第7.5話「灼熱砂漠を横断せよ!砂漠の国の女王の伝説!」その1
~今までのあらすじ~
連れ去られたアマネを助けるため、ついに獣人族の戦士たちと激突したユウキたち。
激闘の末、聖盾シブトの援護もあってアマネを助け出し、獣人族の戦士たちの隊長レドの猛攻をかわし神竜樹の頂上へとたどり着く。
そこで雨のハープを手に入れたアマネは、優しい歌とハープの力でで聖なる雨を降らせ、傷ついた戦士たちをいやす。そしてレドは、獣人族たちの使命が終わるときに現れるという『神の使徒』の伝説を思い出す。
そして、女神ゼウが獣人族たちの前にモニターで姿を現し、獣人族たちの使命であった儀式の必要性がなくなったことを告げ、この戦いは幕を閉じた。獣人族たちと和解したユウキ達は、次なる冒険へ―――!
「それじゃあ、お世話になりました~!」
神竜樹での冒険を終え、ビスタの里で英気を養った勇者ユウキたち一行は、獣人族の人たちに見送られて、馬車で次の冒険へと旅立った。
「気を付けてくださいね~!」
「応援してるぜ~! 勇者様~!」
ピレーネや、獣人族の住人たちが里の入り口まで集まって笑顔で手を振る。
「ピレーネ~! 元気でね~!」
「皆さんもお元気で~!」
ユウキとアマネが、荷車の後ろから顔を出して、名残惜しそうに手を振る。
そんな二人の様子を見て、馬車の前部で手綱を握っていたヒメコは、はぁ……とため息をついた。
「……はぁ。ユウキもあーちゃんも、なにしんみりしちゃってんのよ。ちょっと数日間泊まらせてもらってご飯ごちそうになっただけでしょ?」
「え~、そんなこと言ってるヒメコも、ちょっと涙腺緩んでるんじゃないの~?」
と、からかうようにミクルが言った。
「はぁ!? べっ……別に緩んでないし! これはっ……かっ、花粉症ですけど!?」
真っ赤になって否定するヒメコ。
「え~? あっ、ヒメコが緩んでいるのは涙腺じゃなくてお腹のベルt……いだだだだ!!!」
「もういっぺん言ってみなさい殺すわよ???」
ヒメコが指先から呪いの呪文でミクルの首を絞めた。
「でも……まるで最初の険悪ムードが嘘みたいに楽しかったわね……皆、温かい人たちだった……」
アイルが、目を細めて綺麗な青空を見上げる。
「ほんと……皆で作ったご飯も、とっても美味しかったし……」
「あの人たちが、これから他の人間たちとも、仲良くなってくれればいいな……」
アマネとユウキがそういうと、5人は頷きながら青空を見上げるのであった。
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「……ハァ、ハァ……アマネ……! 俺の、アマネぇ……!」
すると、ヒメコたちの馬車の後ろを、何者かが木の陰に隠れながら尾行していた。
「もうやめないか! 獣人族の戦士の隊長たる男が、幼気な少女をつけ回すようなみっともない真似など……!」
「黙れテバ! あのガキどもに負けた俺なんかに、隊長としてのメンツなんかもう立たん! 隊長の座はお前にくれてやる!」
尾行していたのは、獣人族の戦士の隊長、犬獣人のレドと、そのレドを止めようとする飛行部隊隊長の鳥獣人、テバだった。
「しかしッ……!」
「いいかっ! もう、我々獣人族の一族は掟から解放され、自由になったのだ! なら……俺はあくまで俺の惚れた女のために剣を振るう! たとえこの想いが報われなかったとしても……退屈な神竜樹で二度とあの娘に再会できぬまま死ぬくらいなら……! 俺は! 流浪の旅に出る!」
黒曜石のブレードに手をかけたレドの表情は、真剣そのものであった。
「……止めても無駄なようだな。ならば仕方ない……よかろう。 好きにするがいい」
テバは、その表情を見て首を横に振った。
「テバ……後のことは、お前に」
「……ただし」
レドの言葉を、テバが遮った。
「あくまであのお方たちは女神さまの使徒。 くれぐれも迷惑をかけたりなどしてくれるなよ」
テバは、それだけ言うと踵を返してビスタの里へと戻っていった。
「……その言葉、しかと胸に刻もう」
もう、あんな強烈な平手打ちは、二度と食らいたくないからな。と、胸の中で呟くと、レドは息を吸って再び馬車を追い始めた。
(俺は……今度こそ、アマネに好かれる男になる……!)
5人を乗せた馬車と、一人の獣人は、徐々に街道を南へと進んでいくのであった―――。
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「……それで、次はどこに向かうんだっけ」
と、ユウキが訊くとアイルが世界地図を開いた。
「ええと……以前この地図の情報をくれたホミナ様の話によると……この神竜樹からアルフルートの海底洞窟に向かう途中の街道で、西に向かうと砂漠の国『シャムラン』があって、そこの王家の墓、ピラミッドに伝説の何かがある……というウワサがあったはずよ」
アイルが説明した。
「ま、ボクたち3人は一回行ったんだけどネ!」
「はぁ……あの国、昼間はアホみたいに暑いし、夜はバカみたいに冷えるし、日焼けもするわであんまりいい思い出がないのよね……頑張って一週間で砂漠を横断したわね」
ミクルとヒメコが言った。
「でも砂漠って……ほんとうに砂がいっぱいなところなんですよね? 僕行くの初めてだなぁ……!」
「あたしも……! ほら、アラビアンなお姫様っていうのも、女の子としてはアコガレちゃうわね!」
ユウキとアマネがそう言うと、ヒメコとミクル、アイルの3人は顔を見合わせてはぁ……とため息をついた。
「見ましたか奥さん? あれが現役の中学生のピュアな心ですよ」
ミクルが2人にこそこそ耳打ちをする。
「はぁ、悲しいわね……アタシたちにもあんな頃があったわ……」
「今のうちに、馬車の中に『氷魔法』をかけておいたほうがいいわよ。ついでに私が発見した『日焼け止め魔法』も教えてあげる」
ヒメコは、アマネとユウキにスキルパネルを見せた。
「へぇ……! こんなのあったのね! 助かるわ、ひーちゃん!」
「僕にもこんなのいるの? 日焼けなんて気にしたことないけど……」
と、ユウキが言うと、ヒメコの眼光が光った。
「要るのよ! ……まあ、あんたはバカで美意識のかけらもないオスだから、日焼けを気にしないのは六千五百歩譲って許してあげるわ。 でもね! あの砂漠でそれを意識しないのは、マジマジのマジに自殺行為なんだからねっ! 覚えておきなさい!」
「お、おうっ……」
思わずヒメコの気迫に、ユウキは唾を呑んだ。
ユウキ▼ SP:6を使用して『ヒヤケアー』を取得しました!
アマネ▼ SP:6を使用して『ヒヤケアー』を取得しました!
「そーだぞ~。大事だぞ~? 女の子なんだから美白でいないとネ!」
「ええ。気を引き締めたらだめよ!」
そして、ミクルとアイルも『ヒヤケアー』の呪文をかける。
「女の子には、常識的な標準装備なんですね……」
「ユウキも、早く覚えた方がいいわよ? もう立派な魔法少女なんだし」
アマネがユウキに言った。
「ぼ、僕はあくまで男ですぅ! ……それに、アマネちゃんだってその魔法さっき覚えたくせに!」
「なによっ!? シャンプーとドライヤーの魔法も使えないユウキに言われたくな~い!」
「そっ、それくらい使えますし??? 毎日頭が痛くなるまでシャンプーもリンスもゴシゴシやってますからいい匂いしてますけど!?!?」
と、ユウキが言うと、
「あっ、それは逆にいけないわ……頭皮が削れてしまうほど強くシャンプーするのも、髪にはよくないのよ」
「えっ」
「ぷぷぷ~、女の子ならジョーシキよね~?」
「はぁ……ほんと何も知らないのね。可哀想になってきたわ」
アマネとヒメコがにやにやしている。
「う、うぐぐぐ……!」
「ど、どんま~い。最初は、なかなか自分でそういうやり方覚えるの大変だよネ~……」
「ユウキ君……今度、男湯に入ることがあったら、正しいシャンプーの仕方、教えてあげるわ……」
ミクルとアイルが、慰めるようにユウキの肩にポン、と手を置いた。
「な、慰めないで!? 僕は落ち込んでないですっ! ……断じて!」
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そんなこんなで、5人はワイワイ雑談をしながら西へ西へと進んでいく。
そして―――。
「ひ、ひひぃ~ん……」
馬車を引っ張っていた馬のミートパティ君が、舌をだらりと伸ばし元気なさそうに首をだらりと落とした。
「あら、ミートパティ? 大丈夫?」
ヒメコが、馬車から降りてミートパティの様子を見る。
「……だいぶ暑くなってきたわね」
アイルが言うように、辺りの風景は今までのような緑の山々が広がる草原地帯から、徐々に草木の少ない砂地の大地に変わっていた。そして、西に進むごとに、だんだんと太陽光が真夏のようにギラギラとまぶしくなり、照りつける日射熱も徐々に強くなっていた。
「馬では、この先きついかもしれないわね……幸い、ビスタの里で水の入ったタルは沢山もらっているわ。ミートパティ君に水分補給をしっかりとらせながら、回復魔法と氷魔法でサポートしつつ西へ目指しましょう」
アイルは、黒い日除けのマントを羽織ると、いつものメガネをサングラスにしてかけなおし、馬車の外へ飛び出していった。
「まったく……しょーがないな~。タルはボクが持ち運ぶよ! 氷魔法ヨロシク!」
ミクルも、片手で大きなタルをかつぐと、馬車を降りる。
「……僕たちも、一旦降りて歩こう」
「うん……ミートパティ君ががんばってくれてるもの。あたしたちも荷馬車をおすわよ!」
ユウキとアマネも、マントを羽織って荷馬車を降りた。
こうして、ユウキ達はミートパティ君を励ましながら、氷魔法で全員の火照った身体を冷やしつつ、馬車を後ろから押して砂に足を取られながらもなんとかえっちらおっちら砂漠を駆け抜けた。
「……今、何時だっけ?」
ミクルが言った。
「……午後3時よ。 はぁ、流石に休憩したいわね……」
ヒメコは、熱耐性をあげるため途中から魔法少女に変身して歩いていた。
「それはダメよ、ヒメコちゃん。 夜になるまでに、せめてオアシスのキャンプ地を見つけないと……砂漠のど真ん中での野宿は、それこそ自殺行為になるわ」
「まったく……やってらんないわね。だいたい……」
ヒメコが、ちらりと荷馬車の中をのぞく。
「う~ん……」
「はにゃあ……」
荷台の中では、熱中症でダウンして冷や薬草の湿布をおでこに貼ったユウキとアマネが、仲良く並んでぐったり倒れていた。
「……ほんっと、中学生たちは世話が焼けるんだから……」
ヒメコがため息をついた。
「そうね……そろそろ、この子たちにも『長時間変身』の極意を身に着けてもらわないと……」
「でもさ~アイルセンパイ、ボクはレベル30の頃には『長時間変身の極意』は扱えるようになってたんだよネ。ユウキたちも、今はレベル40にもなるじゃん。どうしてできないんだろうネ?」
ミクルがアイルに言った。
「さあ……アタシもレベル30の頃だったから……多分、単体の魔法少女じゃなくて『《二つの奇跡の魔法少女》だからということが関係しているのかもしれないわね」
「……正直思うけど、不便よね。二人じゃなきゃ変身できないなんて。どうしてユウキとあーちゃんは、ゼウ様にわざわざそんな不便な設計にされたのかしら?」
ヒメコの疑問に、アイルもミクルもうーん……と頭をひねるしかなかった―――。
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「……ねぇ! ……起きて!」
誰かの声がする。
「う、う~ん……まだ眠いよぉ……」
ユウキは、だるそうに寝返りを打つ。
「おきなさいっ! ユウキ!」
「ふがっ!?」
がばっとユウキが起き上がると、目の前にいたのはアマネだった。
「オアシスよ! オアシス!」
「ここは……?」
ユウキが辺りを見渡すと、ドーム型の広々としたテントの中のベッドに寝かされているのがわかった。お昼に馬車で倒れてから、あれからどれくらいの時間が経ったんだろうか。
テント内は空調魔法で適温に保たれており、どうやらリラックスできる寝間着に着替えされられていたようだ。
「キャンプ地に、着いたのか……? って、」
自分の格好を見た後で、フッとアマネの姿を見る。
……水着姿だ。オレンジ色で、フリフリがついた可愛いレオタード型の水着だ。アマネの健康的で女の子らしい体形が、ピッチリ浮き出ている。
「なっ、なななんて恰好を!?」
ユウキは顔を真っ赤にして自分の目を手で覆って隠す。
「あっ、えっち! あたしの水着でコーフンしないでヘンタイ!」
「だってそんな……」
「も~! せっかくオアシスにプールがあるから、水遊びにさそってあげようとおもったのにな~!」
「……え?」
ふと、アマネの後ろを見た。するとそこには……
「……ふんっ」
「マジカル☆チェーンジ!」
「……マジカルチェンジ」
ピンクの可愛いビキニ姿のヒメコ(でかい)と、何故か変身したまま衣装を清楚なフリフリビキニに変えているミクルに、変身したまま紫の花をあしらったレオタード+白いビーチコート+サングラススタイルなアイルがいた。
「えっ!? ……変身後の衣装って、そんな風に変化させることってできるんですか!?」
ユウキが驚いた。
「まあネ!☆ そもそも、変身後の姿はプリズムストーンに強くイメージされた『カワイイ』そして『サイキョウ』のイメージが衣装に反映されるからね! 戦闘力を抑えた魔力リソースを節約する型に調整すれば……変身後の衣装に少し変化を与えられるってワケ!」
ミクルが答えた。
「アタシも、変身前の姿ではこんな水着、着ることができないから……うふふ、ちょっと魔法少女って得だなって思っちゃう瞬間よね」
「ボクも可愛くない男物の水着とか、ゼーッタイ着たくありませ~ん!!!」
アイルもミクルも、この可愛い水着の衣装をとても気に入ってるようだ。
「……はい、これ!」
アマネは、ユウキに何かを渡した。それは、
「……男子用の、海パン……?」
ユウキにちょうどぴったりの、赤いアロハ柄の海水浴パンツだった。
「ヒメコちゃんに、魔法力で衣装を作る『ファトクリ』の呪文を教えてもらったの! 変身前のあたし用の水着も作れたし……せっかくみんなで水遊びができるって、おもったのに……!」
「あ、アマネちゃん……」
ユウキは、ベッドから起き上がる。
「や、やるよ! 水遊び、しようよ! みんなでそういうことできる機会……滅多にないからさ」
と、照れながらユウキが言うと、
「不潔よ、死ね」
ゴミを見るような冷たい目で、ヒメコがユウキを睨みつけた。
「ヒメコちゃん!? ひどい!」
「ね~、よっぽど女の子の水着がみたかったんだ~。 ヘンタイだよね~」
「アンタはそこの二人の水着でも見てなさいよ。 実質女だからあつらえ向けでしょ」
と、ヒメコはあごでアイルとミクルを指した。
「は??? あたしは女だが????(全ギレ)」
「男だから可愛い水着をきちゃいけないなんて~、女ばっかり卑怯だぞ! 男でもいいよね!? ユウキ君!」
謎の方向に抗議をするアイルとミクルに、ユウキは呆れながらつい笑ってしまった。
「ま、いいわよ! それより、早くきがえたら?」
「うん……あの、アマネちゃん。着替えるからあっち向いててほしいんだけど……」
「わっ、きゃああ! ごめんなさい!」
アマネたちがあっちを向いたのを確認すると、ユウキはアマネが作った水着を装備した!
「……きゃ~! ヘンタイがきた~!」
パチャパチャと、浅いプールの波打ち際をアマネが走る。
「だれがヘンタイだ、この~っ!」
ユウキは、手で水をすくってバシャっとアマネに水をかける。
「やったわね! おかえしよ! ウォータークロー!!!」
アマネはスキル「悪魔の爪」の要領で大量の水をかき出すと、思いきりユウキに水をぶっかけた!
「おまっ、それは反則だって!?」
「援護するわよ、あーちゃん! ほれほれっ」
後ろからヒメコが、呪力で作った水鉄砲を発射してユウキに水をかける。
「ちょっ、2体1も卑怯だぞ!?」
「お待たせっ☆ ユーキ君! 男子チームの~……反逆だ~!!!」
ミクルは、光魔法で輝きながら水面を飛行し、光の渦が大波を巻き込んで3人の頭上に高波を起こした!
「ちょっ」
「えええええええっ!?」
「ミクル君、や、やりすぎ~~~~!!!!」
ザブーン!と大波がプールの波打ち際まで届く。
「……青春、してるわね」
一方、アイルはプールサイドの白いデッキチェアに座って、氷水を飲みながら優雅に4人を眺めつつ読書をしているのであった―――。
―――――――――――――――――――――――――――
「……いや~! 楽しかったわね!」
アマネは、満面の笑みで言った。
「みんな、ちょっとはしゃぎすぎ……」
ユウキが、やれやれと言った顔で呆れる。中サイズのドームテントのひとつを宿泊部屋として借りられた5人は、プールで楽しんだ後は、夕飯を食べその後はベッドでのんびりしていた。
「みんな楽しそうだったべな~! おいらも混ざりたかったべよ! でも参加できなかった代わりに、いっぱい写真は撮っておいたから、あとで思い出として大事に取っておくべ!」
聖盾シブトが、笑顔でふわふわ喋った。
「盾さん、いつのまに!?」
「あのねぇ……観光旅行じゃないのよ? どいつもこいつも、浮かれすぎなんじゃないの?」
ヒメコが怪訝そうな顔で言った。
「まあ、たまにはいいじゃない……ついでにミートパティ君も、ここにいる間は宿屋のお手伝いさんにお世話を見てもらえたから、元気になったみたいよ」
アイルが言った。
「よかった~! ……でも、明日からは昨日よりもっと早めにいかないと、次のオアシスに間に合わないからネ! 王都があるシャムランの城下町は、あと2日で到着しないと!」
「ええ。大変な道のりになるわ……二人とも、明日も今日みたいにバテたりなんかしたら、許さないんだからね! 今日はしっかり休んでおきなさい!」
ミクルとヒメコの言葉に、ユウキとアマネは頷いた。
「じゃ、おやすみなさい……みんな~」
「おやすみなさい……」
「ええ、おやすみ」
「おやすみんみ~ん♪」
「おやすみ」
5人は、部屋の電気を消すと、そのままそれぞれのベッドに入り寝息を立てた―――。
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翌朝。
「……ん?」
ユウキが朝ベッドで起きると、横で寝ているアマネ以外の全員の姿がない。
「むにゃむにゃ……もう食べられないにゃ~……」
ユウキは、幸せそうな寝顔で寝ているアマネの肩を掴み、揺らして起こす。
「アマネちゃん! 起きてってば!」
「ん~……? ……なんだ、ユウキか……」
「アマネちゃん起きて!」
「んんん~……」
ユウキはなんとか寝ぼけ眼のアマネを起こしてテントの外に出ると、ヒメコ、アイル、ミクルの3人がいた。
「いた! 3人とも! お~い……! 何かあったんです、か……ッ!?」
3人は、驚愕の表情を浮かべたまま固まっていた。3人の周りにも、多くの宿泊客や宿屋の従業員たちも、同じ顔をしてそれを見ていた。そして、それを見たユウキも……絶句した。
「ウソでしょ……どうして……」
アマネは、その光景を見て思わず呟いた。
「水が……なくなってる!?」
昨日まで、プールを満杯にするほどたまっていた綺麗な水。宿屋を囲むように広がっていた巨大なオアシスの湖。そこにあった大量の水、全てがまるで最初からなかったかのように、カラリと乾いて一滴も無くなっていた。
~その2に続く~
追記(2022:6月29日)
第八話「灼熱!砂漠の呪いの謎を解け!ピラミッド大冒険!」として本話は収録されていましたが、パートが長くなりそうだったので砂漠を横断する場面を第7.5章として再編集しました!
今後も展開的に定期的な修正と、読みやすくするための改変作業は行っていく予定なので、よろしくお願いします!
誤字、脱字、シナリオ上の矛盾などありましたらご報告お願いします! 早めに修正します!