第三話「守れ!キャラバン!名乗れ!名前!」~前編~
※注意 完全オリジナルで書くのは初めてです。メタなネタが含まれています。前回の話と続き物になっているので、前回の話をご視聴の上ご覧ください。完全オリジナルといいますが、どこかでみたことのあるネタを多分に含んでいます。また、誤字脱字、シナリオに矛盾などあったらご指摘お願いします。なるべく早く修正します。
前回の話と続き物になっているので、前回の話をご視聴の上ご覧ください。
また、今回の第三話は「前後編」構成になっています。こちらは前編です。
~あらすじ~
いきなり魔王城に飛ばされた魔法少女、ユウキメイドとアマネキャットは、なんとか四天王を撃退したのもつかの間、ラスボスの「魔王チーマ」が姿を現す。しかしその姿はどう見てもかなり幼い幼女そのものであったが、魔法少女のチート能力をさらに上回るチート能力で二人はあっさりねじ伏せられ、、2人はあっという間にピンチに追い込まれてしまう。なんとか呪文で魔王城から脱出した二人であったが、四天王「レディ・ミスティ」に追撃され、万事休すかと思われたそのとき、新たな魔法少女「アイル・フルール」が現れ、2人を救出する。魔王城に最も近い街「ラブゼバブ」でお互いの素性を確認するが、なぜかアイルは頑なに変身を解こうとしなかった。そして、人目を気にする彼女は、しぶしぶ変身を解くのだが―――。
「アタシの本当の名前は……『咲久良 藍留』。魔法少女にあこがれて……女に、なれなかった存在なの」
僕(波戸 悠木=魔法少女・ユウキメイド)と、アマネ(鈴木 天音=魔法少女・アマネキャット)を救ってくれた、謎の魔法少女「アイル・フルール」は……
僕たちの目の前で変身を解くと、彼女……いや、彼は男だった。
「あいる、さん……?」
藍留……アイルの姿格好は、ロングスカートの女子制服ブレザーで、髪型も腰ほどある長い黒髪のストレートだったが……180cmはあろうかというほどの高身長、ごつく体格のいい肩幅は、お世辞にも女性らしいとはいえない姿だった。
ちなみに補足すると、アイルは『魔法少女アイル・フルール』の姿に変身しているときは、若干身長も低くなり(ヒールの高さ込みで元の伸長と同じくらいの体格)、全体的に手足も細く体格も華奢な美少女に変身している。
「ゴメンね……騙すつもりはなかったの。驚かせてしまったらごめんなさい」
アイルは、ぺこりと頭を下げる。彼女の顔には、紫色のフレームの眼鏡がきらりと光っていた。
「お、男……!?」
おもわず、ユウキは目を丸くして彼を見つめる。
「おっ……おっきいね! 身長! あたしの倍はあるんじゃない!?」
アマネは自分の手を伸ばして比べている。でもアマネの伸長は135㎝くらいだから、たぶん倍はないと思うんだけど、
「って、アマネちゃん! 言い方っ! でっ、デリカシーってものが、あっ、あるんじゃないかな!?」
なんかえるじーびーてぃーの人って、そういう問題はデリケートで身長とか見た目とか気にするってお母さんが言ってたし!
「……ふふっ、誉め言葉として受け取っておくわ」
アイルは、そんなアマネの言葉に笑顔で返した。
「正直、身長のことを言われるのは嬉しくないけど……慣れたの。元居た世界でも、ここの世界でだって、アタシのような男にも女にもなり切れない半端者には、奇異な目を向ける人や、変に気を遣ってくれる人しかいなかったから……ユウキ君もアマネちゃんも、あんまり気を遣わないでちょうだい」
「アイルさん……」
「でも、ユウキ君。……アタシのことは、『お姉ちゃん』って呼んでちょうだい」
「あ、はい……」
この人、ちょっとゼウ様に似たところがあるのかな……? なんて思ったりするユウキであった。
「さて、話を戻すけど……あと2人の魔法少女を探して、魔王チーマに反撃する、ってことでいいのよね?」
アイルの言葉に、ユウキとアマネはうなづいた。
「アタシは、明日は早朝から街の食糧輸送キャラバン隊の護衛で『アイドラウム』の国の城下町まで行くことになっているの。『アイドラウム』の城下町なら、巨大な冒険者ギルドがあって、情報も多く集まるはず。そこでなら、もう2人の魔法少女についても手掛かりがつかめるかもしれないわね」
「そっか……大きな街に行く、ってことでいいんだよな? だったら、僕たちも同行するよ!」
「あたしも行くわ! おっきな街だったら、せっかくだからお洋服も買いに行きたいわね!」
ちなみに、魔王城に飛ばされた直後はユウキもアマネも初期装備のインナーしか装備していなかったので、さすがにそれでは可哀想ということで、アイルが二人に『村人の服(ボロ布の服)』を装備させてくれた。でもやっぱりボロボロだし匂うしデザインも悪いらしくで、アマネとしてはもうちょっと可愛い服が着たいらしい。
「ちなみに、君たちはモンスターを倒したことはあるよね? 倒したモンスターは浄化されると『JP』になって、『プリズムペンダント』に吸収されるの。このペンダントを街のギルドの『ジュエルマシーン』に読み込んでもらうと、こちらの世界の通貨である『J』と交換してもらえるのよ」
アイルが説明してくれた。
「へー、ちゃんとゲームチックにそういうところは便利なんだな……」
「ちなみに、多くの冒険者も『プリズムクリスタル』を埋め込んだアクセサリーは持っているけど……君たちが持ってる『プリズムペンダント』は、神々の加護を授かったとても高純度なプリズムクリスタルを埋め込んでいるの。つまり、純度が高ければ、それだけ経験値やJPを多く貯められる。この世界の人にとって、それはとても値段の付けられないほどの価値を持っているってことなの。街に出るときは、盗まれたりしないように絶対に肌身離さず持っているのよ」
「うへぇ、妙にリアリティあるなぁ……売ったら、いくらくらいするんだろう」
「それはアタシも試したことはないけど……おそらく一国をまるまる買って大きな屋敷も建てられるほどの大金が手に入るでしょうね。でもね……それはいずれ結局魔王に滅ぼされてしまう世界のうちの一国に過ぎない。アタシたちが戦うのは、全ての世界を魔王の支配から解放すること。それは忘れないようにね、ユウキ君」
「……アイルさん、すごいな……なんというか、すごく、大人のお姉さん……いや、お兄さん……?」
「素直にそこは『お姉さん』でいいのだが?」
アイルの眼鏡がきらりと光った。
「わわっ、ごめんなさい~!」
「……ん~、あたしには、むづかしい話は全然わかんない……わかんない……わかめふりかけ……」
少し難しい話をしたせいか、アマネの頭から煙がではじめていた。
「君たちは、まだ中学生だったっけ? 難しいことがあったら、なんでも聞いてね」
アイルが、優しく微笑んだ。
「じゃ、じゃあ……! ペンダント、おフロのときも、持ってたほうがいい、ってことでしょうか!?」
アマネが聞いた。
「……そ、そこぉ?」
「……こほん。持ってたほうがいいわね。あのペンダント、実はちょっと小さくできるのよ」
アイルは、自分の胸からプリズムアイテムを取り出す。
「それは……?」
「『プリズムブローチ』よ。貴方たちとほぼ同じ変身アイテム。少し見ててね」
アイルは、持っていたプリズムブローチのフチのスイッチをカチっと押すと、手のひら大だったブローチの大きさが、装飾がかなり小さめのお洒落なネックレス程度の大きさになった。
「そんな裏技が!?」
「元に戻すときは、クリスタルの部分をカチカチっと2回押してね。あと、チェーンの部分も、実は自由に伸び縮みさせたり、指輪型にすることも……」
~~~~~~
そんなこんなで、先輩魔法少女のアイルに色々ネックレスの手ほどきをしてもらいつつ、ユウキとアイルは準備を進め、眠ってそして夜が明けた―――。
そして。
「今日は、よろしく頼むよアイルの兄ちゃん!」
キャラバン隊のおじさんたちが、アイルに気さくに声をかける。
「……こほん。アタシのことは、あ、『アイルちゃん』と呼んで欲しいのですが……?」
ちなみに、アイルは人前に出るときは『アイル・フルール』の姿に変身しているのだが、キャラバン隊の商人たちは皆アイルの正体については知っているらしい。
「んなこまけえことはいいからよ……それより、もう2人、魔法少女が増えたってのはマジなのかい?」
髭面の商人がアイルに尋ねる。
「はい! ……ユウキです!」
「アマネです! よろしくお願いします!」
ユウキとアマネは、商人たちにおじぎをした。
「はぇ~、まだガキじゃねえか……大丈夫なんかね?」
商人たちは、ひそひそと小声で相談しながら顔を見合わせた。
「バカ野郎、本来魔法少女ってのはな……女神さまの加護を受けられる清らかな『少女』にしかなれねえんだよっ。むしろアイルの兄ちゃんのほうが……」
「……アタシが、なんですって???」
アイルが手に握っていたリンゴが、ジューサーに絞られたかの如くボタボタと果汁をこぼす。
「あっイエなんでもないでえええええっす! スイマセンっした!!!」
「まあ、この子たちはまだ『魔法少女見習い』、といったところだけど……これからアタシと一緒に実戦経験を積ませていけば、アタシと同じくらい頼れる戦力にはなるはずよ」
「そ、そうです! そっ、それに……僕だって、足手まといになるつもりはありません!皆さんのこと、絶対護りますから!」
「そーよっ! あたしが来たからには、100人力なんだからっ!」
どうしてアマネは得意げなんだよ?
「そうか……だが、くれぐれも油断するなよ。俺たちも、武装したキャラバン隊とはいえ、魔王軍の魔物の軍団には手も足も出ない。お前たちがピンチになっても、助けてやることはできないからな」
商人のリーダーは言った。
「俺たちのキャラバンは、ラブゼバブの街の食料と水を担う、いわば『生命線』だ。優秀な戦士たちも、年々殉職者が増えて、もはやアイルの兄ちゃんがいなけりゃキャラバンを護る戦力もない。お前たちのようなガキに、こんな重荷を背負わせることになるとは……俺たちゃ情けない限りだが……」
「……おじさん、なに言ってんの! わるいのは、ぜーんぶ魔王チーマのせいでしょ? おじさんたちもまちのためにがんばってるのに、気にすることないよ! 自分をせめちゃうと、おなか痛くなっちゃうんだから!」
アマネは、キャラバンの商人たちに言った。
「アマネちゃん……!」
「……ああ、そうだな。ありがとな、嬢ちゃん。……そいじゃ、お嬢さんたちのお仲間の魔法少女を探すためにも、行くとしますか! 行くぞ、野郎ども!」
「おおーっ!!!」
こうして、キャラバン隊は、10両の荷馬車の列を組んでラブゼバブの街を出発した。
ラブゼバブの周辺は魔物がうろつく深い針葉樹の森が数多くある地形であり、魔物の巣窟と化した森を通るのは自殺行為に等しいため、森のない広い荒野に一本だけ整備されている街道を行くのが一般的だ。
だが、それゆえに魔王軍の魔物が待ち伏せをしていることも多く、かといってほかに通れる道もないため、魔法少女の助力が必要不可欠なのだという。
「なー……僕たちは、このまま魔物が出るまで馬車で休んでて、いいのか?」
「ん~……い~んふぁらい……? ふわぁ……」
ユウキとアマネは、魔物が出るまで待機していろ、とアイルに言われた。アマネはこんな寝心地の悪い馬車でもお構いなしに昼寝をしようとしている。
『いい? アタシたちのような『異世界からの転生者』は、根本的に一般の人間とは身体の作りが違う。身体能力の強化に、肉体的鍛錬は一切必要としない。 その代わり、緊張したり疲労して呼吸が乱れたりすると、MPを消費する。 魔法少女に変身している間はMPを消費しないかもしれないけど、魔法少女の変身持続時間は、変身前のHPやMPに強く依存する。 まだ基礎のMPが弱い君たちは、あたしみたいな長時間変身はまだ無理よ。 戦闘の機会があれば君たちを呼ぶから、それまでは休息に専念していて欲しい』
「……だって言ってたけど……なんか、レベルって概念が元(?)の世界のゲームと似すぎていて、なんか既視感?というかなんかうーんって感じだな……」
「MP? とかなんとか、そういうの考えるのあたし苦手だな……スキルを振ったら、頭がよくなるとかってないのかな?」
「ん? そういえば『賢さ』ってステータスがないな……代わりに『魔法攻撃力』『魔法防御力』はあるみたいだけど。たしかに賢さのステータス上昇があれば、アマネちゃんでももっと賢くなれたかもしれないね」
「あっ! ちょっと『でも』ってどういうイミよ!? ユウキのくせにあたしをバカにしたわね!?」
「あっ、しまった本音が……! で、でも僕だってユウキのくせにって言われるの僕もちょっとむかつくけどなぁ!?」
「ユウキはあたしよりダメ人間でしょ!? あたしの下着チラ見したへんたいユウキのくせに!」
「あ、あれは事故だしノーカンだし!? そ、そりゃ僕はダメ人間かもしれないけど……でも!」
『ピリリリリ……!』
二人が、はっと気づいた。これは、出発前にアイルに教えてもらってスキルを振って会得した、脳内に直接響く『魔法少女専用:マジカル☆テレパシー』という、魔法少女同士が脳内で念話できるというスキルだ。
『 聞こえるかい、二人とも? 前方に魔王軍の部隊50体を確認した。戦闘準備に入ってくれ』
アイルの念話を聞くと、二人はすぐに立ち上がった。
「いこう、アマネちゃん!」
「……うん!」
ユウキとアマネは、アイルの元へと急ぐのであった―――。
~後編に続く~
こんばんは。ラスティと申します。
ここまでご覧くださり誠にありがとうございます。元々前後編に分かれていなかったのですが、文字数を鑑みて前後編に再編集しました。後編のほうもよろしくお願いします。
私、一応ニコニコ動画とYouTubeでの動画投稿活動を中心に活動させてもらっているのですが、最近買い換えたばかりの新PC君が不調で修理に出すことになったため、修理が終えるまで(早くて一週間、長くてまる一か月)動画投稿の活動ができなくなってしまい、しばらくはネタ入れのためのインプットと、小説投稿に集中できそうです。pixivやハーメルンにも別の連載を載せてるのでそちらもよろしくお願いします。では、また。感想送ってくださると大変喜びます