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第七話「獣人族の聖地!神竜樹と神竜の巫女!」その4

~今までのあらすじ~

 北のグランド大陸に進んだユウキたち一行は、『雨のハープ』があるという神竜樹を目指すことにしたが、その道中でユウキたちは獣人族の戦士たちに追われる犬獣人の女性ピレーネを助けるため『神竜の巫女』という役目の身代わりになってアマネが獣人族たちに連れ去られてしまった!


 儀式の前にアマネを取り戻すため、ユウキたちはピレーネとその母の助力を借りて、神竜樹に潜入したが、獣人族の戦士たちの隊長レドに気付かれてしまい獣人族の戦士たちと戦うことになってしまう! 先にアマネを助けに祠に向かったユウキは、レドとの戦いで大ピンチに! 足止めの戦士たちを倒したアイルたちも、急いでユウキを追いかけるが―――!


「獣人族ビースティアの戦士の聖剣……受けてみよ!


 森羅万象を裁断する! 究極奥義―――――『獣牙王の(ビースティア・)覇閃(カイザー)』!!!!!


 レドの黒曜石の剣に、虹色の閃光が走り、金色のオーラが迸ると凄まじいエネルギー波となって巨大なビームサーベルとしてユウキに襲い掛かる!


「うおおおおおおお!!!!!」

 最後に残った力を振り絞り、立ち上がったユウキは剣でその攻撃を受け止める!


 しかし、その攻撃を剣で受け止めた瞬間、ビシッ、と音がした。

「!」

 そして、ユウキが買った戦士のソードは、いとも簡単に粉々に割れてしまった!


(あ、これ死んだな)


 ユウキは、絶望して死を覚悟し、目をつぶったそのときだった。






『開け!』

 何者かの声が響いた瞬間、アマネを封印していた祠の扉が開く。その瞬間に、アマネの足はユウキの元へ駆け出していた。


「シブト!」

 アマネが、走りながら叫んだ。


 すると、空中に浮遊していた聖盾シブトがアマネの前に飛翔し、アマネが左手で縦の持ちてを掴むと、アマネを引っ張ってシブトがユウキの目の前に高速で突っ込んだ!


「!?」


「『ホーリー・クロスガード!!!!』」

 シブトとアマネが間一髪でユウキとレドの間に入り込むと、レドの強烈な攻撃を光のシールドで受け止めた!!!




「ぐうううううう!!!!!」

「はあああああああああ!!!」

 レドの凄まじいエネルギー波の刃は、ギリギリギリ……とシールドに火花を散らしたが、徐々に消えていった!


「なん……だと!? 俺の、『獣牙王の(ビースティア・)覇閃(カイザー)』を、防いだというのか!?」

 最強の必殺技を防がれたレドは、信じられないといった驚愕の表情で驚く。


「ぜぇ……アマネ、ちゃん……」

 満身創痍のユウキは、アマネの顔を見て、わずかに微笑んだ。


「はぁ、はぁ……やっぱり、変身前に使っちゃうとつかれちゃうのね、これ……」

 攻撃を防いだアマネは、へなへなとその場に座り込む。


『ごめん、ユウキ! 君のことも助けたかったんだけんど……この祠の封印を解くため、レドの音声データを集めていたんだべ!』

 実は、聖盾シブトは、ユウキたちよりも早くアマネが封印する祠までたどり着いていた。獣人族(ビースティア)たちに見つからないように陰で様子をうかがっていたが、石の扉を開くために、レドや長老のデッドの後をつけていたのだという。



『おいらのデータ解析の結果、封印の解除に必要なのは、指紋データと音声データだということがわかったべ。指紋データは、おいらに内蔵されているカメラで彼らの私物の指紋を撮影して、眼球の高画質モニターに移せばクリアできそうだということはわかったんだべ。けど、問題は音声データだったんだべ。

 二人の後をこっそりつけて、機会をうかがっていたんだべが……長老の声は小さくて録音データにならないし、レドは他の大騒ぎする獣人族(ビースティア)の皆と一緒だったから、昼間のうちは音声データが撮れなかったんだべ』

 聖盾シブトが説明する。


「それで昼間はこっちにこなかったのね」

『おいらの『ホーリーショット』で開けることも考えたんだべが、あれはそもそも勇者様の膨大なMPを注いでもらわないと、神の岩を壊せる威力にはならないんだべ……結局、夜になるのを待ってたんだべが、さっきユウキがレドと戦っている間に、アイツが喋っている音声データの録音に成功して、やっと開けられたんだべ!』

「そっか……ありがとう。助かったよ、シブト」

 ユウキは、シブトに礼を言った。


『勇者様のお力になれたのなら、これ以上ない幸いだべ!』



「ぐっふっふ……流石だなァ! 我が妻よ! それでこそ、この俺の女になるに相応しい!」 

 レドは、アマネをじろりと睨みつけ、べろりと舌舐めずりをする。


「レド! いいかげんにしなさい! あたしは、ワンちゃんなんかと結婚なんてしないわ!」

 アマネがレドに向かって叫んだ。


「いいや、なにがなんでも俺の妻にしてやる! お前は、神竜の巫女となり、神竜の卵を産み、俺が神竜の父になるのだ!」

「この、わからずや! ユウキ、立てる?」

「なんとか……でも、変身するために必要なMPが……」

 魔法少女に変身するためには、変身前のMP残量がそのまま変身持続可能時間となる。しかし、既にユウキのMPは先ほどの戦闘で強力な技を撃とうとしてそのまま枯渇してしまい、聖盾シブトの力を変身前に使用して引き出してしまったアマネも同様にMPが枯渇寸前まで減ってしまっていた。


「だったら……逃げるしかない、か」

 ユウキがそう言うと、アマネはうなづいてユウキの腕を肩に回し、レドに背を向け歩き出した。


「逃がすかよ! その女は、俺の妻になる女だ! 誰であろうと、絶対に俺から奪わせはしない!」

 レドが跳躍すると、黒曜石のブレードの切っ先を振り下ろした!





 すると、誰かがユウキたちの後ろから跳躍し、叫んだ。


「させるかぁ! この、野良犬がぁ!!!」

ヒメコ▼習得済みスキル『火炎呪術:蒼 ~経極境地(きょうごくきょうち・)蒼蓮煉獄(そうれんれんごく)大閻魔(だいえんま)~』と『地獄蹴り』を合わせ、合わせ技スキル『ブラックフレイムヘルファイアキック』を習得しました!


「ブラックフレイム……ヘルファイアキーーーーック!!!!」

 蒼い炎を纏ったヒメコの脚が、ユウキ達に振り下ろされたレドの剣を防いだ!


「ちっ……俺の可愛い部下どもを、全員やったっていうのか!」

「可愛くなかったわ……よォ!」

 ヒメコの強烈な炎の蹴りで、レドは地面に叩き落され、ズザザザ……とレドが着地する。


「ユウキ君、アマネちゃん!? 大丈夫!?」

「ケガはない!?」

 階段から、アイルとミクルも駆けつける。


「アイルさん、みーくん! あたしは大丈夫だけど、ユウキが……」

「ぼ、僕なら大丈夫です……!それより、アマネを連れて早く……!」


「二人とも、MPが空っぽじゃない! それに、どちらも置いて逃げられるわけないでしょ!」

 アイルが、二人に言った。




「ふっ……聞こえるか? お前らがずいぶんどでかくやってくれたお陰で……下のやつらが動き出したようだぞ?」

 すると、レドが言った。


「え?」

 アイルが、耳を澄ませる。すると、何者かが吊り橋階段を上ってくる足音が、だんだん大きくなっていた。


―――――――――――――――――――――――――――――


(皆さん、ごめんなさ~い……! 私の力では、ここまでが限界でした……!)


 ピレーネの踊りに夢中になっていた下層にいる獣人族(ビースティア)の戦士たちは、上層で起きた衝撃音で異変に気付き、神竜樹の上層に向かっていった。 注目を集めることができなくなったピレーネは、おろおろしながら戦士たちの背中を見ているしかできなかった。


―――――――――――――――――――――――――――――


「ほんとだ!? すごい人数がこっちに来てるみたい! ヒメコが容赦なくあいつら吹き飛ばしたりするせいじゃないの!?」

 ミクルが言った。

「はぁっ!? アンタらオス共がどったんばったん大騒ぎしたせいでしょ!? アンタたちのせいよ!」


「ミクル君! ヒメコちゃん! 今はケンカしてる場合じゃないわ! ……ここから逃げるにしても、この高さからMPのない二人を抱きかかえたまま飛び降りるのは危険ね。かといって……」

「考え事か!? 今更どうにもならんぞ!」

 レドがアイルに斬りかかる! アイルは、氷の剣を生み出して受け止める!


「ぐっ……なんて力なの!? 変身したアタシを上回ってるなんて……」

「はははっ! ニンゲンは……随分弱っちいんだなァ!ゥオイ!」

 レドが剣を振り払うと、アイルは空中でクルクル身体をひねりながら回転して後退する。


「ど、どーするんだよ~!? 魔法少女と、互角かそれ以上のヤツを相手にするなんて~!?」

 ミクルは、ごくりと唾を飲んだ。

「ええ……しかも状況は最悪ね。このまま戦うことはできても、時間稼ぎをされたら敵の増援がどんどんやってくるわ。かといって……魔王軍でもない彼らを、一方的に殺すなんてできないし……」

 アイルもだらりと汗を流し、メガネを曇らせる。

「手加減できる相手でもないのが、ムカつくところね……やっぱり、神竜樹に火をつけた方がいいんじゃないかしら……?」

 ヒメコは、イライラしながら右手に炎を纏わせる。

「ダメよ! ひーちゃん! 獣人族の人たちにとって、この木は大切な場所なのよ!」

 アマネがヒメコの手を止めて制止する。


「せめて、僕たちのMPが回復出来て変身できれば、逃げるだけならできるのに……!」

 と、ユウキが悔しそうに拳を握りしめたときだった。



『MPを……? そうだ! ここは『神竜樹』だったんだべ! だったら……」

 聖盾シブトは、そういうとピコンピコンとサーチライトを光らせて辺りを見渡す。


「どうしたんだ、シブト?」

『ここは『神竜樹』……つまり、神竜樹にあるはずの『雨のハープ』を使えば、MPやHPを回復させることのできる『聖なる雨』を振らせることができるんだべ!』

 すると、キュピーン!とシブトのセンサーが光った!


『見つけたべ! そこの横にある階段を昇った先、神竜樹の頂上に『雨のハープ』があるんだべ!』

「でかした! シブト!」

 ユウキとアマネは、うなづくと二人でシブトの持ち手を掴み、シブトが引っ張って連れていく!


「お前ら……『雨のハープ』を、持っていく気か!? させねえ!」

「邪魔はさせないよ!」

 ミクルは、エメラルドの蛇腹剣を伸ばしてレドの行く手を防ぐ!


「ちぃ! うっとおしい!」

 レドは、行く手を塞ぐアイルたち3人に向き直る。

「二人とも! ここは任せたわ! あいつらは、アタシたち3人で食い止める!」

「燃やしてしまってもいいわよね? この犬っコロ」

「早く、雨のハープを取ってくるんだよ~!」

 3人の声に、ユウキとアマネは親指をグッと立ててうなづいた。


「って、あの階段! 鍵がかかってるよ!?」

 ユウキが気が付く。シブトが突っ込もうとしている階段は、鉄柵の扉で固く閉じられている。


「だったら……あたしの最後のMP、持っていきなさい! シブト、ねらいを合わせて!」

 アマネは、シブトのセンサーを開き、扉にサーチライトを当てる!

『任せたべ! ……アマネ! トリガーを引くんだべ!』


「ホーリーショットぉぉぉぉ!!!」


 アマネが、トリガーを勢いよく引く! 盾の表面にある十字架のような装飾の部分から、十文字の光線が放たれ、鉄柵の扉を豪快に破壊した!


「ありがと! シブト!」

『お安い御用だべ!』

 アマネとユウキは、シブトに引っ張られて鉄柵に空いた大穴を抜けると、階段をスイーッと飛んで行った。


「やめろぉ! アレは……あの宝だけは! 持ち去られるわけにはいかねぇんだ!」

 レドは、アイルたち3人の攻撃を振り払うと、走ってユウキたちを追いかけていった!


「逃がさないわよ! あの子たちの邪魔だけはさせないわ!」

「キラキラチャラ男! アンタも早くしなさい!」

「だれがチャラ男だ~っ! キラキラは合ってるケド!」

 アイルたち3人も、大慌てでレドを追いかけて階段を昇っていった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――



「……ここが、神竜樹の頂上……」

 ユウキは、木の葉が密集してふかふかになっている床に降り立った。


「なにこれ。すご~い! 星空もよく見えるわね!」

 アマネが空を見上げると、大きな満月と満天の星空が、まるですぐ近くにあるように大きな星がキラキラと輝いていた。


「ここで天体観測でもしたら、すごく気持ちよさそうだね……でも、今は」

「あっ! そうだったわ! ……シブト、『雨のハープ』は?」


『あそこだべ!』


 シブトがサーチライトを照らす。すると、大きな彫刻が2つある小さな祭壇があった。


「これは……」

 それは、鎧を着た笑顔の表情でひざまづく犬の獣人族(ビースティア)の青年の像の前に、目の前の頬笑みを浮かべた、ローブを羽織った人間?の女神の像が建っていた。


「あっ! 雨のハープ!」

 アマネが女神の像を指さした。よく見ると、女神の像の手には、古めかしい銀色の竪琴が安置されていた。


 ユウキは、その銀の竪琴―――『雨のハープ』を、手に取ろうとした。

「でも……一応、これって獣人族たちの大切な竪琴なんだよね? 無断で取っちゃっていいのかな……」

 しかし、伸ばした手を止めてしまう。獣人族にとっては、とても大切な秘宝だ。ユウキは、わずかな罪悪感で胸が痛んでしまい、思わず考え込んでしまった。


「なにいってるの! 魔王をたおすためでしょ! しかたないわよ!」

「だけどさ……」

 すると、二人の頭の中に、綺麗な女性の声が響いた。




『取りなさい……どうぞ、お取りなさい……世界を守る使命のため、それは貴方たちが持つべきです……』



「! ……この声は、この像の」

 と、ユウキが言おうとしたが、アマネが首を振った。


「……な~んて、だまされないわよ! ゼウ様!」


『あちゃ~、女神感ある声を出せばいけるかな~と思ったのですが……バレちゃいましたか。てへぺろ☆』

 奇麗な女性の声の主は、女神ゼウであった。


「も~! ……でも、つまり取っていいってことよね?」

『ええ、そうです。 例え獣人族(ビースティア)たちが何と言おうと、それは貴方たちが持っていかなければならないものです。例え、良心が痛んでここにそれを置いて行ったとしても……貴方たちが、魔王の城にたどり着けないことになります。そうなれば、魔王が、世界の破滅と共に獣人族(ビースティア)の一族を皆殺しにするでしょう』

 女神ゼウは、ため息をつきながらメガネのズレを直した。


「そっか……」

 ユウキは、アマネと顔を見合わせて、うなづいた。これは、自分たちが魔王と戦うために、覚悟しなければならないことを。


 二人は、決心すると女神像が持つ『雨のハープ』に手をかけた。




「やめろォォォ!!!! それを持っていくなァァァ!!!」

「!」「!」

 ユウキとアマネが振り返ると、レドが剣を構えて、息を荒げて二人を睨みつけた。


「ニンゲンは……なぜ俺たちから何もかも奪っていくのだ! 自由に繁殖する権利も、大地を闊歩することも……我々を作りたもうた神から授かりし『聖剣ブレイブ』も! 奪っていったではないか! なのに……残った『雨のハープ』まで持ち去られては、もう我々が神から授かりしものは何一つ残らないではないか!」

 レドは、大粒の涙を流した。


「レド……」

 アマネがぽつりと呟くと、ユウキが一歩前に出て、レドに言った。


「レドさん……これが、大切な獣人族(ビースティア)たちの財産だということは、重々承知しています。ですが……これは、僕たち勇者が借りていきます。いつか、僕たちが魔王を滅ぼして世界に平和を取り戻した暁には、必ずお返しに来ます。世界を守るために、このハープが必要なんです」


 しかし、レドは首を横に振った。

「黙れ! ニンゲンは、そう言って何度も何度も平和のためと言って人間にとっての都合を何度も何度も押し付けて、我々を虐げてきたではないか! 今更信じられるものか!」

「お願いです! 人間たちが、貴方たち獣人族(ビースティア)にしてきたことは、決して許されるようなものだとは僕だって思っていません! 人間たちが、今までしてきたことの償いをするためにも……人間族と獣人族(ビースティア)が共存する、この世界を滅ぼされるわけにはいかないんです!」

「うるさい! 我々は、神から授かった使命のため、神の子を授かるために今まで生きてきたのだ! それを否定し、他種族を排斥し、我が物顔で自堕落な生活を享受するニンゲンを、我らは粛清しなければならないのだ!」

「だから、それは……」

 と、ユウキが口を開いた時だった。


 さあ……と優しい風が吹き、木の葉が舞った。次の瞬間だった。


 ぽろろん……ぽろろん……♪


 優しいハープの音が聞こえる。次の瞬間、空から光が差した―――。


「アマネ……?」

 レドが、口を開く。




 ぽろろん……ぽろろん……♪


 アマネは、青年の像と女神像の間にある小さな台座に腰掛け、女神のハープの弦を弾き鳴らしていた。彼女の背中からは、朝日の光が漏れており、まるでその姿は、女神が空から降臨したかのように、神々しかった。

「なぜかしら……このハープにさわったときに、こんな楽器ひいたことなんてなかったのに、なんとなくひきかたとこのメロディーが、頭の中でわかったの……」


「まさか……お前は……『()()使()()』とでも言うのか……!?」

 レドは、黒曜石のブレードをかたんと取り落とし、膝をついて涙を流した。


「二人とも! 無事!?」

「なになに? 何が起こってるの!?」

「……あーちゃん」

 アイル、ミクル、ヒメコもようやく追いついてやってきた。涙を流して呆然とするレドを見て、3人は驚く。


「……『ティアレイン・メロディー』」

 アマネが優しい旋律をハープで奏でると、朝日に照らされて、透明で七色にも見えるようなきれいな雲が神竜樹を包み、キラキラと朝日の光で輝く七色の雫を、辺り一面に降らせた。


 ぽろろん……ぽろろん……♪

「~♪」

 アマネが、ハープの旋律に合わせて歌う。ハープの綺麗な音と、アマネの歌声がさらに優しい雨を降らせ、朝焼けに染まる真っ赤な空と、宝石のように輝く雨粒が互いに反射するように七色の光に、神竜樹が包まれた。





「これは……なんて綺麗な雨……!」

 アイルは、思わず目を細めて笑った。

「うわぁ~! キラキラだ~! 雨と朝日が光って、虹も出てる~!」

「……なんて、優しい光景なの……」



 そんな目を輝かせるミクルとヒメコの表情を見て、ユウキは自分の腕を見た。

「この雨……傷が癒えていく。魔力も……だんだん、回復していく……!」

 ユウキは、雨に濡れるたびに自分の傷と魔力が回復していくのを感じた。


―――――――――――――――――――――――――――


「いてて……おお、傷が治っていくなぁ~」

 ヒメコに遠くに吹き飛ばされた虎の獣人、ルームゥは、倒れたまま雨に打たれ、痛めたお腹をさすりながら、舌を出してだらんとだらしのない笑顔を浮かべた。


「この雨は……久しく受けていなかった神の恵みか……!」

 ヒメコにクチバシ砕かれ、神竜樹のふもとで倒れていたワシの獣人のテバは、涙を流した。


―――――――――――――――――――――――――――


「……我々獣人族(ビースティア)の伝説には、こんな続きがある。『もし、獣人族たちが使命を終え、神に必要とされなくなったときには……役目を終えたことを告げる『神の使徒』である乙女たちが現れる。そのときは、我々獣人族は、2つの秘宝を『神の使徒』に返上し、生を終えるその瞬間まで女神の使徒に仕えるべし。』……と。お前たちが、そうだと言うのなら……我らの使命は、終わったということなのか……」

 レドは、床に顔を伏せて泣き崩れる。使命を果たす……その重圧から、解放された喜びなのか。あるいは、真の使命を果たせずに役目を下ろされたことに対する悔しさなのか。魔法少女たちは、察するに余りある彼の心情に想いを馳せながら、黙って彼を見ているしかできなかった。


(……ねえ、ゼウ様。聞こえますか)

 アマネは、ハープを弾きながら、ゼウに心の中で語りかけた。


『はい、聞こえますよ。なんでしょう』

獣人族(ビースティア)のみんなは……神様にいわれて、こんなことをやっていたって……それで、その役目はこれでおわりだって……本当なんですか?)


『……本当です。私ではありませんが……『ある神様』によって、彼らはその役目を命じられ、その役割を果たし続けていました。そして、勇者が現れた今……その役目は、本当に終わったのです』

 女神ゼウは答えた。


(……ゼウ様、お願いがあります。どうか……)

 アマネは、あるお願い事を女神ゼウに言った。


『……いいでしょう。その願いは、私でも叶えられます―――!』


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――――――――――――――――――――――――――――――


 翌日。ビスタの里には、神竜樹に『神の使徒』が現れ、儀式どころではなくなったことが里中に伝えられた。里中が朝から大騒ぎになり、昼前になって獣人族(ビースティア)の戦士たち全員と、里中の全ての住人が、神竜樹のふもとにある広場に集まった。


「お前たち……よく聞くがいい! 本日、神竜樹に『神の使徒』様がご降臨なされた! 皆が知っているように、伝説の一節にある『神の使徒』が現れたのだ! これにより……我らは、3千年の使命から解放されたのだ!」

 獣人族(ビースティア)の戦士たちの隊長であるレドが、声高に言うと、ユウキ達5人は広場のステージに姿を現した。ちなみに、アイルとミクルは、珍しく変身前の男の姿だった。



「……みんな、たのむわよ!」

 アマネが4人に振り返ると、ユウキ、アイル、ミクル、ヒメコは頷いた。





『『ツイン・マジカル・ウェーブ!!!!!!!!』』


 ユウキとアマネが、『プリズムペンダント』を握りしめて手を繋ぎ、大きな光の柱がユウキとアマネの身体を包み込むように現れ、その光の柱に身体に包まれた光が徐々にコスチュームへと変化する―――。


「……《二つの(ツイン)奇跡の魔法少女(マジックヒロイン)》!『ユウキメイド』!!!!」


 ユウキは黒髪ロングストレートなフリフリのミニスカメイド服の魔法少女に変身した!




「《二つの(ツイン)奇跡の魔法少女(マジックヒロイン)》!!!『アマネキャット』!!!!」


 アマネは、茶髪の長いツインテールの髪形になって、頭に黒猫の猫耳、お尻にしっぽ、宝石がキラキラ沢山付いた白くてキュートなミニスカのワンピース姿の魔法少女に変身した!




挿絵(By みてみん)



「……『アイン・マジカル・シャワー!!!!』」


 アイルは、『プリズムブローチ』を両手に持って胸に抱きしめた後、天高く掲げる!


 光のシャワーが、アイルを包み込むと、段々と男性的な肉体が美しい曲線を描く女性の身体に変化していく。そして、その体にピンク色と薄紫色をベースカラーにした、セーラー服のようなコスチュームが現れフィットするように体に装着されていく。そして、元々腰まで長かった黒髪は、ピンク色の髪をツインテールに変化していく。



「……咲き誇るは、乙女の花!《魔法少女(マジカルヒロイン)》、『アイル・フルール』!!!」

 アイルが名乗りを上げると、桃色の花びらと藤色の花びらが、突風と共に吹き荒れた!


挿絵(By みてみん)



「『マジカル・プラズマ・シャイーーーン!!!!』」



 ミクルは、自分を抱きしめるように腕をクロスさせると、『プリズムリング』が光り輝きミクルの身体を包む!


 光のドレスが、ヴェールで包み込むようにミクルの身体にフィットする。そして、キラキラとアクセサリーがドレスに装着されていき、ダイヤモンドや宝石の意匠が施された黄色いミニスカートのアイドルコスチュームに変化して、髪型も黒髪から黄金よりもまぶしい金髪の髪になって、伸びた髪は自動的に三つ編みになっていく!


「未来を照らす、栄光の輝き!《魔法少女(マジカルヒロイン)》、『ヒカル・ミクル』!」

 ミクルの名乗りと共に、ダイヤモンドが弾けて七色のプリズムが輝く!


挿絵(By みてみん)




 ヒメコは、プリズムベルトへ手をハートの形にしてかざす!


「『ピュアラブ・マジカル・ウイング!!!』」

 ヒメコのプリズムベルトが光り輝くと、神々しい光の天馬が現れ、光の翼でヒメコの身体を包む!


 鬼の角、そして欠けたユニコーンの角が、ダイヤモンドの光で再生されていく。竜の鱗がキラキラの天の川のように体を包み、そして風船のように膨らみ、バルーンのようなスカートを作る。

 髪は光り輝きながら伸び、蒼や桃色の美しい色とりどりの色調に染まっていく。最後に、桃色のマントをたなびかせ、地面へと降り立つ。


「過去を越え、天空に駆ける憧れの翼!《魔法少女(マジカルヒロイン)》『ヒメコ・ペガサス』!!!!」

 ヒメコの名乗りと共に、ペガサスの羽が輝きながら辺りに舞う!



挿絵(By みてみん)


「「「「「今、五つの力が合わさるとき!」」」」」


「花咲く世界を守るため!」


「輝く未来を守るため!」


「今、私たちは飛翔する!」


「あまねく悪を断ち切って!」


「勇気で世界を照らす!」


「「「「「私たち、《五つの(フィフス)奇跡の魔法少女(マジックヒロイン)》!!!」」」」」


挿絵(By みてみん)





 5人がその変身シーンを見せると、広場に集まっていた獣人族(ビースティア)たちは思わずどよめいた。

「すごい、なんという神々しい光じゃ……!」

「しかし、神の使徒はニンゲンだったのか……?」

「しかもあの姿になる前は男っぽかったような……?」

「神の使徒って、伝説だと女性だったし……」

「でもお姿を変えたあとは女性じゃぞ……」

 ざわざわと、獣人族の住人たちは賛否両論、といった感じで騒ぎ始める。


「ぐぬぬぬ……ケモノ頭なんだから素直に信じなさいよ~……! 燃やすわよ!」

「まあまあひーちゃん落ち着いて! ……いくわよ、ユウキ!」

「ああ、アマネちゃん!」

 ユウキとアマネは、手を繋ぐと、それぞれ右手と左手を頭上に掲げた!


「みんな! 聞いてちょうだい! これからあたしたちは……女神ゼウ様のおことばをうつします!」

 アマネの言葉に、騒いでいた獣人族(ビースティア)の住人たちが一斉にピタッと静まり返る。


「いくよ!」

「ええっ!」

 ユウキとアマネは、一斉に叫んだ。


「「『モニター』!」」


 二人は、ステイタスの『設定』をいじると、二人のステイタス画面を合わせて、、巨大な大型モニターを広場のステージに映し出した!



『ハロー、ハロー! ……聞こえていますか? 下界の皆さ~ん? これ、音量とか画面とか、大丈夫ですかね? あ~もしも~し? あっ、よかった繋がってるみたいですね!』

 笑顔で手を振る女神ゼウの姿がモニターに映し出される。……女神様、それじゃあ神のお告げじゃなくてリモート通話みたいだから、と内心でユウキは呆れながらツッコんだ。


「め、女神様じゃ……!」

 獣人族(ビースティア)の長老、デッドは、思わず持っていた杖を落とし、涙を流して画面の女神ゼウに手を合わせた。


『は~い☆ 皆さんご存じ女神ゼウちゃん、ですっ☆ 皆さ~ん神は信仰していますか~? ちゃんとお祈りしないと~、天罰下しちゃいますよ☆ ばきゅーん♥』

 女神ゼウがノリノリで喋ると、獣人族(ビースティア)たちは一斉にザザッと首を垂れて平伏した。


「いやゼウ様!? ノリノリで変なこと言わないでください! シャレになってないですから!」

 ついに耐え切れなくなってユウキがツッコんだ。


『あ~すいません! 下々の方々とお喋りするの久しぶりすぎてテンション上がっちゃいまして……! 失礼しました……皆さんそんな簡単に天罰なんてやりませんのでどうか安心してくださいね……!』

 と女神ゼウが言うと、ほっとしたように獣人族(ビースティア)たちは頭を上げた。


『すみません、話を戻しますね……これより、()()()()()()()()()()()()()()()()()。今からいう言葉は、きちんとよく聞いて、しっかり記憶して末代まできちんと伝えてくださいね! ではいきますよ!』

 獣人族(ビースティア)たちは、ごくりと唾を呑むと、ゼウの言葉に耳を傾けた。


『……貴方たち、獣人族(ビースティア)に与えた『神竜の卵』を産む役目を、撤回します。神竜の卵を授かる儀式を行う必要は、今後は二度とありません。今後は、魔王と戦う『五つの(フィフス)奇跡の魔法少女(マジックヒロイン)』たちを支援し、人間族や他の種族とも融和を図り、魔王チーマを打倒を支援することが、新しい貴方たちの使命と心得なさい。


……よろしいですか? もっかい聞きたい! って方がおられましたら、三回までならもう一度言いますよ? 大丈夫ですね!?』

 と、女神ゼウが言うと、獣人族(ビースティア)の住人たちがどよめいた。


「ああ……これで、『神竜の巫女』の役目から、娘たちが解放される……!」

「お母さん……!」

 車椅子で広場に来ていたピレーネの母は、ピレーネに横で支えられながら涙を流して喜んだ。

 一方で、残念がる獣人族(ビースティア)の戦士たちや、今までやってきた儀式は何だったんだと憤るおばあさんもいた。それほどまでに長い間習慣として染みついた『神竜の巫女の儀式』に対する獣人族(ビースティア)の人々の思いはかなり複雑であった。


『……本当に、今まで獣人族(あなたたち)はよくやってくれました。古の儀式の方法を現代まできちんと子から孫へと継承を続け、度重なる戦争を経ても絶滅せずに、今まで本当によく頑張ってくださいました。神々の一人として、深く礼を言います。複雑な思いはあるでしょうが、どうか新たな使命のことも、どうかよろしくお願いします』

 女神ゼウは、画面越しに深く頭を下げた。


「かっ……神様! 頭をお上げください! 我ら獣人族(ビースティア)の至らぬばかりに、神竜の卵を授かることはなりませんでしたが……次の使命こそ、必ず果たし、魔王チーマとかいう輩も必ず成敗いたして見せましょう! なのでどうか、どうか我ら獣人族(ビースティア)の民をお導きください、神様……!」

 獣人族(ビースティア)の長老デッドは、おいおいと泣きながら女神ゼウに懇願した。


「……ゼウ様。大変図々しく厚かましい願いだと思いますが……一つ、申し上げてもよろしいでしょうか」

 すると、レドが言った。


「レド! 族長の儂の息子とはいえ、女神様に向かって無礼な発言は許さんぞ! 首を垂れぬか!」

 デッドが叫んで制止しようとするが、レドは真剣な表情でゼウを見つめる。


『……構いませんよ。言ってみてください』

 ゼウがそう言うと、レドはスーッと息を吸って、口を開いた。







「あなたの……神の使徒である『アマネ』のことを、我が妻として迎えることを、許可しては頂けないだろうか」

 レドは、女神ゼウにそういうと、横目でアマネを見つめた。





「……って、ちょっとぉ!?」

 アマネは、顔を真っ赤にして叫んだ。


「おお! 神の使徒と、勇敢な我が息子が結婚すれば、儂らは神の子と親族に……! よいぞレドよ! 神様、儂からも頼みますじゃ……!」

 デッドが一瞬で態度を翻して女神ゼウに頭を下げた。


「あのジジイ! 態度クルックルじゃないのよ!? あーちゃんと犬畜生が結婚なんて、あたしが許さないわよこの薄汚い野良犬がぁ~!」

「ヒメコ、落ち着いて~!」

「せっかく関係良好なまま終われそうなんだから、少し抑えなさいっ!」

 ブチギレて炎を纏って飛び出そうとするヒメコを、ミクルとアイルが必死で止める。


(でも……まさか……ゼウ様、許可したりなんかしないよね……?)

 と、内心でドキドキしながらユウキはゼウを見上げた。



 すると、少しの間ゼウは考え込み、数秒の間を置いて口を開いた。


『……貴方たちの結婚は、それぞれ『個人の意思を尊重します』。神は、貴方たちの婚姻関係には、一切口を挟みません。アマネさんが『OK』といえば、問題なく婚姻できるでしょう。……どうですか? アマネさん』


「えっ? その……」


『じゃ、私はそろそろ落ちますね~! 皆さん! どうか健康で、幸せな生活を送ってくださいね! 使命のことも、忘れずによろしくお願いしま~す! じゃ、バイバ~イ!』

 それだけ言い残して、女神ゼウの映るモニターはブラックアウトしてしまった。


「ちょっ、ゼウ様!?」

「アマネ!」

 と、アマネが口を開こうとした瞬間、レドはすぐさまアマネの前に駆け寄り、アマネの手を取った!


「えっ!? ちょ……レド!?」

「俺の妻になれ! アマネ! 獣人族(ビースティア)の族長の妻として、何一つ不自由な暮らしなどさせない! お前の剣として、お前を守り魔王とも戦う剣にもなろう! 毎晩二人で愛し合い、立派な戦士たちをたくさんたくさん産んでくれ! 俺は、お前を心から愛しているんだ! アマネ!」

 まくしたてるような熱烈なプロポーズの言葉に、隣で見ていたユウキの顔が真っ赤になる。

 そして、当のアマネはというと―――――。


「……い、」

 うつむいたまま、アマネは口を開いた。

「い?」

 (いいよ、って言うんだ!)と内心でレドはガッツポーズしながら固唾を飲んで返答を待つ。


「いくらなんでも、ワンちゃんとは結婚できないって、何回も言ってるでしょ~!!!! 答えはもちろん、ダメに決まってるわよ!!!」

 アマネは、思いきり魔法少女のフルパワーの腕力でビタァン!!!とレドの頬に平手打ちを叩き込んだ!


「ぎゃひぃぃぃ~~~ん!? そんな、クゥゥ~~~ン!?」

 情けない声を上げて、レドは広場のステージから神竜樹の幹まで吹き飛ばされてしまった!


「あああ……イケメンで、超絶お家柄もよくて、筋肉ムキムキで誰よりもたくましい、儂の息子がフラれたぁ~……」

 父親のデッドも、がくりと膝をついた。



「だっさ……あと、獣人族の長って別にお家柄よくないでしょ……」

 ヒメコがボソッと言った。


「とにかく……無事にアマネちゃんが戻ってきてくれてよかった~!」

「ええ。 獣人族とも、比較的関係が良好なままで、雨のハープも手に入れることができたし」

「ええ! あーちゃんもみーくんもアイルさんも、助けに来てくれてありがとう! ……それに、ユウキもね!」

 アマネは、5人に笑顔でお礼を言った。


「お、おう……」

 ユウキは、思わず照れて顔をそむけてしまう。


「……あら~? ユウキ~、もしかしてあたしが本気でレドと結婚すると思って~、ドキドキしちゃったのかしら? も~、カワイイわね?」

 アマネは、ニヤニヤしながらユウキの頬をつつく。

「や、やめろよ! ……そ、そんなんじゃないって! 旅の仲間が脱退なんてしたら、これから先困ると思って……!」

「ユウキはあたしのこと、超大好きだもんね~?」

「す、好きなんて言ってないし!!!」

「うふふ、またまた照れちゃって~」

「て、照れてない!」


(これは……)

(ラブコメの波動を感じる……!)

 アイルとミクルが、ごくりと唾を呑んだ。

『これはもしかして……録画したほうがいいだべか!?』

 シブトがカメラを起動する。


「ちょっとユウキ! あーちゃんはお前みたいなクソキモオタクになんか絶対あげないからねっ!」

 ヒメコが、アマネを抱きしめてユウキに威嚇した。


「いつアマネちゃんはヒメコちゃんのものになったんだよ!? ってか僕はクソキモオタクじゃなーいっ!」

「やーい、クソキモオタク~!」

「アマネちゃんは僕をからかうのをやめろ~!」




「みなさ~ん!」

 と、仲良くケンカしていると、ピレーネがやってきた。


「ピレーネ!」

 ピレーネは、アマネに駆け寄ると、アマネをがばっと抱きしめて涙を流してお礼を言った。

「アマネさん! 本当にありがとうございました……! お陰で、私も里の女性たちも、神竜の巫女の役目から解放されました……! 母もお礼を申しておりました。本当にありがとうございます」

「いいのよ! でも、本当によかったわね!」


「それで、今から里の女性たちが、貴方たちを歓迎して里の美味しい野菜と果物を使ったもてなしの料理を作りたいって言ってるんです! よかったら、食べて言ってください!」

 ピレーネは、アマネから離れると村の大きな切り株のような建物を指さした。美味しそうな匂いのする白い煙が、もくもくと煙突から立ちのぼっていた。


「ええっ!? ほんと!?」

「美味しそうだなぁ、それは是非とも食べたいかも!」

 ユウキが舌なめずりをしながら言った。


「なんでアンタが言ってんのよ、ダメユーキ」

「いてっ!」

「あははは……!」

 そんなユウキをヒメコがデコピンすると、アマネたちは楽しそうにそれを笑いながら、ピレーネの案内で建物に入っていくのでした。


 こうして、神竜樹での冒険を終えて、獣人族とも和解し新しく魔王の城にたどり着くための重要アイテム「雨のハープ」を手に入れた勇者ユウキたち一行は、ビスタの里の美味しい料理を食べた後、次のアイテムを探すためにビスタの里を旅立つのであった――――。







~【第八話】の冒険に、続く!~







おまけ(追記2021年10月11日)


ピレーネの設定画と、獣人族(ビースティア)に対する設定資料


挿絵(By みてみん)



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