45 開戦
関所のはるか向こうに見える人、人、人。行軍に砂埃を上げ、帝国騎士団特有の黒い鎧がひしめきあって迫る。鎧の擦れる金属音を高らかに鳴らし、黒の暴力が押し寄せてくる。それが私に、私たちに向けられている。
道幅一杯に盾持ちの騎士団を並べ防壁を形成し、後方では弓兵を配置する。数でも練度でも劣るベルク王国騎士団が対抗するための戦略だ。狭い道に死体が詰まれば相手の進軍も遅らせることが出来る。
そうなれば理想の展開でもある。国民の不安が払拭された今、時間を気にする必要もなくなった。北側の道が開通すれば皆の避難も出来る上に他国の応援も見込める。
「いよいよなのね……」
「陛下、やはり後ろに下がってもらって――」
「ラルフ、くどいわよ。貴方たちを信頼しているの。だからこの戦い、一緒にいさせて……」
「陛下――」
「それと! その陛下っての堅苦しくて気持ち悪いからいつも通り呼んで頂戴」
関所から騎士団の面々の背中を見つめる。震えてる、皆の背中が震えてる。厳しい訓練をしてきたのは間違いない。だが、実戦は素人だ。ベルク騎士団の皆も、ラルフも、私も。
そんな私たちが百戦錬磨の帝国騎士団とまともに戦えるのか、まともに命のやり取りが出来るのか……やるしかないんだ!
今私が出来る事をするために関所の窓から身を乗り出す。ラルフが何事かと慌てふためいているが関係ない。
「聞け、ベルク騎士団! ベルク王国国王ブリュンヒルド・フォン・ベルクの名のもとに命じる! 国を護れ! そして……自分の命を守れ!」
「おおおおおおおおおお!!」
戦場に雄たけびが響き渡る。彼らの背中を押すころ、彼らを鼓舞すること、それが今私に出来ることだ。
覚悟と決意の末、ベルク王国の存亡を掛けた戦いが今始まる。
「さぁ開戦だ!」





