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第八話「砂漠の呪いの謎を解け!巨大ピラミッド大決戦!」その4

 魔法少女たちは、ピラミッドの内部で魔王軍の四天王「レディ・ミスティ」のデストラップダンジョンを「ワイルド・バロン・マスク」と伝説の鎧「ガンボイ」の力を借りながら潜り抜けるも、レディ・ミスティは魔法少女たちから吸い上げた魔力を使って遂に秘密兵器を起動。

 なんとピラミッドを初代女王パトラクレオの怨霊を利用して100m級の巨大な石の巨人「超巨大・石魔人ギガント・ゴーレム」に作り替えてしまう。

 崩れ行くダンジョンから脱出する魔法少女たちであったが、遂に伝説の鎧「ガンボイ」は、その真の力を解き放つ―――!




 5人の叫びに呼応して、B、C、D、Eパーツが、地上から空へ飛び出し、そこにユウキ、アマネ、ミクル、アイルがそれぞれのパーツに吸い込まれていく。


 さらに、ヒメコが装備しているガンボイの司令塔、Aパーツが巨大な部屋状の胸部パーツとなり、5つのパーツが次々に合体していく!


『おらもいっくべ~!!!』


 さらに、聖盾シブトが巨大化し、大きな頭部パーツになっていく!




 ガッキィィィィィン!!!!!!!!



挿絵(By みてみん)



『オレの名は……正義と自由の守護神!!!! フリーーダーーーム!!!! ガーーーンボイーーーーーー! である!!!!』


 なんと! ガンボイは超巨大な100m級の大型のロボットに変形した!!!!










「……なにこれ」


 ヒメコは、ロボットの胸部にあるメイン操縦席に座っているのであった。



「ど、どうなってるんだ!?」

「え、えええーーーっ!?!? なにこれなにこれ~!?」

 二人はきょろきょろとあたりを見まわす。

 ユウキは右腕のBパーツ、アマネは左腕のCパーツの肩部に作られたコックピットに座っていた。


「え、ええと……ほんとにこれはどうなってるのかしら」

「わ、ワ~オ! なんというか、アメイジングな展開だネ! これは!」

 アイルは右足のDパーツ、ミクルは左脚のEパーツの膝部分に作られたコックピットに座っていた。


「……というか、このコックピットちょっと狭いわね」

 アイルが窮屈そうに身体を動かす。


「おお! 外はちゃんとモニター画面で確認できる!」

「これは……! これは……スーパーヒーローの、スーパーロボットか! やばい、テンション上がる……!」

 ミクルとユウキは、コックピットの中のモニターや操縦桿を見ながら目を輝かせている。


「……男の子って、こーいうの好きよね~」

 アマネはやれやれといった顔で肩をすくめた。





「……あのさぁ」

 すると、ヒメコは「はぁ~」と大きなため息をついた。


「バッッッカじゃないの!?!? おかしいでしょこれ!? ガンボイ、聞いてるの!? ……私たち、魔法少女って言ったわよねェ!? なんで魔法少女がこんなコッテコテのカラーリングのダッサイロボットに乗らないといけないのよぉ!?」

 ヒメコがブチギレながら操縦席の手前のミニモニターをバンバン叩く。


『落ち着けよ……落ち着けよ、落ち着けよ……! 何故怒りに燃える?? これがオレの真の姿『伝説の自由の巨人 ガンボイ』である……! あの巨大な敵を討つためには、まさに今必要な力であると考えるが……何故だ……? 何故だ、何故だ……?』

「そうだそうだ~! 巨大ロボットのどこが悪いんだ~!?」

「ガンボイさんのメカニックデザインは、ちゃんとカッコいいですよ!!!」

 戸惑うガンボイを励ますように、ミクルとユウキがヒメコに反論する。




「……こほん。言いたいことは分からなくもないけど、ひとまずここは合理的に考えましょうヒメコちゃん。 今、必要なのはアイツに抵抗するための力よ」

 アイルが言った。


 今も、レディ・ミスティの操る100m級の石の巨人『超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)』は、歩きながら足元の大地から水分とエネルギーをどんどん吸収しつつ、すぐ近くの『シャムラン』の王都を侵略せんと進軍を続けている。


 王都の前に立ちふさがる魔法少女たちの巨大ロボット『ガンボイ』が止めなければ、王都のオアシスは干からびてシャムランの国の人々は全滅し、このままでは滅びてしまう。






「ぐうううう……! 納得いかないけど……あたしたちの魔法が効かない以上、そうするしかないみたいね……!」

「ガンボイ! このロボット、操縦するにはどうしたらいいんだ?!」

 ユウキが聞いた。


『うむ……! 手足の4人は操縦桿を握れ! 握れ、握れ……! メインブロックのヒメコは、バイザーを付けて目の前のモニターキーボードを操作するのだ!』

「バイザー……これのこと?」

 ヒメコは、座席シートの裏にアームで吊るされているヘルメット型のアイガードゴーグルのような装置を頭にセットする。


(むっ……!)

 バイザーを覗くと、少し高い位置から外の景色が見えてくる。地平線の向こうまで、バッチリ視認できる。

『バイザーからは、頭部のカメラから広範囲の視界情報を得ることができるのだ。できるのだ。加えて手元も見ることができる、故にモニターキーボードで機体を操縦するのだ』

「なるほど……スキルパネルと同じように操作できるってわけね」

 ヒメコが、モニターキーボードの操作コマンドを操作する。


「……おお!? これは……!?」

 すると、ヒメコの思考がDパーツの操縦桿を通して操縦桿を握っていたミクルに伝わる。


『そして、操縦桿を握るものは強く機体を動かすイメージをしながら操縦桿を握る手の力を込めるのだ! そうすれば、機体はその通りに動く!』

 ガンボイが言った。



「へぇ……ちょっと回りくどいのが気になるけど……要するに、力を合わせろってことでいいのよね?」

 ヒメコが言った。


「そうと分かれば、みんなで力を合わせるわよ!」

「おうっ!!!」

 アマネが言うと、全員が頷いた。





「な……なんなのよ~アレはぁ!?」

 驚いていたのは、超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)を操るレディ・ミスティである。

挿絵(By みてみん)

「伝説の鎧に、そんなヒミツがあるなんて……でも! だからといってこの超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)は……止められないワヨ!」

 レディ・ミスティは、超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)をまっすぐガンボイに向けて歩き出させた!


「こっちも行くぞ! ミクル君! アイルお姉さん!」

 ユウキの叫びに、ミクルとアイルが呼応する。

「オッケー! それでは、行進、始めちゃうヨ~!」

「ええ、全速前進よ!」

「行きなさい! アンタたち!」

 ミクルとアイルが操縦桿を握り、思念を集中させるとゆっくりガンボイは左足を上げ……ズシィン、と砂漠の大地を踏みしめる。

 すると、


 モサモサモサ……!


「こ、これは……!」

 ガンボイが踏みしめた砂地の大地から、なんと若草色の植物と花々がモサモサ生え始めてきたではないか!


『オレの力は『生命を与える力』……! オレが歩けば枯れた大地の生命と水を呼び醒まし、この星の命を、大地を蘇らせる力となるのだ……!』

「じゃあ、だったら……!」

「この戦いに勝って、ガンボイと一緒にこの砂漠を歩けば、この国の水をふっかつさせることができるのね!?」

 ユウキとアマネが言った。

『その通りだ……! その通りだ、その通りだ……!』


「そんなこと……させるわけないでしょう! この……倒れなさぁぁぁい!!!」

 レディ・ミスティは超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の拳を振り上げ、ガンボイに向かって殴りかかる!


「ユウキ! 防ぎなさい!」

「ヒメコさんの思考が……操縦桿を通して伝わってくる! うおおおおお!!!」


 ガキィィィィン!!!


 ヒメコの意思を読み取ったユウキは、ガンボイの右腕を操って超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の右ストレートをぶつかる直前で手首を掴む!


「なん……ですってぇ!?!?」

「すごい……! パワーは、こっちのほうが上のようだな!」

 ユウキは、操縦桿を強く握って、ヒメコに意思を送った!

「バイザーから、ユウキの思考が伝わってくる……? よし、皆! ぶっ飛ばすわよぉ~!!!」

「行くぞぉぉぉぉ!!!」

「あたしも、やってやるニャン!!!」

 ユウキは、掴んだ超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の右腕を強く引っ張って体勢を崩させると、左腕で超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の腰を持ち上げる!


「こ、こんな石の巨人を、持ち上げるですって!?」

「「「どっせええええええい!!!!」」」

 ガンボイは、超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)を上空へ持ち上げて放り投げた!


 ずしぃぃぃぃぃん!!!!


「きゃあああああああ!!!」

「更に、こっちも使っていくわよ!!!」

 ヒメコは、モニターキーボードを操作して、肩のビーム砲台の標準を倒れた超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)に合わせる。


「フリーダムキャノン!!!!」

 肩部のビーム砲台が、一斉にビーム砲を放つ!


「ちょっ、ふざけんじゃないわよ!」

 倒れたまま起き上がれない超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)は、慌てて術式シールドを展開し、フリーダムキャノンのビーム攻撃を間一髪で防ぐ。


「体勢を立て直す暇なんて与えないわよ! 胸部ミサイルランチャー起動!!!」

 ヒメコは、ガンボイの胸部に搭載されている追尾式ミサイルを連続で放って、倒れたままの超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)に追い打ちを仕掛ける!


「くっ、させないワヨ! その程度、この天才レディ・ミスティ様が対応できないと思いまして!?」

 レディ・ミスティは、超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の左手の指と目の宝石、口の砲台から一斉に闇のビーム砲を放射して、右手で巨体を支えて立ち上がりながらミサイル群を空中で迎撃する。


「相手もなかなかやるわね!」

「だったら……これだったら効くんじゃないかナ!?」

 ミクルが、操縦桿に思念を送り全員に作戦を送る。


「構わないわ、やりなさい!!!」

「ラジャ!」

「OK、ぶちかますわよ!」

 ヒメコの号令で、ミクルとアイルはクラウチングスタートの姿勢をとると、猛ダッシュで超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)に向かって砂漠の大地を駆け抜ける!


「フリーダム……ガンボイ~~~~~キックぅぅぅ~~~~~!!!!!」

 ガンボイは、砂漠の大地を跳躍し、300mの高さまで飛び上がると、左足を構えて超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)に向かって飛び蹴りを叩き込んだ!


「き……きゃあああああ!!!!」

 100m級の巨大な質量から放たれる強烈な威力の飛び蹴りは、超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の頭部の7割を粉々に吹き飛ばした!!!


「や、やったか!?」

「まだよ!!! たかが頭一つやられただけよォ!!!」

 元々頭部があった場所は、コックピットのほとんどが露出した状態のレディ・ミスティが血だらけで操縦桿を握っていた。


「げぇ!? コックピットっぽいとこぶっ壊したのに、まだ動けるの!」

「魔王様に認めてもらうため……! 暗黒魔術と暗黒科学技術を極めた科学者として……! 一人のオンナとして、魔族として! このアタシの誇りとプライドにかけて! これ以上負けるわけには……いかないのよォォォ!!!」

 超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)は、飛び蹴りで体勢を崩した状態のガンボイの右足を掴んで、ぐるんぐるんとジャイアントスイングでぶん回し、シャムラン王都の方角に向かって思いきり放り投げた!!!





「きゃあああああああ!!!」

「目が回るぅ~!?!?」

「皆、しっかり気を保ちなさい! ……ぐうううう!!!」

 放り投げられたガンボイは、ガガガガガ……と地面をえぐりながら、なんとか国の城壁にぶつかる直前で押しとどまった。


「は、はにゃひれほれ~……」

 ミクルは目を回している。


「はぁ、はぁ……皆、無事?」

「アンタたち、目を覚ましなさい! 来るわよ!!!」


「もう遅いわァ!!!!」

 猛ダッシュでレディ・ミスティの超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)が、ガンボイに向かって走ってくる!


「これ以上攻め込まれたら、王都が戦場になる!」

 ユウキが叫ぶ。

「ええ! こんな巨大なロボットとゴーレムが街中で戦ったら……」

「怪獣映画も真っ青、街の建物は全てメチャメチャになるでしょうね」

 アマネの言葉に、アイルが言った。

「ぐぐぐ……させないぞぉ!」

「アンタたち、気合入れなさい! ここが……正念場よォォォ!!!」

 ヒメコは、ガンボイの背中と腰部スカートのバーニアを点火させ、立ち上がりながら機体を加速させる!


「もう遅いわ!!! 重力魔法を濃縮した超強力な『《100億tの》ジャイアント・パンチ』を……食らいなさぁぁぁい!!!!!!」

「魔法少女は、そんなパンチに負けないって言ってんでしょおがああああ!!!」

 ガンボイは超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の両腕から放たれた強烈な2振りのパンチを、両手で正面から受け止める!!!


 ビー!ビー!ビー!


「う、うぐううううう!!!」

「ガンボイ! 頼む持ってくれぇぇぇ!!!」

 強烈なパンチを受け止めたガンボイの両手は、ギシギシギシ……と金属が歪むような嫌な音を響かせながら振動する。

『警告! 警告! 警告! Bパーツ、及びCパーツの耐久値、危険状態! このままでは、オレの腕部は破損する! 繰り返す! 耐久値、危険状態!』

 ガンボイの声がアラームとなって機体中に響き渡る。


「ヒメコ! ミサイルかフリーダムキャノンは!?」

 ミクルが叫ぶ。

「ダメよ! ミサイルランチャーは弾切れ、フリーダムキャノンは距離が近すぎて撃てないわ!」

「でも、このままじゃ……!」

『だったら、オイラの『ホーリーショット』で……!』

 頭部パーツのシブトが、ホーリーショットを放とうとする!


「……! ダメよ! その威力のビーム砲じゃ、反動で押し出されて後ろの城壁が壊れてしまうわ!』

 ヒメコが叫んだ。

 強烈なパンチの威力で、ガンボイの機体はじりじりとシャムラン国の城壁の前まで押し出されていた。これ以上後ろに押し込まれると、機体が城壁にぶつかって城壁は破壊され、城下町が戦場になってしまう。


「お~っほっほっほ! もう、アンタたちに打つ手なんてないわ! このまま、押し出して……この国の人間たちもろとも、砂漠の砂に吞み込んでやるわよォォォ!!!」


「ここでなんとかしなきゃ……私たちは、逆境を奇跡で逆転する魔法少女でしょ!? アイル!」

「ええ……だったら、勝負をここで決めるわよ!!!!」

 アイルは、ガンボイの左足にぐっと力を込めると、地面を踏みしめて踏みとどまった!


「うわあああああ!!!」

 城壁の門を護っていた兵士が、たまらず退去する。白いレンガで舗装された地面がバリバリバリ……と押し出されたガンボイの足によって破壊され、城壁にぶつかる形でガンボイの左足が止まる。


「ぐうううう、皆ごめん! けど、私たちは絶対に勝つわよおおおお!!!」

「ええ、ここよ!」

 アイルは、シャムランの城壁を蹴って強烈な膝蹴りを超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)に向けて叩き込んだ!


 ドゴォォォ!!!!


「なっ……!?」

 思わぬ反撃で膝蹴りを受けた超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)が、わずかにのけぞる。




「今よ! ユウキ! アマネ!」

 ヒメコが叫ぶ。


「こんな時のための……!」

「秘密兵器、ニャン!!!」

 ユウキとアマネは、腰部のスカートに内蔵されていた金色の取っ手を外し、両手で二振り持って構える!


「「『ラブリーピース・サーベル』!!!!」」

 金色の取っ手の先端から、ビームのような光で形成された刃が姿を現す!


「これで……」

「決めるニャン!!!!」

 二振りの巨大刀剣『ラブリーピース・サーベル』を構えたガンボイは、超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)に向かって斬りかかった!






「そんなものに……! アタシは……! アタシはァ……!」

 迫りくるビームの刃を見たレディ・ミスティの脳裏に、一瞬魔王チーマの笑顔がよぎる。


「魔法少女は……最後に、必ず勝ぁぁぁつ!!!!」

 ヒメコが叫んだ!


「うおおおおおおおおお!!!!」


 ビギャアアアアアン!!!!!


 『ラブリーピース・サーベル』の斬撃で、超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の両腕と上半身が、X字に斬り裂かれた!


「あ、ああああああ~~~~~っっっ!!!!」


(嗚呼……! 魔王様……! 大好きな貴方に、もう一度、逢いたかった……!)


 ドカアアアアアアアアアアアアンン!!!!!!


 大爆発を起こしてバラバラに崩壊した超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)から放り出されたレディ・ミスティは、そのまま超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の暴走した魔力炉の爆発に巻き込まれた!








「ひ、ひええ……!」

 シャムランの国の人々が、先ほどのアイルの蹴りで穴が開いた城壁の内側から、目の前で大爆発した超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の残骸を心配そうに見守った。


 爆炎の煙をバックに、自由と正義の死者、ガンボイはゆっくり立ち上がり、『ラブリーピース・サーベル』のビーム刃の出力を消して腰部のマウントラッチに収納した。




『……最後に、正義は勝つ!』




「ぼ、ボクたち……勝てたんだね!?」

「ええ、今度こそ……レディ・ミスティを、やっつけたわ!」

 ミクルとアマネが言った。


「ワァァァァ!!!!」

 ガンボイの声を聞いて、見守っていた民衆は歓声をあげて喜んだ!


「へへ……ギリギリの戦いだったけど、なんとか勝ててよかったね」

「ん? ……ねえ、アレ!」

 すると、アマネが叫ぶ。

 炎上する超巨大・石魔人(ギガント・ゴーレム)の残骸の中から、淡い白色の光のようなものが浮かび上がってきた。






「あれは……」

 すると、どこからともなく声がしてきた。





~ありがとう……勇者たち。そしてシャムランの民と子供たちよ……

 私は、初代シャムラン国女王、パトラクレオです……




 悪夢に苦しむ私の魂を利用した邪なる魔族の呪縛は、貴方たちの力によって解き放たれました……

 ようやく、私の御霊も神のもとに召されることが許される……~





「ええ!? 初代女王様の……ユーレイ!?」

「パトラクレオ様……」

 驚くユウキたちに、更にパトラクレオの霊は告げた。




 ~本当に、本当に苦しい日々でしたが、同時にシャムランの民たちを苦しめたこと、子供たちに重い責任を背負わせてしまったこと……本当に心からお詫びします。勇者たちよ……どうか……どうかこれからは、魔王を討ち倒し、平和なシャムランの国を取り戻してください……~


 そう言うと、パトラクレオの霊は静かに消えていった―――。





「あ、ねえパトラクレオ様! 最後に一つだけ聞きたいんだけど……音楽って、お好きですか!?」

 ミクルが声をかけたが、もうパトラクレオの霊は答えなかった。


「ちょっと、ミクル!?」

「……行っちゃったみたいね。どうか、どうか天国では、パトラクレオ様の御霊が安らかに眠れますように……」

 アイルは、Dパーツから降りると、天に昇ったパトラクレオに向かって目を瞑って手を合わせた。




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▼ アイルはLV:46にレベルアップしました! ステイタスが上昇しました! SPを獲得しました!

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▼ ヒメコはLV:46にレベルアップしました! ステイタスが上昇しました! SPを獲得しました!






「み、皆さ~ん! ……な、何があったんですか~!? そ、それに……さっきのお声は……!」

 すると、城壁の門から現女王ミクリスが走ってきた。


「あっ、ミクリス様!」

 ユウキがガンボイから降りて手を振る。


「ピラミッドが、あんな石の怪物になって……でも、それを勇者様たちが操る巨人がやっつけてくださって……と、いうことは……?」

 ミクリスの問いに、ヒメコが答えた。

「ええ。もうこの国が干ばつの危機に怯えることはないわ。全ての元凶、レディ・ミスティはいなくなってゴーレムの原動力として操られていた初代女王パトラクレオ様の霊も、もう解放された。万事解決、ってことよ。よかったわね」

「そ、そうなのですか~!! よかった……もう調査の為にピラミッドにいかなくても……国民の説明会を開くたびに胃を痛めることも……歴史の研究の為に徹夜をしなくても……よくなったんですね……! うう、感動ですぅ……」

 女王ミクリスは、ほっとした表情で目に涙を浮かべたままへたり込んでしまった。


「女王様、やはり働きすぎだったんだなぁ……」

「いーや! まだ終わってないよ! 女王サマには、もう一個! 働いてもらうことがあるよ!」

 ミクルが言った。


「ほえ?」

「ほえ? じゃないヨ! 覚えているヨネ!? ボクとの約束を!」

 数秒の沈黙の後、女王ミクリスはぽんと手を叩いた。


「ああ! ライブのお約束!」

「そう! 元々は、ピラミッドを舞台にする約束だったんだけど……ピラミッドがこの通りゴーレムになって粉々にされちゃったから、最初にピラミッドがあった場所に、またライブステージを作って欲しいんだ! お願いできる……ヨネ??」

「も、もちろんです……! ピラミッドが破壊されたとあれば、再建計画は早いうちにとは思ってたのですが……これで曰く付きの建物じゃなくなりましたし、こうなったらライブのような催し物もしやすいような素敵な建物として、これまでの形状に囚われず新しい慰霊塔として再建して見せますよ!」

 女王ミクリスは、笑顔でぽんと胸を叩いた。


「やった~~~~!!! よし、じゃあピラミッド再建の間……ボクは歌とダンスの練習、しないとネ!」

 ミクルは、上機嫌でスキップしながらどこかに行ってしまった。


「ああ! ミクル君!」

 ユウキが追いかけようとしたが、女王ミクリスが引き留めた。


「勇者様。改めまして、パトラクレオ様とシャムランの民をお救い下さり……本当にありがとうございました。この御恩には、感謝してもしきれないほどですが……お約束通り、ミクル様のライブイベントの件は我々で手配させて頂きたいと思います。つきましては、会場の建設を待つ間、ささやかではございますがどうか王城の来賓の間にてもてなしと宿泊のご用意をさせていただきたいのですが……」


「ほんと!? ふかふかのベッドある!? お風呂とかそういうのもある!?」

 アマネが目を輝かせて言った。


「ええ。なんなりと、ご用意させていただきます」

「まあ、どうせミクルはライブする気満々でしょうし……ここはありがたく、お言葉に甘えるとしましょうか」

「ああ、だな!」

「ええ。せっかく国を救ったんですもの、たらふく美味しいもの食べさせてもらおうじゃない!」

 アイルたちは、お互いを見ながらにこりと微笑み合った。

「では、ご案内します……!」

 こうして、魔法少女一行は、ピラミッド会場の再建が終わる1週間の間、シャムランの王城で贅沢なもてなしを受ける日々を過ごすのであった―――。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そして、一週間後。

 満月が輝く砂漠の夜。再建されたピラミッドの会場に、多くのファンが集まった。


『みんな~~~~~!!!! おっまたせ~~~~~!!!』

 ピラミッド(正四角錐台)型の大ステージ。光り輝くスポットライトに照らされ、あのメイデン・ワンダーランドNo.1アイドルが、姿を現した。


「うおおおおおおおおお!!!! ミクルちゃ~~~ん!!!!」

「かわい~~~!!!!」

「ミクルちゃ~ん!!!」

「んんんんんんミクルちゃ~~ん待ってたヨ~~~!!!」

 ステージの周りに作られた大きな観客席には、メイデン・ワンダーランド中からミクルのファンたちが大勢押し寄せ、ファングッズを片手に大きな歓声をあげている。


「キャハッ☆ みんな待っててくれてありがと~~~!!! ボク、『ヒカル・ミクル』は、今は勇者たちの仲間として、世界中を冒険しながら魔王を倒すためにがんばってるんだ~! だから、皆の応援で、ボクはもっと強く、もっとカワイくなれる!!! 辛い現実で心がすさんだみんなの心の砂漠を、ボクの笑顔で満開の花畑にしてみせるよ! だから……まずは聞いて! この歌を!」

 パチン!とミクルが指パッチンすると、裏でヒメコがスピーカーで音楽を流し始める。


 ♪~♪~♪~


 ミクルの有名な曲のイントロが流れ始めると、観客たちは大歓声を上げる!


「さあ! 歌おう! 踊ろう! ボクたちは、今……とっても、世界で一番、最っっっ高にカワイイ!!!」

 すると、ミクルのかけ声と共に、ステージの裏から巨大なロボットが立ち上がる!


「おおおおおおおお!? あれもミクルちゃんのステージの演出か!?」

「すげー! 流石ミクルちゃん!」

「やることのステージでかすぎかよ!」

 突如現れたガンボイを見て、観客たちは大喜びしている。


(いい? 手筈通りにやるのよ)

((いいか? いいか? いいか……? オレは今操縦する人数が足りない。つまり立つことはできても歩くことはできないわけだが……))

(ミクル君の合図とともに、『アレ』をするのね!)

(ええ、しっかり演出の計画書には、目を通しておいたわよね)

(ああ、しっかり歌をよく聞くんだ……!)

 裏でガンボイを操縦しているヒメコ、アマネ、アイル、ユウキは、ミクルの歌声に合わせてガンボイの腕を動かしたり、シブトの目をチカチカとカラフルに光らせて演出する。


「さあ! いくよ~!」

(今だ!)

 ミクルの歌声がサビに入った瞬間、ガンボイの指から色テープの束と紙吹雪が発射され会場に舞う!

 そして、次の瞬間にガンボイの足元から、生命の力があふれ出す!


「お、おおおお……!!!!」

 ミクルのステージを中心に、砂漠の砂が一瞬にして緑豊かな月の光で輝く花々の花畑へと変わっていく! ステージのステージの横に作られた水路からはばっしゃああん!と大量の水があふれ、連動してステージと客席中に噴水が噴きあがり、砂漠の真ん中に作られた砂の会場は、まるでミクルの歌声の力によって一瞬にして緑の花々と水の溢れる水上のステージへと変わっていった!


「おおおお、ミクルちゃんすげえええええ!!!」

「俺は……俺は女神の奇跡を見ているのか……????」

「おおおお!!! 素晴ラシイ!!! 素晴ラシイ!!! ミクルちゃん……マジ最高……ウッ……」

「フレンディ様!? お気を確かに! ステージはまだ始まったばかりですぞ!!!」


「えへへ~! ごめんね! ボク本気を出しすぎちゃったかも? 可愛すぎて、ゴメンネ~!」

 ミクルは、笑顔で歌う。


「でもでも~、まだまだ皆を寝かさないぞ~? 今夜は~! この国とあの世の皆がもっともっと笑顔になるまで、夜が明けるまでボク踊っちゃうよ~~!!!」



「ええっ!? 徹夜で!?」

「いつまで裏方付き合わせるつもりよあのアホ金ピカ……!」

「うふふっ、たまには夜更かしもいいわね!」

「もう……でも、あんなに楽しそうなミクルは久しぶりに見たわね」

 ユウキ達4人は、くすくすと笑いながらミクルのステージを裏からガンボイを操縦しつつ眺める。


『うむ……! 素晴らしい、素晴らしい……素晴らしい! 世界中の人々に希望と笑顔を届ける……感動した! これからもオレは、勇者たちの力になろう……! なろう、なろう……!』 

 そんなミクルを見て、ガンボイは静かに言った。


「ああ、よろしくな! ガンボイ!」


 こうして、無事にピラミッドでのミクルのライブステージを成功させ、新たに伝説の鎧「ガンボイ」を仲間に加えたユウキ達魔法少女一行であった――――!


~第九話に続く!~







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