表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/41

第7.5話「灼熱砂漠を横断せよ!砂漠の国の女王の伝説!」その2

 伝説の武具とアイテムを探すため、砂漠の国シャムランを目指し旅をしていた勇者ユウキたち一行は、広大な砂漠を冒険する途中で旅人たちの集まる水の豊かなオアシスで水遊びを楽しみ、過酷な砂漠の旅の疲れを癒した。


 しかし、休息のひと時もつかの間、翌朝ユウキたちが目を覚ますと、なんとオアシスの水が一滴残らずなくなっており、プールや辺りのオアシスはカラッカラに乾ききっていたのであった。



 砂漠の国シャムランを目指し旅をしていた勇者ユウキたち一行は、広大な砂漠を冒険する途中で旅人たちの集まる水の豊かなオアシスで水遊びを楽しみ、過酷な砂漠の旅の疲れを癒した。

 しかし、休息のひと時もつかの間、翌朝ユウキたちが目を覚ますと、なんとオアシスの水が一滴残らずなくなっており、プールや辺りのオアシスはカラッカラに乾ききっていたのであった。





「……どうして、オアシスの水がなくなったんだろう」

「幸い、昨日のうちに補給しておいたタルの水は無事みたい。 アタシたちはなんとかシャムランの王都まではたどり着けそうだけど……」

 ユウキたちとアイルは、牧舎の前で旅の計画を再確認していた。


「だって、昨日まではあんなにたくさん……プールで波をおこしてもまだまだ遊べるくらいに水があったのよ!? それが、たった一晩で……」

 アマネが言った。

 

 すると、ミクルが言った。

「……実は、さっき他の旅人や、宿の従業員たちに話を聞いてきたんだ。 今、この砂漠ではあちこちのオアシスで、ここと同じように一夜にして水がなくなってしまう事件が何件も起こっているらしいんだ」

「あら、たまにはいい仕事するじゃないち〇こ」


「茶化すのはやめてもらいたいネ! ヒメコ! ……とにかく、砂漠の商人たちは、いつどこでその現象が起こるのかわからなくて、とっても困っているらしいよ!」

「そうか……ここと同じ現象が、他の場所でも……」


「……う~ん、なにか、この現象への原因に、心当たりのある人は?」

 アイルが問いかけた。


「確証はないけど……皆、口を揃えてヘンなことを言ってたんだよね……聞きたい?」

 ミクルは、なんだかバツが悪そうにモジモジしながら言った。


「なによ? もったいぶってないで、早く言いなさいよ!」

「ぼ、僕も知りたいです!」

「あたしもあたしも~!」

 ヒメコ、ユウキ、アマネの3人は、身を乗り出して言った。


「いいかい? ゼッタイ、笑わないでくれよ?」

 ミクルは、バサッと日除けの外套のフードをわざと目深にかぶると、息を吸った。






「……商人たちが言うには、死んだ『初代女王の呪い』なんじゃないかって」


 その瞬間、カンカン照りの日差しで灼熱の気温になっているはずの砂漠にいるはずのユウキたちの背中に、冷たい感触が走る。





「じょ……女王の、呪い!?」

 アマネは、ぶるぶると震えながらヒメコに抱き着く。

「は、はぁぁ!? ば、バッカじゃないの!? なんでそんなオカルトチックなものがこの世界にあるのよ!?」

「ヒメコちゃん、ツッコむところそこ?」


 と、わやわや話していると、ミクルが咳払いをする。

「……と、とにかく! 簡単に説明すると……この国には、何千年も前に魔王チーマの襲撃で命を落としたシャムラン王朝の初代女王『パトラクレオ』の死霊が、死後の怨念から大干ばつや天変地異、疫病などの大災害を引き起こすという伝説があって、それを鎮めるために王家の墓である巨大な建造物『ピラミッド』を建てて霊を鎮めていたらしいんだけど……最近、ピラミッドになにかが起こって、パトラクレオの霊が再び目覚めたんじゃないかって、商人たちは話していたんだ」

 

「ンなわけないでしょーが! ユウレイなんて、いるわけがないわ!」

 ヒメコが騒ぎ出した。

(正直、ゴブリンも獣人も魔法もあるような世界で、信じるなと言われる方がアレな気がするんだけど……)

 とユウキは思ったが、黙っておくことにした。


「うるさいうるさーい! ボクに言われてもボクだって知らないヨ! ……とにかく、この事件はその初代女王の末裔である現シャムラン国の女王『ミクリス』様が、解決のために動いてくれているって話だよ! だから、僕たちの目的である『伝説の武具』の話も含めて、まずはシャムランの王都に向かうしかないって、ボクは思うね!」

「なるほど……アタシもそれに同意見だわ。皆もそれでいい?」

 アイルも、ミクルの意見に賛同した。


 元々、シャムランのピラミッドにある伝説のなにかを探すために、ユウキ達は砂漠を横断してシャムランの王都を目指していたのだった。

「僕も、異存はないよ。 アマネちゃんもヒメコちゃんも、いいよね?」

「もちろん!」

「ふんっ。 仕方ないわね」

 ユウキに向かって、アマネとヒメコが頷いた。





「じゃあ、早速……」

 と、ユウキたちが立ち上がろうとしたとき、遠くの方でカン、カン、カン、と鐘が三回鳴った。


「お~い! お前さんたち、王都に向かうのか? 王都に向かう大商人のフレンディ様が、魔道バスを出してくださるそうだ! 便乗するなら早く急げ!」

 オアシスの商人が、大声でミクルたちに呼びかけた。


「おおっ! 魔道バスが出るの!? いや~ツイてるネ! ボクたちは!」

「魔道バス?」

 目を輝かせてはしゃぐミクルをよそに、ユウキとアマネは首を傾げた。


「とにかく、説明は後あと! 早く馬車をバス乗り場に移動しないと!」

 と、ミクルに言われるがままにユウキ達は馬車とミートパティを移動させるのであった――。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「お、おお~!」

 ぐおん。ぐおん。ぐうぅぅーーーーーーーん。

 浮遊する魔法石を何十基も搭載し、屋根のついた広い小屋を乗せた巨大な乗り物が、たくさんの馬車を鎖で引っ張りながら砂漠の砂をかき分けながらホバー移動で進んでいた。


「はっはっは! マイフレンドたちよ! こんな砂漠を馬で横断しようだなんて……たまたまわたしの魔道バスに馬を乗せる広さがあってよかったね!」


 長い唐辛子のような髭を生やした、恰幅のよさそうな大商人フレンディは、分煙席に座って葉巻を吸いながら機嫌よさそうに笑っている。

 バスの中は6畳ほどの広さがあり、小さな分煙席も含めて広々とした部屋に、豪華なソファが窓際に置いてある。中には空調の魔法石も備え付けられており、ユウキ達の愛馬ミートパティが空調の魔法石の前で気持ちよさそうにひんやりとした風を浴びている。


「すごい……! まるで僕たちの世界のバスみたいだ!」

「砂漠でこんなにカイテキな旅ができるなんて……! サイッコウ~~~!!!」

 ユウキもアマネも、目を輝かせてはしゃいでいる。


「いいかい? 魔道バスは、この世界でも有数の地位を持つ人間しか持っていなくて……なおかつ優秀な魔導士が『供給者(サプライヤー)』になって魔力を何日も供給してようやく動かせる贅沢な乗り物なんだ。 気前よく載せてくれたフレンディ氏には、感謝しないとだネ!」

 ミクルが言った。


「はっはっは! マイフレンド! 礼には及ばない! 砂漠を生きるのはとてもタイヘン! わたしお金はたくさんある! たくさんの馬車を便乗させてもダイジョウブ! 皆助け合って生きてコウ! 人類皆トモダチ! マイフレンドファミリー!」

 大商人フレンディは、笑顔で分煙席のガラス越しに手を振った。


「ありがとうございます! フレンディさん!」

 ユウキは、フレンディに頭を下げた。

「はっはっは! ナンクルナイサー! そこのテーブルアルから水もジュースも飲んでイイヨ! バナナもそこアルヨ~」

「ありがたいけど、気前が良すぎて逆に裏がありそうで怖いわね……」

 ヒメコはそう言いながらも、ココナッツのジュースに手を付けて飲んだ。


「今はネ~、砂漠のどこでも水無くナルヨ~。 宝石売るのも服売るのも、皆がノド渇いて元気ナイと商売あがったりネ~」

「それで、フレンディ様は便乗した皆さんにも水を分けてくださっているのね。 ありがたいことだわ」

 アイルがお礼を言った。


「オイエ―! 人類皆キョウダイ! だからわたし、色んなオアシスに水配りに行ってるネ~! もうまともに水あるの、王都くらいしか残ってナイかもだカラ、何往復も王都に行ったり来たりヨ~!」

「そうなのね……」

 と、アイルはふと気が付く。


(これって……もしかしなくても、王都の水の供給が止まってしまえば、シャムラン国が壊滅する危機なんじゃないのかしら?)








「なにかしら? 大きな溝があるわよ!」

「おっ、ほんとだ! なんだろう?」

 アマネとユウキが、窓の外を指さす。 砂漠のど真ん中に、400mはあろうかという大きな溝ができていた。


「フレンディ様~!」

 すると、向こうからターバンの男性が走ってきた。





「おお! マイフレンド! まさか……」

 フレンディは、魔道バスを停めて窓を開けると、ターバンの男性の報告を聞いた。

「ええ! テイル川 が 3()()()()()()()()()()()()()()! 魔道バスの運行には支障はありませんが……」


「おお! 神よひどいひと! この国の人にくびつれ言いますか? このままでは……いつ王都の水の供給も止まってもおかしくありません!」

「ええ……すでに国内の貴族の中にも、国外へ避難を始めている者もいます。 我々も、もうこんな慈善事業を続けている場合では……」

「ううむ……困ってしまいます……この国の人たち放っておけない。皆お水の供給を待ってるの二……」


「……あの、フレンディ様。 実は、アタシたち……」

 アイルは、フレンディに自分たちは勇者であること、そして伝説のアイテムを求めて女王ミクリスを尋ねようとしていたことを告げた。


「……なんと!? 女王サマに会いに行く!? でしたら、この現象の原因、聞いてみてください!」

「ええ。 元よりそのつもりだったわ。 それに、アタシたちは勇者。 目の前に困っている人たちがいるのなら、アタシたちも原因を調べてなんとかできるように協力する。 それが勇者ってものでしょう?」

 アイルが言った。


「そうそう! 僕たちも、協力します! ね? 皆」

 ユウキが3人に問いかけると、

「もちろん!」

「ま、トーゼン☆だよネ!」

「ふんっ、言われなくても飲んだジュースの恩くらいは返すわよ」

 と、3人も力強くうなづいた。




 すると、フレンディは手を叩いてこう言った。

「おお! スバラシイ! 流石は()()()()()()と仲間たち!」


「ん? ミクルちゃん?」

「おやおやぁ~? もしかして~……ボクのこと、知ってるの!?」

 ミクルが、反応で手ごたえをつかんだのか、目を爛爛と輝かせてフレンディに聞いた。



「あらやだ! バレちゃった! ……実は、わたしミクルちゃんの大ファン……後で握手とサイン、してくれますか?」

 フレンディは、顔を真っ赤にしながらモジモジして白状した。


「も、もっちろん~! いや~アイドラウム以外でのファンの方は初めてでとっても嬉しいよ~♥」

 ミクルは、手慣れた様子でフレンディの右手を、両手で"ぎゅっ"と握りしめた。

「あっアッ……流石のファンサ神……!」

「よ~し、だったら決めたよ!」

 ミクルは、フレンディの手を取ったまま、こう言った。


「ボク……この国の干ばつ問題を解決したら……

ピラミッドをステージにして、コンサートライブを開いてあげるよ! 砂漠中をみ~んな、ボクのトリコにしてあ・げ・る!」





 すると、フレンディは言った。

「おお! 流石にバチ当たり! ……でも、それはそれで見てみたい! では、女王様にそのことを話してみてください! もし、ほんとにコンサートライブ開くことになったら、ぜひわたし呼んでください! チョー! めちゃめちゃ! 楽しみにしてマス!」


「えへへ……わかったよ! ゼッタイ開くから、楽しみにしててネ!」

 ミクルは、笑顔でフレンディに微笑んだ。


「あらあら……あんな約束しちゃって……」

「できなかったら、どうするつもりなんだろう……?」

「でも、あたしも見てみたいわ! みーくんのコンサート!」










 そんなこんなで、魔道バスが干ばつしきったテイル川を渡り切り、しばらく走っていると、


「……見えてきたわね。 そろそろ王都よ」

 ヒメコが窓の外を指さす。 白い石造りの城壁が、砂漠の向こうに見え始めていた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「じゃ、わたし水買いに行きマス! 女王サマによろしくネ~!」


「フレンディ様、ありがとうございました~!」

 魔道バスを降り、ユウキ達は大商人フレンディと別れシャムランの王都へ降り立つのであった―――。



《 その3へ続く!》










追記(2022:6月29日)


第八話「灼熱!砂漠の呪いの謎を解け!ピラミッド大冒険!」として本話は収録されていましたが、パートが長くなりそうだったので砂漠を横断する場面を第7.5章として再編集しました!


今後も展開的に定期的な修正と、読みやすくするための改変作業は行っていく予定なので、よろしくお願いします! 

誤字、脱字、シナリオ上の矛盾などありましたらご報告お願いします! 早めに修正します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ