71 贖罪
「お前たち、とくと見ておけ。これがベルク王が代々受け継ぐ聖槍ヴァルハラの力だ」
私は相手によく見えるよう背中を晒す。そしてヴァルハラから影が伸び、私の背中を多い隠し、しばらくすると影が引っ込む。自身では見えないが、傷は跡も残さず消え去っただろう。
「な、なんだアレは!」
黒塗りの兜から驚きの声が漏れ、帝国兵たちは指示したように一歩下がる。
「傷が、治った?」
兵の後ろに隠れ、様子を見ていた指揮官が間抜けな声を上げる。
「帝国よ、私の大切な従者を傷つけた罪は重いぞ」
リーザの生存と取り戻した安堵は束の間、彼女をこんな目に遭わせた下種共に激しい怒りを向ける。私に睨み付けられた帝国兵たちはまた一歩下がる。
痛みの残滓が消えるころ、ヴァルハラを構え直して奴らと相対する。百戦錬磨の帝国兵が十数人であるが怯む所以はない。先程の光景を目の前に臆することなく立ち向かえる者はいないだろう。
指揮官の男は見逃してやろう。そして自軍に伝えると言い、ベルクには化物がいると。比喩ではなく本物がいるとな。
ぐっと地面を踏みしめ、命一杯の力を込めて蹴った。風の壁を切り裂き一本の矢の如く、ただただ一突きに全てを込める。
そのままの勢いで先頭に立つ帝国兵の心の臓めがけて突撃する。ヴァルハラの切っ先は容易く黒塗りの重装を貫き、心の臓を捕らえた。勢いそのままに帝国兵を押し倒す。奴らは倒れる場所を空けるように後ずさり、絶命した兵の上に立った私を中心に、取り囲む形で小さな輪が出来た。
「何をしている! 殺せ!」
今の出来事に圧倒されていた兵士たちが指揮官の一声に応じ、一斉に突きを放つ。あぁ確かこんな拷問器具があったなと、子供の頃興味半分に読みんで寝られなくなった記憶をぼんやりと思い出しながら突き刺さる剣の存在を感じる。
「や、やったか⁉」
四方八方から串刺しにされた私を遠巻きから観察する指揮官。兵士たちが一斉に剣を引き抜き、至る所から血が噴き出す。支えをなくし、倒れそうになるのを堪え叫ぶ。
「ヴァルハラぁぁあ!!」
その声に応え、勢いよく影が伸び全身を覆い隠す。
「ヒッ! ヒィィィ! 化物、不死の化物め!」
影が離れると、破れた隙間から異様に白い肌見え隠れする。年頃の娘なら露出した肌を隠し、赤面するところだろうか。
異形の奇跡を目にした兵士たちはたじろぎ、どよめき後ずさる。最早戦意と呼べるものはない。だが、こいつらはやってはならないことをした。その贖罪はきっちりとしてもらう。
命でな。





