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第95話 女の子をキュンとさせたら黒歴史を暴露されるから気を付けろ

ゲートでカリブへと戻ってきた冬馬達はギルドへと向かった。


「ようこそ、カリブギルドへ!」


出迎えたのはホースとして活動していた冬馬を担当したあのオッサン。


「人魚のティアに用がある。呼んでは貰えないだろうか」

「苦情ならオレが受け付けるぞ」

「いやいや、苦情ではない。個人的な依頼だ」

「そういうことなら呼んでこよう」


オッサンが奥へ引っ込むと初めて会った時のような黒いローブに身を包んだティアが車椅子を引いて出てきた。


「私に用があるそうだが、なんの用だ」

「水中都市に行きたくてな。依頼をしに来た」

「なぜ私に」

「そういえば、この三叉槍返し忘れてた。ライドに返したいんだが、居場所を知らないか」


冬馬が出した三叉槍は水蛇族のものであり、友人であるライドの名前を出されれば嫌でも思い出してしまう。

おかげでティアは冬馬を直視出来ないほどに顔が赤くなり真っ正面から見れなくなってしまった。


「ホースか……」

「本当の名前はピエロ。ま、好きに呼んでくれて構わないが」

「そうか……水中都市だな。分かった。ホースの仲間も一緒でいいのだな」

「ああ、頼む」

「用意をしてくるから少し待て」


ティアは逃げるように奥へと引っ込み冬馬は外で待つことにした。


「ホースって誰ですか?」

「仕事の時に使っていた偽名だ」

「なんでホース?」

「偶々目の前に馬がいたからだ」

『ホース・ウィンター……くっふ……』


正直本名を使おうと偽名を使おうと関係ない。

ただ万が一の事を考えると本当の情報は隠した方がいい。


「ホース。行こうではないか」

「それはいいんだが、なぜローブを既に脱いでいる。ギルドから海まではそれなりに距離があるぞ」

「大した理由じゃない。……今日は暑いからな。黒いローブではキツイのだ」

「そうか」

『へいへい鈍感主人公さんよー。気づいてないわけないだろー』


誰か耳元の妹を止めてくれ。

ティアは人魚の服装……というか服を着てないので上裸なのだがこれが人魚で言う普通の服装なのだ。

普段ティアがローブを羽織るのは人間側に合わせているだけで水中都市で過ごす分には服なんて必要ない。

なんなら、水中都市に行けば水種族は全員この姿なんだ。


「ホースはなぜ水中都市に?」

「人魚の長に会いたくてな」

「それは無理だと思うぞ」

「なぜ」

「レイア様は水中都市の宮殿の最深部にいらっしゃる。行くまでにいくつもの近衛兵がいる侵入者用の罠も無数に仕掛けられている。初見で会うというのは無理だ」

「そうか。それは残念だ」

「……アシュ。ピエロが何処かに行かないようにしっかり見張るなり捕まえておくなりしてね」

「分かった」


アシュに外套をガッチリと掴まれてしまった。


「なぜそこまでする」

「アタシ達がなにも学習してないとでも?」

「ご主人が口で残念とかって言う時って大抵行きますよね」

「もし行かないのならそんな声ではないですから」


流石に数ヶ月と冬馬と居れば行動パターンも読めてくる。

見ての通り、叶恵に至っては声音でこの先の冬馬の行動をピタリと当てて見せた。


「どこにも行かないから離してくれ」

「嫌だ。数日留守にした罪は重い」

「慕われているのだな」

「どうだろうな。アシュとパルは兎も角。頭お花畑刑事と意地っ張り女王は分からんな」


冬馬とティアが話している間にも2人は後ろで大騒ぎ。


「なんですか!その不名誉過ぎる形容詞は!」

「誰が意地っ張りよ!アタシ以上に素直な子はいないでしょうが!」

「この通り、自分を理解できていないんだ。おかげで手間がかかって仕方ない」

「楽しいではないか」

「どこかだ。ってティアはそうか。手間のかかる冒険者と共に仕事してるんだもんな」

「ああ、そうだ。なにより手が掛かったのがホース。お前だ」


そうは言っても大概は水中適応を付与し目的地の場所へと案内するだけの仕事なのだ。

わざわざ模擬戦や周りの世話もしないしさせない。


「そんなか」

「ああ、模擬戦で意識を飛ばし、水種族でも戦うのを躊躇う海獣に真っ向から向かっていった冒険者は今まで見たことがない」

「戦いになるとつい我を忘れてしまう。ライドもイクルも戦闘上手でな。つい肩慣らしをしたくなった」

「しっかり冒険者じゃないか。ま、今となっては理解できるがな」

「なにを理解したと?」

「守りたい人ってのはこの女どもだろう?」


ティアの言葉に喋っていた叶恵達の声が消えた。


「ティアさん。今なんと?」

「うるさい」

「守りたい人がいるからと私に教えを乞うたのだよ。わざわざ性格まで誤魔化して」


キュンとさせられた反撃からかティアは止まらない。


「守りたいよな。こんなに楽しくて可愛い子達なのだから」

「知らんな。夢の中の話では誰もついて行けないぞ」

「言った。なんならライドとイクルにも……」

「そんなことはどうでもいいんだ。さっさと行くぞ」

「さっきの話、後でゆっくりと聞かせて?」

「ああ、いいぞ」


どんなに小さな声で喋ろうと声に出した時点で冬馬には筒抜け。

だがティアのおかげでアシュの興味が逸れ冬馬は開放された。


「それじゃあ、水中に潜るから私かホースから離れないように」


冬馬達は大昔に深海に沈められた都市。水中都市、〔ガルラ〕へと向かった。

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