第六話「母と娘!大鷲の塔と太陽の鏡!」中編
【注意】
前回の話と続き物になっているので、前回の話をご視聴の上ご覧ください。
なお、以前は「やり直せ冒険!大鷲の塔と太陽の鏡!」の4編構成の中編として本話を公開しましたが、読みやすくするためサブタイトルを変更しこちらが「母と娘!大鷲の塔と太陽の鏡!」の中編としての扱いになりました。ご了承ください。
今回の第五話は「前中後編」構成になっています。こちらは中編です。こちらの前の話に当たる六話前編を読んでからこちらをご覧ください。
~あらすじ~
魔王チーマを倒すため、伝説の武具と伝説のアイテムを探し旅を続ける勇者ユウキたち一行。南のオーマ大陸と北のグランド大陸の繋ぐ水の都「アルフルート」を訪れたユウキたちは、その街で一番の大金持ちであり商人連合の盟主ホミナから、魔物に攫われた母親を助けてほしいと依頼される。
そして、一行は魔物が根城にしているという大鷲の塔へと向かうのであった―――。
「ブルーローズタイフーンドリルキック!!!!」
「ご、ごぶーっ!?」
アイルの蹴りで、ゴブリンが頭から吹き飛ばされ爆散する。
「ダイヤモンド……ストーム!!!」
「ごぶりーんっ!?!?」
ダイヤモンドの竜巻が、ゴブリンの群れを塔の外に吹き飛ばす。
「『火炎呪術:橙』―――『焦燥罪課』!!!」
「グオオオオオン!!!!」
ヒメコは、橙色の炎を放ち、目の前の豚鬼を焼き払った!
「これで、大鷲の塔の7階の敵は全部かな……」
ユウキたちは、魔物にさらわれた水の都の商人連合盟主の少女ホミナの母親を助けるため、ここ『大鷲の塔』をひたすら登っていた。
「たぶんそうだけど……何階まで上がればいいのかしら……?」
「二人とも、ケガはない?もう少ししたら、いよいよ最上階だと思うわ。そろそろ変身する準備をしておいてね」
アイルは、額の汗をぬぐいながら言った。体力温存をするため、まだ変身をしていないユウキとアマネをかばいながら、3人の魔法少女たちは塔に巣食うゴブリンの群れを撃退しつつ、ゴブリンのボスがいると思われる最上階を目指して戦い続けていた。
「ホミナちゃんのお母さん、大丈夫だといいんだけど……」
ユウキは、ゴブリンたちに攫われたホミナの母親のことを心配していた。
「とりあえず、その場にいたゴブリンは逃げ出す間もなく皆殺しにしてるから、上に報告に行けるようなことはないはずよ。……ただ、戦闘の音がそろそろ聞こえ始めてもおかしくないわね」
「誰かさんがバカスカ火炎魔法使いまくるからじゃないの~? めっちゃ爆発音すごかったよ?」
「はぁ!? うっさいわね、悲鳴を上げる間もなく焼き倒してるんだから、アンタの宝石魔法で死に損なったゴブリンどもの悲鳴のほうがうるさいわよ! そもそもジャラジャラジャラジャラうるさいし!」
「なんだとぉ~!?」
と、ミクルとヒメコが言い争っていると、
「アンタたちのケンカの声の方がうるさいわよ……?」
額に血管を浮きだたせてブチ切れ寸前のアイルが、拳を握り締めていた。
「とっ……とにかく、この階段を上がったら最上階なんじゃないかなっ!? ねっ!?」
ユウキが慌てて間に入った。
「みんな! 回復はだいじょうぶ?気を引きしめていくわよ!」
アマネが聞くと、全員はこくりとうなづいた。
「よしっ! ……いくぞ!」
5人は、階段を駆け上がった―――。
「ニクククク……! よくぞ来た! 勇者たちよ!」
階段を駆け上がると、ひときわ大きな身長の大きなゴブリンが、5人に話しかけてきた。
「喋る知能のある、ゴブリン……!?」
ミクルが驚く。普通、ゴブリンはほとんど喋れる知能のない個体が多い。つまり、喋れる個体は、巨大な群れを率いることができるような、いわゆる『ボス』として戦えるほどの強力なパワーを秘めているということだ。
「ニククク……この塔にいずれ勇者が来ることはわかっていた……ホミナ・ナカマルが交渉に応じずに、勇者を差し向けてくることもまあ俺の中では想定内……!」
すると、ゴブリンのボスが手を上げると、それに呼応するようにゴブリンの群れが、奥から一斉に現れる。
「イヤァァァァ!!!! だ・・・・だずげでええええええ!!!!」
「あれは……!」
ふと見ると、そのボスゴブリンの小脇に、ちょっとぽっちゃりした褐色肌の50歳くらいの女性が、涙と鼻水を垂らしながらのぶとい悲鳴を上げジタバタしている。
「暴れんじゃねえよババア!!! 喰っちまうぞ!!!」
ゴブリンのボスは女性を怒鳴りつけた。
「やめろ! その女性を放せ!」
ユウキが剣を抜いた。
「その人に、乱暴なことしないで!」
と、アマネが叫んだ。すると、ゴブリンのボスはこう言った。
「あん? なコトするわけねェだろ。それに、こいつにはまだ何もしてねェからな。俺はパドラーの兄貴のような見境なしじゃねェんだ。こんな年増には興味もねえし、人質をいたぶるような紳士的じゃねェことはしたくねェしな」
と、妙に落ち着いた様子だ。
「あれ? 意外にも話が通じそうな感じ……?」
「はんっ、俺は『チャンプルー』。ゴブリンは野蛮な一族……という汚名を払拭すべく、女を犯すのは戦いに勝った後ということを俺の盗賊団では堅い戒律として守らせている。もう兄貴のような無秩序な暴力野郎ではこの時代は生き残れねェ」
ゴブリンたちのボス、チャンプルーは、女性を抱えたまま立ち上がると腰の剣を抜いた。
「いいか? 俺の盗賊団は、ただの統率の取れてない知能なしのモンスターとはわけが違う……! 俺に勝つ手段はただひとつ。交渉で取り決めた約束を守ること……! それを破るような愚か者は、手足を切り落として死ぬまで後悔させてやると決めているのだ!」
ゴブリンの群れは、鉄兜や銀の剣、鉄の盾やトライデントスピアーなど、強そうな武具を装備した!
「冥途の土産に教えてやろう! 俺の夢は……この塔を足掛かりに、水の都を攻め落とし、そしてアマゾネスどもの国を俺のものとし、かつてないほど最強のゴブリン軍団をつくりあげること! ホミナと金と女を用意せずに、勇者を差し向けて俺との交渉権を水に流した愚か者どもがどうなるか、お前らの首を差し出してアイツらに教えてやるとしよう!」
「そうはいくか! ホミナちゃんのお母さんも、街の人たちも、誰一人傷つけさせはしないぞ!」
ユウキは、剣を構えた。
「ええ……もう、私のような犠牲は出させたりはしないわ!」
「観念しろー! 正義は、勝つ!」
ヒメコとミクルも、力強くうなづいた。
「なら、教えてあげましょう……! 貴方たちを倒す、正義の使者たちの名前を!」
アイルが、波動を放つと、光の壁になった!
「ぐおっ!? こいつら……なんのつもりだ!?」
「みんな、いくわよ!」
「おう!!!」
アイル、ミクル、ヒメコは、一時的に変身を解除すると、5人は一斉に変身アイテムを構えた!
『『ツイン・マジカル・ウェーブ!!!!!!!!』』
大きな光の柱がユウキとアマネの身体を包み込むように現れ、その光の柱に身体に包まれた光が徐々にコスチュームへと変化する―――。
「……《二つの・奇跡の魔法少女》!『ユウキメイド』!!!!」
ユウキは黒髪ロングストレートなフリフリのミニスカメイド服の魔法少女に変身した!
「《二つの・奇跡の魔法少女》!!!『アマネキャット』!!!!」
アマネは、茶髪の長いツインテールの髪形になって、頭に黒猫の猫耳、お尻にしっぽ、宝石がキラキラ沢山付いた白くてキュートなミニスカのワンピース姿の魔法少女に変身した!
「……『アイン・マジカル・シャワー!!!!』」
アイルは、『プリズムブローチ』を両手に持って胸に抱きしめた後、天高く掲げる!
光のシャワーが、アイルを包み込むと、段々と男性的な肉体が美しい曲線を描く女性の身体に変化していく。そして、その体にピンク色と薄紫色をベースカラーにした、セーラー服のようなコスチュームが現れフィットするように体に装着されていく。そして、元々腰まで長かった黒髪は、ピンク色の髪をツインテールに変化していく。
「……咲き誇るは、乙女の花!《魔法少女》、『アイル・フルール』!!!」
アイルが名乗りを上げると、桃色の花びらと藤色の花びらが、突風と共に吹き荒れた!
「『マジカル・プラズマ・シャイーーーン!!!!』」
みくるは、自分を抱きしめるように腕をクロスさせると、指輪が光り輝きみくるの身体を包む!
光のドレスが、ヴェールで包み込むようにみくるの身体にフィットする。そして、キラキラとアクセサリーがドレスに装着されていき、ダイヤモンドや宝石の意匠が施された黄色いミニスカートのアイドルコスチュームに変化して、髪型も黒髪から黄金よりもまぶしい金髪の髪になって、伸びた髪は自動的に三つ編みになっていく!
「未来を照らす、栄光の輝き!《魔法少女》、『ヒカル・ミクル』!」
ミクルの名乗りと共に、ダイヤモンドが弾けて七色のプリズムが輝く!
ヒメコは、プリズムベルトへ手をハートの形にしてかざす!
「『ピュアラブ・マジカル・ウイング!!!』」
ヒメコのプリズムベルトが光り輝くと、神々しい光の天馬が現れ、光の翼でヒメコの身体を包む!
鬼の角、そして欠けたユニコーンの角が、ダイヤモンドの光で再生されていく。竜の鱗がキラキラの天の川のように体を包み、そして風船のように膨らみ、バルーンのようなスカートを作る。
髪は光り輝きながら伸び、蒼や桃色の美しい色とりどりの色調に染まっていく。最後に、桃色のマントをたなびかせ、地面へと降り立つ。
「過去を越え、天空に駆ける憧れの翼!《魔法少女》『ヒメコ・ペガサス』!!!!」
ヒメコの名乗りと共に、ペガサスの羽が輝きながら辺りに舞う!
「「「「「今、五つの力が合わさるとき!」」」」」
「花咲く世界を守るため!」
「輝く未来を守るため!」
「今、私たちは飛翔する!」
「あまねく悪を断ち切って!」
「勇気で世界を照らす!」
「「「「「私たち、《五つの・奇跡の魔法少女》!!!」」」」」
「さあ! 覚悟しろ! チャンプルー!」
ユウキが、チャンプルーに指をさした!
「はんっ! 魔法少女だけにお約束は守ります、ってか!」
「フッ、貴方たちのところの四天王に、そういうの守れって言われたんでね!」
アイルが言った。
「ニククク……笑わせるな! こいつをみろ!」
そう言って、チャンプルーがホミナの母親の首筋に剣の切っ先を向けた!
「ひっ……!」
「まさか……!」
「ニククク……わかりきったセリフだが、あえて言ってやろう! 動くな! この女がどうなってもいいのか!」
チャンプルーは、にやりと笑った。
「こいつ……人質を取ろうっていうのか!」
「ああそうさ。この女を殺されるのは本望じゃないだろう? 勇者ってのは信頼が大事だからなぁ……いいか? 言うとおりにしろ! 今すぐ変身を解い……」
と、その瞬間だった。
バシュッ!
「……なっ、なんだぁぁぁ!?」
次の瞬間には、チャンプルーの両腕は、紫色の鮮血を吹き出しながら宙を舞っていた。
チャンプルーの背後には、「エメラルド・チェーンスライサー」を構えたミクル。
「いまだ!」
ミクルが叫ぶ。
「オーケイ! 『呪術スキル:空間反転』!!!!!」
その声かけに呼応して、ヒメコは呪術スキルのスキルパネルを開く!
ヒメコ▼呪術専用スキルパネルを開きました!
ヒメコ▼SP:150を使用して、『空間反転』を取得しました!
「……え?」
次の瞬間、チャンプルーの腕から解放された女性は、いつのまにかチャンプルーとは反対方向の、魔法少女たちのそばまで瞬間移動していた。
「お怪我はありませんか?」
アイルが話しかける。ホミナの母親は、ヒメコの腕にお姫様抱っこされていた。
「え、ええ……! ありがとう……!」
「今、バリアーを作ります。貴女は戦いが終わるまでそこでじっとしていてください」
アイル▼SP:135を使用し『フラワードームシェルター』を習得しました!
アイルが、ホミナの母親の周りに花型のドームシェルターを作った。
「ちっ……! ふざけんじゃねえええ! このチート集団どもがぁ!!!」
チャンプルーが怒号をあげると、ゴブリンの群れが一斉に襲い掛かってきた!
「アンタたちのような卑怯者に、あたしたちは負けないにゃん! これでも、喰らうがいいにゃあああ!!!」
アマネ▼SP:12→70を使用し『ウインド→ウインデ→トルネード』を習得しました!
アマネ▼SP:15→85を使用し『プロメテ→プロメテウス→エクスプロメテウス』を習得しました!
アマネ▼合わせ技スキル『フレイミングエクストルネード』を会得しました!
「フレイミングエクス……トルネードにゃあああああ!!!!」
アマネが唱えた強烈な合体呪文で、火炎と爆発、そして巨大な大竜巻が一つになって、大広間に爆発と暴風が吹き荒れた!
「ご、ごぶーっ!?」
強力な武具を身に着けたゴブリンたちも、これにはひとたまりもなく爆発に巻き込まれ、全身を黒焦げにされ壁にたたきつけられミンチとなった。
「どうだ! もう、これでお前の計画もここまでだ!」
両腕を失い、瀕死になったチャンプルーに、ユウキは剣を突き付けた。
~後編02へ続く~
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
感想や評価など頂ければ幸いです!
追記:前書きにも書きました通り、以前は「やり直せ冒険!大鷲の塔と太陽の鏡!」の4編構成の中編として本話を公開しましたが、読みやすくするためサブタイトルを変更しこちらが中編としての扱いになりました。 読みやすくするため改編や改良などを加えることがございますがご了承ください。