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第94話 仕方ないと言いつつ怒っていないわけではない

「ホース。お前は一体......」

「騙していたつもりはないが......あまり詮索しないで貰えると助かる」

『おねショタ目的とか死んでも言えないよねー』


本当にな。

こんなことだったら最初から怪盗冬馬として出て置けばよかった。


「まあ、人には隠したい事の1つや2つあるよな」

「僕らは詮索しないよ」

「ギルドに報告に行くぞ。ナナも自分で立てるな」

「うん」


ティアは怒っているのか車いすの上でなにも喋らなかった。

だが当の本人は会話する余裕などなかっただろう。


(なんなんだいきなり男らしくなって!危うく惚れるところだったぞ)


ティアはこの素直じゃない性格ゆえに誰も声をかけなかった。

実際にティアは強い。ライドやイルク2人がかりでも余裕で勝てる程度には。

それほどの強さがあるからこそギルドから推薦される人魚の1人なのだ。

だが単騎で海獣を倒せるほどの強さはない。だから、冬馬を止めたのだ。


端的に言えば男に対する免疫がない。いや、恋に対する免疫がないと言った方が適切か。

水蛇族という水中では男がいて会話もすればライドやイルクのように友人もいる。

だが恋に発展するようなことはない。


(あのヒョロヒョロ気弱少年が大事な者のためにあそこまで本気になり自分の何倍もある海獣に挑めるほど強くなるのか。あの時の目、思い出すだけで......~~~~~~~っ!私としたことが)


完全に冬馬に惚れているティアであった。

ティアは無言のままギルドについた。


「お、少年。どうした。達成できたのか?」

「はい。一応」

「ははん。彼女がいたのか。しかも美人の鳥人族。いいねー」

「彼女ではない!」


冬馬より先に否定したのはティアだった。


「なんでもない。早く報酬金をもらおう。仕事は終わった」

「まったく。お前は淡泊だな。ほれ、これが報酬金だ」

「ではな。ホース。ああ、そうだ。もし水中都市に行きたければまた私を呼ぶといい。家に帰るだけで報酬金が入るなら安いものだ。それじゃあな」


ティアは一度も冬馬の方を向くことはなかったがそれがなぜなのか冬馬は耳元の冷やかしで知ることになる。


『やーい伊〇誠』

「あれ?俺またなにかやっちゃいました?」

『はいはい。鈍感鈍感。顔真っ赤になってただろうねあの心拍数じゃ』

「分かったから冷やかすな。風都に戻る」


冬馬はゲートを開き風都へと戻って来た。


「あら、早いおかえりで」

「まあな。本当ならもっと早く帰ってこれるはずだったんだが」

「ナナ。どうでしたか?外での旅は」

「楽しかった!ホース優しかった!」

「ホース?」

「俺の名前だ。偽名だが」

「そうですか。楽しかったですか。ではどうしたいですか?」

「おい」


この女。ナナを押し付けることを諦めてはいなかった。


「一緒にいたい!楽しいかった!」

「あらそう。でしたらナナを嫁に......あれ?」


ハハの話が言い終わる前に冬馬はその場から消えていた。


「これ上げるからバイバイってホースが」

「報酬全てですか......全く仕方のない人......」


ハハは微笑むとナナに耳打ちした。


「次ホースが訪ねてきたら無理矢理でもいいから番になりなさい」

「分かった!」


ハハとて逃げたことに関して、怒っていないわけではなかったのだ。


『もう鳥人族の所いけないねー』

「そうだな。絶対にアイツ怒ってるだろうし」

『これからどうするの?』

「王都に戻って水中都市を目指す」

『ツンデレ人魚を早速使うんだ』

「ああ」


冬馬が屋敷のリビングに出ると解けた叶恵とメア、涼しい顔して椅子に座るアシュと武器の手入れをするパルの目に入った。

ほんの数日空けただけなのに懐かしさすら感じる体たらくさ。


「あ、ピエロ。おかえり」

「おかえりっす」


正常な2人に対して正常じゃない2人がうるさい。


「ピエロ!なんで勝手にいなくなるんですか!」

「パルに伝言頼んだかと思ったら数日は戻れないってなによ!女王を待たせるんじゃないわよ!」

「そうです!暇すぎて溶けるかと思いました!」

「アタシなんて実際に溶けたわ!」


懐かしい騒がしさに冬馬はイラつきを覚えた。


「こっちだって仕事してたんだ。目的地に行くために必要な工程だ」

「それなら経過報告とか!色々伝える手段はあるでしょ!」

「すまないな。どうしても連絡出来ない事情があったんだ」

「ピエロ。次はどこに行くの?」

「水中都市だ」

「水中都市って水種族の協力が必要ではなかったですか?」

「そうだな。仕事というのはそこの関係を作って来た」


正確な情報を渡されては叶恵とメアは止まるしかにない。

だが理解が出来ても納得できないのは人間だれしも経験あることだ。


「次どこか言ったら本気で許さないから!」

「行くならちゃんと私達に伝えに来てください!面倒でも!」


ティアとナナがどれほど有能で優れた駒か叶恵達自身が証明していた。

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