95 二日目の朝、馬車にて
翌朝、朝食を取り出発の準備を整える。ラルフは眠い目をこすりながら気だるそうにしている。リーザは相も変わらず表情にはださないが、彼女だって疲れているに違いない。私もさすがに寝つきが悪く、よく眠れたとは言えない状態だ。
「昨晩はあのようなことになってしまい、申し訳ございませんでした」
「いいえ、貴方が謝るようなことではないわ。こちらこそ私たちが原因で迷惑を掛けたのかもしれないし……」
「そんな、滅相もない。是非帰りにもお立ち寄りください」
「ありがとう、アヒム」
挨拶をすまし、アヒムの屋敷を後にする。アヒムは本当によくしてくれた。あの後、使用人に頼み犯人を捜してくれたそうなのだが、見つかる事はなかった。すでに町を出たのかもしれない。
それにしてもその賊の目的はなんだったのであろうか。今は考えても栓ないことだとわかっていても思考が偏ってしまう。
あれこれ考えていると、ルッツとの待ち合わせ場所である町の入り口が見えてきた。すでに馬車とルッツは準備を整え、待っている。
「ごめんなさいルッツ、待たせたかしら?」
「いえ、大丈夫でございます」
彼は私たちから荷物を受け取り、馬車の上にある荷台に手際よく載せていく。最後に布で覆い隠し縄で縛る。荷物の積み込みが終わると馬車の荷台から飛び降りる。ルッツは着地の際、よろめきそれをラルフが支える。
「おい、大丈夫か?」
「すみません、ご迷惑をお掛けしました。昨日馬が暴れた時に足を痛めたようで……大したことないので大丈夫です」
「そうか、ならいいんだけどな」
ルッツはラルフから離れ、騎手の席につく。
「さぁ出発致します。皆さん、ご乗車ください」
私たちは彼に言われるままに馬車へと乗り込んだ。
昨日同様、馬車の移動中は暇を持て余す。ラルフは出発の直後に眠りこけてしまった。昨日のあの様子を見る限り、こうやって寝ている方が彼には楽だろう。
「姫様もお休みになられますか?」
「そうしたいのは山々なのだけど……リーザも少しは休んだらどう? 貴方のほうが辛いでしょう?」
「ご心配なく、姫様のためなら三日でも四日でも不眠不休でお守りできます」
いつもの無表情と淡々とした口調ではあるが、私には自信満々で熱弁しているように聞こえる。彼女がそう言うのならば真実なのだろう。
「じゃぁ少し失礼しようかしら」
「是非そうしてください」
リーザは自分の膝を指さしている。
「いや、ちょっとそれは……」
「確かに、いつも姫様が使われている寝具とは比べ物にならなやもしれませんが、何もないよりは幾分マシだと思われます」
自分の膝をぽんぽんと叩きながら促すリーザ。
「えっとね。嫌とかじゃなくて……ちょっと恥ずかしいかも」
「ご心配には及びません、ラルフは寝ていますし、ルッツは前を向いております」
誰かに見られると言うよりも自分の羞恥心なのだが、リーザはどうしても膝枕をしたいらしい。ここは素直に彼女の言うことをきくことにした。
「じゃぁ、失礼するわね」
「ご遠慮せずどうぞ」
私は彼女の膝に頭を預け目を閉じる。程よく柔らかく、とても心地が良い。少し癖になってしまいそうだ。そのまま私は深い眠りに誘われた。





