表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死姫  作者: 秋水 終那
第一章 不死の姫と傭兵兄弟
14/99

14 理想

「駄目だ、お前たちを危険に晒すわけにはいかない。それは不死の……私の役目だからだ」

「いいじゃねーか。アベル、だったなお前男だよ」


 口を挟むのはブルーノ。表情を緩め飄々と語る。


「姫さん、死なないあんたが火の粉を払うのは確かに合理的だが、大切な女のあんな姿は見たくない、だから命賭けて守りたい。理屈じゃねーんだわ」

「すまないが黙っていてくれ。これは私の、この国の問題だ」

「いや、黙んねーよ。あんたはこいつが勇気出して言い出したことを無下にできんのかよ。こんなにあんたを慕ってる奴の気持ちを無視するって言うのかよ」


「黙れ!」


 私の怒声で関所内に響き渡る。

 勝手なことだ。


「これだから男と言う生き物は! そんな理想を語って私の前で死んでいった者たちが、どれだけいると思う! 私の気持ちなんて考えず、どれだけが散って逝ったと思う! 置き去りにされる家族を、私を何故顧みない……」


 取り乱し、抑制の利かない感情を振り回す。

 そして私は関所を飛び出した。後ろから私を呼ぶ声が聞こえるがそれに答えることもなく走った。

 まだ深紅の水溜まりと死体の残る戦場を後にし、坂をくだった。

 こんなところ誰にも見られたくない、こんな顔を誰にも見られたくない。

 三百年もの付き合いだと言うのにこいつは言うことを聞いてくれない。

 どれだけ抑えても零れ落ちてくる。


 ああ弱い、私はどうしようもなく弱い。

 どれだけの年月が経とうとも、どれだけ自分を取り繕うとも中身は変わらず十七の小娘だと言うのか。


 彼の言葉は嬉しかった。アベルの気持ちが嬉しかった。

 あんな私を見て恐いはずなのにそれでも私を慕ってくれた……嬉しかった。

 そして、同時に恐かった。亡くすのが恐ろしい。


 自分勝手なのは百も承知。

 しかし、どうしようもなく許せないのだ。

 私の前で倒れていくのが、こんな私を庇って死んでいくのを見届けるのはとても辛い。


 皆いずれ死ぬ。遅かれ早かれ不死の私を残して逝ってしまう。

 幾度となく経験してきた。親しい者たちの別れ。だからせめて家族や友人に見送られて旅立ってほしい。そのために私だけが戦って、私だけが傷付けばいい。

 体は痛いが心は痛くない。


 どうしてお前はあの時笑った……

 どうしてあんなに幸せそうな顔で逝ったんだ。


 教えてくれ……リーザ。



これで第一章終了です。

次から第二章 過去編 不死の姫と勇敢な騎士(仮)をお届けします。お楽しみに!


よろしければ、ブックマーク、感想、評価、レビューを頂ければと思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ