74 未来
着替えを済ませて出ると、ラルフとリーザが待ち構えていた。
「まだお伺いしていなかったことがあります……」
いつになく真剣な様子のラルフ。いや、帝国との戦争状態から彼はずっと真剣そのものなのだが、何かの決心がついたような面持ちに見える。
「お父様に施した契約についてです」
「あれは……さっきヴァルハラで殺した者の魂を奪うと言ったわね? テオドールに施した契約はその予約のようなものなの。だからすでに魂の半分はヴァルハラに囚われているのよ。ごめんなさい……これはもう解除したりすることは出来ないの」
「やはりそうなのですね……」
下を向くラルフ。彼がどう感じているのかは表情が見えないため読み取れない。しかし、良いとは言えないのは容易に想像がつく。
「では! 私たちにもその契約をしてください!」
「な、なに言ってるの⁉ ラルフ! さっき、私の話をちゃんと聞いていたの⁉」
「だからこそです。この身が朽ち果ててもなお、貴方と共に戦える。私とリーザが望んでいることなのです」
ラルフとリーザを見比べる。どうやら私が了承するまで通すつもりはないらしい。
「わかったわ……二人とも、未来永劫私と共にいることを誓いなさい」
「「誓います!」」
即答の言葉に私が少したじろぐ。
「この者たちの忠誠と誓いの名のもと、隷属と契約の証を与えたまえ」
聖槍が鳴動し黒い影が漂い出す。それを確認してから私はリーザ、ラルフの順に心の臓へとヴァルハラを突き立てた。
◇◇◇
契約の儀を行った後、関所を出て兵を招集する。これから行うのは不死の軍勢たちと共に帝国軍を滅ぼす戦いだ。アルビーナの書物を読んだ時、私は死者の魂を弄ぶこの力を呪いと称した。忌むべきものだと思った。
だが、ラルフの言葉で少し考えを改めた。彼女、アルビーナもベルクの地を守るためにこの力を使ったのだ。そのおかげで今のベルクの国があり、民があり、私たちがある。それは紛れもない事実だ。まぁ、こんな力に頼ることがないのが一番ではあるのだが……
平原で見張りを任せていた不死の軍勢を連れ、帝国陣地を目指す。もう二度とベルクの地へと戦乱を持ち込むことが無いように、徹底的に帝国へ知らしめる必要がある。この地を犯す者は不死の軍勢が襲いかかると。
未来永劫の平和のために、今は戦いに身を投じる必要がある。





