないとは言ってないでしょ!」

「はっはっは! イヴ、ハロウィンの日は……なんて言うんだったっけ?」

 ワーロックは、お菓子の袋を持つ手をイヴの手の届かないところまで伸ばしながら、イヴの頭を撫でて言った。


「トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃ……イタズラするわよ!」

「はい、どうぞ! 小さな可愛い魔女さん♪」

 ワーロックは、笑顔でイヴにお菓子の袋を手渡した。


「やったぁ!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶイヴを見て、ワーロックは顔をゆるませて言った。


「ふふっ、こうしてみると……やっぱりイヴは子供だな」

「まあひどい! 子供じゃないわよ!」

「いいや、子供さ。……今は、子供でいい」

 ワーロックは、夜の街の明かりを見て言った。


「子供でいいのさ、お前みたいな可愛い女の子はな……ほら、他のお店にも行っておいで。お菓子がタダで食べられるなんて、今のうちだからな」

「…………ええ」

 イヴとワーロックは、あれから魔法少女として魔王チーマを倒すために、神器を集めて魔王城へと向かうため、西へと向かう旅をしていた。


「なぁ、イヴ……子供のお前に、こんなことを任せないといけないのは、オレとしても心が痛い……けど」

「……わかってるわ」

 イヴは、オレンジ色の袋を取り出して、中からキャンディーを取り出す。


「街の人たちが、平和にハロウィンの祭りを楽しめる……そんな世界を、お前には護ってほしい」

 ワーロックの言葉を噛みしめながら、イヴはガリっとキャンディーを歯で噛み砕いた。


「……わかっているわ。私……『魔法少女』だもの」

 世界中の、どんな困った人たちも助けてしまう、世界で最高に可愛い憧れの存在。

 私は『魔法少女』に、心の底から憧れていた。そして、魔法少女に選ばれた。

 私は、世界を救いたい。母のために、そして、(ワーロック)のために。


「…………ねぇ、ワーロック」

 イヴは、街の明かりを窓越しに眺めて言った。


「ん?」

「……今日の街は、とても綺麗……とても綺麗ね」

 ハロウィンの祭りで盛り上がる夜の城下町は、あちこちにカボチャの明かりで彩られており、大人も子供も笑顔で、楽しそうに過ごしていた。蝋燭とランタンの明かりは、まるで夜の星空のようで。


「……ああ。綺麗だな、イヴ……」

 アタシは、きっとこの瞬間だけは……ハロウィンのことが、好きだったのだと、思い出した―――。


~~~~~~~


(……どうして、あの日のことを思い出してしまったのかしら)

 イヴは、目を閉じて涙をこぼした。


「……どうじゃ、負けた気分は」

 地面に寝転がったイヴに向かって、チーマが声をかけた。


「…………悪くなかったわ。少なくとも、貴方に負けた時よりかはね」

 イヴは、右腕で目を隠しながら、ふふっと柔らかく笑った。


「……そうじゃな。ワシも、お主とは対等に戦いたかった」

 チーマは、骨の大剣を生み出して右手に持った。



 ゴゴゴゴゴゴ……!


 魔法少女たちを乗せたガンボイが、宇宙から降りてラドルーム平原の野原に着陸する。

『着陸、着陸、着陸……!』

 ユウキたちは、すぐにガンボイから降りると、ガンボイと神器たちは小さくなってユウキたちの鎧になった。


「イヴさん!」

 地面に降り立ったユウキは、急いで寝ころんでいるイヴの元へ駆け寄ろうとした。


「ねぇ、《五つの(フィフス)奇跡の魔法少女(マジックヒロイン)》……」

 寝ころんだままのイヴが口を開いたと同時に、チーマが大剣を振り上げた!


「ありが」

「…………ッ!」

 次の瞬間、イヴが言葉を言い終わる前にチーマは大剣をイヴの首を突き立て、イヴの首から鮮血が噴出した!!!


「い……ヴ、さん……?」

 ユウキは、目の前で首を斬られたイヴを見て、現実を直視することができずに硬直する。


「……あんた、何やってんのよ!!!!」

 ヒメコが叫んだ。チーマは、血に濡れた大剣をかついで、ふう、と額の汗をぬぐった。



「は~やっと殺せたわ……これで一件落着じゃのう。おつかれさんおつかれさん」

 チーマは、まるでほんの少し面倒な用事が終わった、くらいの顔で一息つく。


「なにも、殺すことはなかったじゃないか!!!」

 ミクルが叫んだ。

「そうよ! イヴさんは……」

「なんじゃ? メイデン・ワンダーランドの全人類を滅ぼそうとした悪い魔女じゃ。殺されて当然であろう。お前らも殺そうとしておったではないか」

 アマネに向かってチーマが言った。


「でも……! イヴさんは、きっと」

「ユウキ……話せばわかる、とでも言うつもりか? ……まあ、わからんでもない。現にイヴは、お主らに絆されかけておったがの」

 チーマは、小さな岩に腰かけて言った。


「じゃが……あやつは『喋りすぎた』。魔王たるワシとしては、世界の秘密を識りすぎた人間を、生かしておくわけにはいかなかったのじゃ」

 チーマは、夜空の月を見上げて言った。


「世界の……秘密……」

 ユウキが、チーマの顔を見る。


「まあ、お前たちも半分識ったようなものじゃがのう……じゃが、こうなっては止められんぞ」

 チーマは、片手で大きな骨の大剣を持って、切っ先をユウキに向けた。


「いいか、魔法少女たちよ……世界の秘密を識りたくば、全ての神器を集めこのワシの元まで来るがよい……! ワシは、逃げも隠れもせん」

 チーマは、大剣をユウキに向けたまま、立ち上がってバサッと悪魔の翼を広げた!


「お前たち勇者と、魔王であるワシは、戦う運命にある……! ワシはそう遠くない未来で、お前たちをの首をこの女のように斬り落とし、魔法少女を全滅させた暁にはこの世界を魔物どもで埋め尽くし、人類をワシの手で滅ぼす……! ワシの()()()()のためにな……!」

 チーマは、闇のワープホールを開くと、フェゴレザードと共にワープホールの中に入っていく。


「そして、この世界の魔王であるワシを倒した暁には……この世界の全てを教えてやろう……! お前たち勇者と闘える日を、楽しみにしているぞ……! わあっはっはっは……!」

「チーマ……! チーマああああああ!!!!!」

 ユウキが叫ぶのもむなしく、魔王チーマは闇のワープホールと共に消えていくのであった―――!


~第十話 エピローグ へ続く!~






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